材大なれば用を為し難し

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「そうだ」と (コメント数:1)

1 Ryou 2013-09-10 00:16:12 [URL]

「そうだ」と、耕吉は答えるほかなかった。そして、それで想いだしたがといった風で上機嫌になって、
「じつはね、この信玄袋では停車場へ送ってきた友だちと笑ったことさ。何しろ『富貴長命』と言うんだからね。人間の最上の理想物だと言うんだ。――君もこの信玄袋を背負って帰るんだから、まあ幸福者だろうてんでね、ハハハ」
 惣治にはおかしくもなかった。相変らずあんなことばかし言って、ふわふわしているのだろうという気がされて、袋から眼を反らした。その富貴長命という字が模様のように織りこまれた袋の中には、汚れた褞袍、シャツ、二三の文房具、数冊の本、サック、怖しげな薬、子供への土産の色鉛筆や菓子などというものがはいっていた。
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