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【質問番号29:アルバート】 レストランのメニューに挟まってました。 『ウミガメのスープ』https://late-late.jp/mondai/show/18 既にとかげ鑑定士からありがたい鑑定書をいただいていますが、せっかくの機会なので他の方の評価も聞いてみたく、出品しました(というわけですので、できればとかげさん以外の方に鑑定をお願いしたいです)。 【鑑定士:牛削りさん】 最後は本家オマージュですね。他の方の評価と異なり少し厳しめになりますがご容赦ください。 ※アルバートさん ⇒ 辛口批評注意 ※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意 【オマージュという要素について】 【問題文の状況の不思議さについて】 【「怒り出した」に関して】 【問題文と解説の整合性について】 以上の観点で分析していきましょう。 【オマージュという要素について】 当問題は、本家ウミガメのスープのオマージュになっています。レストランで運ばれてきたスープについて男が尋ねるというシチュエーションを引っ張ってきて、そこにアレンジを加えて別の真相に繋げているわけですね。 ところでオマージュというのは、作者が先行する作品に敬意を表するという、作品の内容そのものとは関係ない外部の要素です。その問題がどんな先行作品から影響を受けているかということは、その作品自体の評価とは関係ありません。 だから"オマージュだからこそうまくいっている部分"があったとしても、それをもって作品の評価を上げることはしない、というのが僕の方針です。 本家がいくら有名な問題とはいえ、言ってみればこの遊びに携わっている一部の人しか知らない内輪ネタでしかないわけですからね。 【問題文の状況の不思議さについて】 男が三日続けてレストランを訪れ、注文したスープについて質問しいずれもウミガメのスープだという答えを得、最後には怒り出す、というのが当問題の要約です。 ウミガメのスープの問題文に必須な不思議さ、不可解さに当たるんじゃないかという部分を抜き出してみると、下記のようになるでしょう。 ①自分で注文したメニューに関してその内容をわざわざ尋ねていること。 ②三日続けて同じ問答をしていること。 ③怒り出すこと。 このうちの①について、オマージュ元の本家では、男はウミガメのスープを注文しておきながら、それがウミガメのスープかどうかを質問しています。ここに、「なんで自分でウミガメのスープを注文しておいてそれがウミガメのスープかどうか訊くなんてまどろっこしいことをしてるんだ?」という疑問が生まれます。これがチャームを構成する一要素となっているのは間違いないでしょう。 一方当問題では、男が注文したメニュー名は明かされず、質問内容も「これは何のスープだ?」というものでした。本来ならここに不思議さは発生しません。メニュー名は必ずしもその料理の内容を事細かに説明しているわけではなく、中身を把握しないまま注文することは多々あるからです。自分で注文して出てきたものが実のところ何であるか尋ねるというのは、わりと普通の出来事です。ところがこれがオマージュであるために、本家のイメージを引きずって、「男はウミガメのスープとわかっていて注文したのだろう」という先入観、もしくはお約束のようなものが発生し、それが本家と同じような不思議さを装ってしまっています。これはオマージュだからこそ本家に助けられて成立しているチャームであって、当問題そのものの実力ではないと考えます。 また②に関して、三日続けて同じ問答をすることは確かに不思議ですが、「日替わりスープなのに毎日同じだったから怒った」という真相に対して、「何故三日連続でレストランに来て日替わりスープを注文したのか?」という疑問は特に意味を持ちません。これは「男はそういう人だった」と納得するしかないことで、作者が疑問に思ってほしかった部分とは違うでしょう。 こうして見てみると、問題文で純粋に不思議と言えるのは③の怒り出すことだけになります。 〈参考〉 『【世界田中奇行】田中紀行』http://sui-hei.net/mvs/show/16022 MVSコメントの中に「「田中奇行」シリーズだからこそ囚われる第一の先入観」という評があります。これは確かにその通りで、このトリックはラテシンにおいてそれまで積み重ねられてきた「世界田中奇行シリーズ」の存在に助けられていることは間違いありません。とはいえ、それはやはりこの問題そのものの実力ではありません。ひとたびラテシンを出てしまえば、「世界田中奇行シリーズ」など誰も知らないのです。この問題そのものとして見るなら、先ほどの評にある「第一の先入観」はひとえにタイトルのみに担わされています。 【「怒り出した」に関して】 さて「怒り出した」についてですが、これは参加者に不思議だなと思わせるには少し弱いと思います。非常識な行動をした人に対して怒るのは当たり前の話で、逆に言えば、主人公が誰かに対して怒ったのなら、その誰かは何かしらの非常識な行為をしたのだろうという推測も自然に出てきます。だから怒られた人物の非常識な行いが解説されても、方向性としては想像通りで、驚きはそんなにありません。 そういうことが予想されるので、「怒った。何故?」とか「泣いた。何故?」という締めの問題文はチャームがなくなってしまうことが多いです。 〈参考〉 『そっか。』http://sui-hei.net/mondai/show/22201 「涙を流した。何故?」という締めかたなのでチャームは低いですが、解説では「涙を流したとあれば悲しみや嬉しさで感情が高まったのだろう」という大方の予想を裏切っています。感情の理由を問うならこういう形にしたいものです。 【問題文と解説の整合性について】 さて問題文から解説までを通して読んでみると、不整合な部分はありません。矛盾なくすべて筋が通っています。だから納得感という観点では満点でしょう。 ただ、だからこそ、簡単すぎると言わざるを得ません。 【問題文の状況の不思議さについて】の項で説明した通り、男がメニューについて質問する理由については、本家のお約束に目を濁らされた参加者でなければ、初見で解決できます。残る謎は怒った理由だけですが、これも素直に考えればシェフが何らかの非常識な振る舞いをしたのだろうと容易に推理できます。 そこで三回繰り返された問答を見てみると、男は三日間同じメニューを提供されたことがわかります。カレーが二日間続いて親に文句を言う、という状況はおなじみなので、「同じメニューが連続」ということからそれを類推するのは自然な発想でしょう。 ここまで、質問も発想の転換もなしでたどり着けます。あとはシェフが男のお抱えで気が利かないと怒ったのか、あるいは「気まぐれスープ」と書いてあるのだからちゃんと気まぐれしろよなのか、はたまた「日替わりスープ」なのに毎日同じかよなのか、そういう細部を詰めていくだけです。その細部詰めの過程に驚きや発見は特にないでしょう。 簡単すぎることがいけないと言っているわけではありません。スナイプされた問題にも名作はたくさんあります。ただそういう作品は、参加者が答えを"閃く"という瞬間があるのです。ベールや先入観で抑圧されていた真相が、まるで指先でつまんだホースから水が吹き出すように、一気に現れ出てくる感触。そこには心地よい驚きがあるのです。 同じアナロジーを用いれば、当問題は指先でつまんでいないホースのよう。書いてあることから当たり前に想像される事柄を繋いでいくと当たり前にたどり着く真相は、ホースからチョロチョロと垂れ流される水と同じで、閃きと呼べるような勢いはありません。 さてここまで色々と見てきましたが、実を言うと当問題に欠点と言えるほどの悪いところはありません。すべての項目で及第点を取れていると思います。ただ、突出したものがない。どの項目をとっても何かが足りないという感じ。 名作を生み出すためには、ウミガメのスープとして整える器用さだけでなく(アルバートさんはこの点、群を抜いていると思います)、何かしら飛び抜けたワイルドさを身につけるべきでしょう。どうすれば身に付くかというのはなかなかアドバイスしづらいですが、例えばラテシンのMVSの部門別ランキング上位を見て参考にするとか……。 向上心を持ち続ければ大丈夫だと思います。と適当に締めておきます。
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