材大なれば用を為し難し

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掃除に来た駅夫に (コメント数:1)

1 Ryou 2013-09-10 00:11:47 [URL]

 掃除に来た駅夫に、襟首をつかまえられて小突き廻されると、「うるさいな」といった風で外へ出て行くが、またじきに戻ってきて、じっとストーヴの傍に俯向いて立ったりしていた。
「お前どこまで行くんか?」耕吉はふと言葉をかけた。
「青森まで」と小僧は答えた。青森というのは耕吉の郷国だったので、彼もちょっと心ひかれて、どうした事情かと訊いてみる気になった。
 小僧は前借で行っていた埼玉在の紡績会社を逃げだしてきたのだ。小僧は、「あまり労働が辛いから……」という言葉に力を入れて繰返した。そして途中乞食をしながら、ほとんど二十日余りもかかって福島まで歩いてきたのだが、この先きは雪が積っていて歩けぬので、こうして四五日来ここの待合室で日を送っているのだというのであった。
「巡査に話してみたのか?」
「話したけれど取上げてくれない」
「そんなはずってあるまい。それがもし本当の話だったら、巡査の方でもどうにかしてくれるわけだがなあ。……がいったいここではどうして腹をこしらえていたんだ? 金はいくら持っている? 年齢はいくつだ? 青森県もどの辺だ?」
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