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おねしょ対策法 (コメント数:9)

1 雨人 2018-01-23 16:07:09 [PC]

登場人物

○小林絢香
主人公。中学2年生。おねしょが治らない。

○小林健太
絢香の弟。小学1年生。やんちゃで生意気。

○小林清香
絢香の妹。健太と双子。小学1年生。気弱で優しい性格。

○小林正美
3人の母親。シングルマザー。真面目で厳しい性格。

2 雨人 2018-01-23 16:08:22 [PC]

ピピピ……

目覚まし時計のアラーム音で、目を覚ました。下半身がぐっしょりと重い。嫌な予感がする。私は、おそるおそる布団をめくった。案の定おねしょをしていた。私はため息を吐いた。
私は、1カ月ぐらい前から週に2、3回おねしょをしていた。原因はよく分からない。強いて言えば、進級による環境の変化か。

バン!

勢いよく部屋のドアを開けて、ママが入ってきた。鬼のような形相を浮かべている。
「絢香!あんたまたおねしょしたの!?」
私の返事を待たず、ずかずかとベッドに歩み寄って、布団をはぎとった。
「まったくもう!中学2年生にもなって、恥ずかしくないの!?」
「ごめんなさい……」
「お布団洗濯するから、早くどいて!シャワー浴びてきなさい!」
「はあい……」
私はのろのろとベッドを下りると、うつむいて部屋を出た。

リビングに入ると、弟の健太と妹の清香が朝食を取っていた。二人は双子で、ともに小学1年生だ。
「姉ちゃん、またおねしょしたのかよー!だっせ~」
「やめなよ健太」
軽口を叩く健太と、それを抑える清香。この子たちは、別におねしょはしない。
うちはママ、私、健太、清香の4人家族だ。ママとパパは、ずっと昔に離婚した。パパの不倫が原因だった。でも正直、当時のことはあまり思い出したくない。
「……うっさいなあ」
私は健太をにらみつけると、そそくさとお風呂場に向かった。

3 雨人 2018-01-23 16:10:01 [PC]

「みんなに、お話があるの」
その夜、4人で夕飯を食べた後、ママが唐突に口を開いた。みんなまだ、テーブルに就いている。
「な、なに?」
私は身構えた。ママの口調がとても冷たかったから。
「まずは、これを見てほしいの」
そう言うと、ママは後ろの棚からA4サイズのプリントを取り出し、私たちに配った。そこには、こう書かれていた。

『おねしょ対策法』

①絢香は、夜寝る前にお母さん、健太、清香のうち誰かに頼んで、紙おむつを当ててもらわなければならない。
※絢香は、おむつを当ててもらう直前に、必ずトイレを済ませること。

②絢香は、朝起きたら前述の3人のうち誰かに頼んで、おむつチェックを受けなければならない。
※もし濡れていたら、ひざの上でお尻を出し、平手打ち30回。

③おねしょが治るまで、姉、弟、妹の関係を逆転する。(絢香は健太、清香のことをお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼び、逆に2人は絢香のことを呼び捨てして構わない。)

追記
おむつを当ててもらったり、チェックをしてもらった後は、必ずお礼を言うこと。また、おむつ代は、絢香のおこづかいから支払う。

4 雨人 2018-01-23 16:11:38 [PC]

「なに……これ……?」
私は、唖然とした。
「決まり事よ。お布団を汚さないための、そしてあんたのおねしょを治すための。今日から実施するわ」
ママは平然と言った。言い忘れていたけれど、ママは法律関係の仕事をしている。計画を立てたり、ルールを作るのが好きな性格だった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!嫌だよ、おむつなんて!赤ちゃんじゃないんだから!」
私は思わず、立ち上がった。
「おねしょをする子は、赤ちゃんと同じよ。それに、朝お布団やパジャマを洗濯するのは、大変なの」
「で、でもさ、それだったら別に、パンツタイプのおむつでよくない?誰かに当ててもらわなくてもよくない?それにこの、姉、弟、妹の関係を逆転するってなに!?」
「あんたはまず、おねしょは恥ずかしいということを、しっかり自覚しなくちゃいけないの。それが、おねしょを治そうという気持ちに繋がるのよ。だから、赤ちゃんのような扱いを受けなさい」
「で、でも……健太や清香に当ててもらうなんて……」
「お母さんが仕事や家事で忙しいの、知っているでしょう?手が離せない時もあるの。仕方ないじゃない」
ママは、ぴしゃりと言いきった。
「いいぜ、俺は!今度からお兄ちゃんって呼べよな、絢香!」
健太はにやにやしている。一方、清香は戸惑っている様子だった。私はそれ以上反論できず、押し黙った。
こうして、我が家では「おねしょ対策法」が施行された。

5 雨人 2018-01-23 16:12:50 [PC]

数時間後。リビングにて。
「それじゃあ絢香、おむつを当てるわよ。トイレは済ませたわね?」
「う、うん……。本当にやるの?」
「当たり前でしょ。これもあなたのためなの。それじゃあ、その上にお尻がくるようにして、仰向けに寝っ転がって。あと、ひざを立てて」
ママは、床に敷いたバスタオルを指さして、言った。横には、子ども用紙おむつのパッケージ。
私は、おそるおそる指示どおりにする。
「健太!清香!あなたたちもこっちに来なさい!」
テレビを見ていた健太と清香が、振り向く。
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで健太と清香も呼ぶの!?」
「二人も、これからやるかもしれないんだから、見て覚えないといけないでしょう?……あなたたち、分かったわね?」
「そ、そんな……」
健太と清香がやってきて、私の横に正座する。
「つべこべ言わないの!」
そう言ってママは、私のズボンとパンツを一気に脱がした。
「きゃあ!」
私は思わず、足を固く閉じて、恥ずかしい部分を手で隠した。
「何してるの?手をどけて、足を開きなさい。おむつを当てられないじゃない」
「……」
「……言うことを聞かないと、お母さん怒るわよ」
私は観念して、手をどけて、お股をゆっくりと開いた。同時に、顔を横にそむけた。
「ここの毛も、今度剃った方がいいわね。不衛生だわ」
ママが、私の恥毛をさわりながら、言う。健太と清香の前なのに……。
そして、ママは二人にレクチャーしながら、ベビーパウダーを私のお股に叩き、おむつを当てていった。

6 雨人 2018-01-23 16:18:39 [PC]

「お、おはよう……」
翌朝、私は憂欝な気分でリビングに入った。ママは洗い物をしており、健太はテレビを見ている。清香は、まだ起きていないようだ。
「絢香、起きたのね。じゃあ、健太におむつチェックしてもらいなさい」
「え……健太に……?」
「ママは今、手が離せないの」
「俺やるやる!」
健太が、嬉しそうに駆け寄ってくる。
私はたじろいだが、ママがそばにいる。抵抗は無理だろう。諦めて、パジャマのズボンをゆっくりと下ろした。
「どれどれ~?」
健太が、お股の付け根のギャザーの部分から、指を入れる。
「うわっ!きったね!おねしょしてる!」
健太が指を払う。
私は何も言えず、うつむく。
「じゃあ、おしりペンペンだな。……ここにケツ乗せろよ」
健太が正座をする。
「……」
私は動けない。
「絢香、お兄ちゃんの言うことを聞きなさい」
ママが冷淡に言う。
私はおむつを下ろすと、健太のひざにおしりを乗せた。
「いきまちゅよ~」
パン!
痛い。健太はまだ子どもだから、力はそんなにないはずだが、その分手加減を知らない。
パン!
「みじめだな!小学生の弟にお仕置きされるなんて」
パン!
「いつも偉そうなこと言いやがって、ムカつくんだよ!」
パン!パン!パン!
そして、30回叩き終わった。私は、おしりの痛さと屈辱感で、ぐちゃぐちゃに泣いていた。
「お礼言えよ」
健太が冷たく言う。
「……あ、ありがとうございました……」
そう発音するのが、精いっぱいだった。

その日一日は、ずっと落ち込んでいた。学校でも、「おねしょ対策法」で頭がいっぱいで、あまり友達と会話を交わさなかった。

7 雨人 2018-01-23 16:19:45 [PC]

その夜。
そろそろ、寝る時間だ。誰かに、おむつを当ててもらわないといけない。
リビングには、本を読む清香の姿しかなかった。健太は先に寝たし、ママは自分の部屋で仕事をしている。
正直、この状況なら自分でおむつを当てて寝ても、バレなさそうだ。でも、やっぱり何かの拍子でママに知られたら、と考えると怖かった。自分の臆病さが、嫌になる。
「さや……じゃなくて、お姉ちゃん。おむつを当ててくれない?」
結局、清香に声をかける。
「あ……うん」
清香は、本から顔を上げてうなずいた。そして、おむつとベビーパウダーを持ってきて、床にバスタオルを敷いた。
「準備できたよ」
「うん」
私は、ひと思いにズボンとパンツを下ろし、バスタオルの上に寝っ転がった。そして、ひざを立ててお股を開いた。こういうのはきっと、躊躇わずにやった方がいい。
「わわわ……パ、パパッと終わらせるからねっ」
清香は、私の恥ずかしい格好を見て真っ赤になった。正直、そんな反応をされると、余計に恥ずかしい。
清香は丁寧に、でも急いで私のお股にベビーパウダーを付け、おむつを当ててくれた。その心づかいが、嬉しかった。
「ありがとう。お姉ちゃん」
「……二人の時は名前でいいよ。お姉ちゃん」
清香は、柔らかくほほ笑む。この子は気弱で優しい。全く、誰に似たんだろう。
私は、もう一度清香にお礼を言うと、立ち上がってリビングを後にした。

8 雨人 2018-01-23 16:20:58 [PC]

それから、1カ月が過ぎた。相変わらずママに叱られたり、健太に馬鹿にされたりしながら、おむつを当てられたり、お仕置きを受けたりしている。
私は、すっかりふさぎ込んでいた。あまり、人と話さなくなったし、夜に布団の中で泣いたこともあった。また、それと比例するように、おねしょの方も悪化していた。今では、ほぼ毎晩失敗している。
地獄のような日々だった。

そんな、ある夜。
寝る時間になり、私はトイレでおしっこをして、リビングに向かった。
いつものように、おむつを当ててもらうために。
リビングには確か、ママと清香がいたはずだ。優しくしてくれる、清香に頼もうか。でも、清香に気をつかわせちゃうかな。
そんなことを考えながら、リビングのドアに手をかけた、その時。
「マ、ママ。あのね……」
清香の声が聞こえた。
「なに?」
「その……おねしょ対策法、もうやめない?」
私は息をのむ。
「清香、あなた何を言っているの?」
「だ、だって、お姉ちゃんがかわいそうだよ……」
声が震えている。清香が、こんな風にママに意見することは珍しい。きっと相当な恐怖だろう。
「かわいそうじゃないわ。だって、あの子がおねしょするのが、悪いんでしょう?」
「……おねしょは、悪い事なの?」
「悪い、というより正しくないわね。中学2年生にもなって、おねしょをすることは正しくないの」
「……正しい事をしているのに、どうしてお姉ちゃんは泣いているの……?」
「そうね。正しい事は、時に痛いからよ。でもそれを乗り越えないと、成長できないの。辛いかもしれないけれどね」
「わ、私は間違っていたとしても、お姉ちゃんには笑っていてほしいよ……」
「何度も言わせないで。だからそれは、正しくな―」
「正しいとか、正しくないとか、もっと大事なことあるでしょ!?ママは頭が良いのに、どうしてそれが分かんないの!?」
清香はそう叫ぶと、リビングを飛び出していった。
私は、呆気にとられる。しばらくして中をのぞくと、ママが呆然と立ち尽くしていた。

9 雨人 2018-01-23 16:22:26 [PC]

翌日、「おねしょ対策法」は撤廃された。健太だけが、少し不満そうだったけど。
でも、それで全てが解決したわけではない。頻度は減ったとはいえ、私はまだおねしょをする。ママだって、全く怒らなくなったわけではない。
でも、変化はあった。
あれ以来、ママは私のことを知ろうと努めている。ぎこちない会話を重ねながら。
その気持ちに応えるために、私もママのことを知りたいと思う。できれば、健太や清香のことも。
きっと、私たち親子は、初めから言葉にすることをあきらめていた。あるいは、恐れていた。
私の傷を。そしてママの傷を。
だからママは、おねしょという結果だけを見て「正しい」「正しくない」という概念に、安直に当てはめた。その結果が、今回の「おねしょ対策法」だったのだろう。そして、私もそれに反抗しなかった。
大丈夫。きっとうまくいく。今はまだ途中だけど。おねしょも治るし、ママとももっと仲良くなれる。
今はそう信じたい。

「おねしょ対策法」了
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