材大なれば用を為し難し

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グルゥバッハ夫人 (コメント数:1)

1 Ryou 2013-10-03 19:31:37 [URL]

 グルゥバッハ夫人はただうなずいた。この口もきけないで当惑している有様は、表面上はただ傲慢さのように思えて、Kをいっそういらつかせるのだった。彼は、部屋の中を窓ぎわから扉まであちこちと歩きはじめ、それによってグルゥバッハ夫人の引下がる機会を奪ってしまったが、彼女はそういうことがなければきっと引下がっていたことであろう。
 ちょうどKがまた扉のところまで来たとき扉をたたく音がした。それは女中で、モンターク嬢がKさんと少しお話ししたいことがあり、それゆえ食堂でお待ちしているから、おいでくださるようお願いします、ということを伝えた。Kは女中の言うことを考えこんだようにじっと聞いていたが、ほとんど嘲笑的な眼差をして、驚いているグルゥバッハ夫人のほうに振返った。この眼差はKがすでにずっと前からモンターク嬢の招きを予想していたのだし、それはまた、この日曜日の午前にグルゥバッハ夫人の下宿人たちによって味わわされねばならなかったわずらわしいことと大いに似合いのことだ、と言っているように見えた。すぐまいります、という伝言を持って女中を帰らせ、上着を換えるため洋服箪笥のところへ行き、面倒な人だとぶつぶつこぼしているグルゥバッハ夫人に対する返答として、朝食の道具をもう持っていってもらいたい、と頼んだだけだった。
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