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■ 日韓首脳会談5日前の報道 数ある朝日新聞の報道の中で、従軍慰安婦問題の展開過程に大きな影響を与えたことが明らかなものがあるとすれば、それは1992年1月11日になされた「慰安所への軍関与示す資料 防衛庁図書館に旧日本軍の通達・日誌」という表題の報道である。 よく知られているように、この報道は単にそれまでの「慰安所に対する日本政府の関与はなかった」という政府の公式見解を覆すものであったのみならず、それが予定されていた日韓首脳会談のわずか5日前に行われたことにより、当時の日本政府を政治的に窮地に追い詰めることとなった。結果、十分な準備なしにこの首脳会談に臨んだ日本政府は、この首脳会談を前後する時期、実に13回にわたって当時の宮沢首相が「お詫び」表明を繰り返すことを余儀なくされることになっている。勢いを得た韓国政府は、その直後から、それまでの従軍慰安婦問題を含み、日韓間の全ての過去に関わる賠償問題は「日韓基本条約にて解決済み」という姿勢をかなぐり捨て、日本政府に元慰安婦に対する「何らかの形での補償」を要求するようになる。その意味でこの記事は、それまでの日韓両国間における慰安婦問題の状況を一変させ、この問題が政治問題化する分岐点的存在だった、といっても過言ではない。 とはいえ同時に、この記事について言えることは、他方でこの記事の本文が「過誤」を含んでいない、ということである。この時、朝日新聞が報じた史料が、日本政府の慰安所に対する「関与」を示すものであることは明らかであり、その指摘自身には間違いは存在しない。また、朝日新聞の「検証」記事や、政府自身の「河野談話検証報告書」が述べているように、同様の史料があることは既に日本政府にも知られていたから、その意味で本来なら、このことが何時公になってもよいように、日本政府があらかじめ入念な準備を積んでおくべきだったことは明らかである。当時の混乱した事態の一義的な責任が、この点を怠った当時の日本政府にあり、朝日新聞側にないことは疑いがない。 しかしながら、朝日新聞の側もまた、このタイミングで報道を行うことにより、首脳会談に混乱が生じるであろうことは十分に予測できたはずだ、ということもまた、見落としてはならない。 例えば、同紙は翌12日にはこの問題について「歴史から目をそむけまい」という社説を書いて日本政府を非難している。この時点において朝日新聞が、日本政府は勿論、韓国政府と比べても、より元慰安婦支援団体側に近い立場から、慰安婦問題に関する主張を展開していることは明白だった。また、わずか首脳会談まで5日しかない段階で、日本政府が新たな方策を構築することは不可能に近かったから、この段階で突如報道を行っても、首脳会談で慰安婦問題に対する具体的な解決策を見いだすことが困難であることは、誰の目にも明らかだったに違いない。 だからこそ、この報道を行うに際して、当時の朝日新聞の記者達がその影響についてどのように考えていたかは、慰安婦問題の展開において重要であり、それ故に「特集」においても積極的に明らかにされるべきだったろう。「重要な新しい事実が見つかったので、日韓関係や首脳会談に与える影響など考えずに報道しました」というのであれば、実際の朝日新聞の姿勢と乖離しているように見えるし、責任あるメディアとしても欠く所が大きい、と言われても仕方ない。
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