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― テレビに出ている「専門家」の強い主張の 一つが、「とにかく PCR検査を増やすべき」というものでした。 これはどうなのでしょう? これは絶対に間違いです。 少しでも専門知識がある人は、全くこれを望んでいません。 他国と日本が違うのはこの点で,本当に医師が疑った例にのみ検査をやっている点で感染の広がりをコントロールできていることは確実です。 とはいえ確かに検査のスピードは遅かったから、そこは今改善を進めています。 ただし、誰彼構わず検査をオーダーできるような状況を作らなかったことは 100%正しかったと考えています。 日本のように国民皆保険の国で、なおかつ感染症に詳しくない町のクリニックのようなところまでもが、自由に PCR検査をできるような環境を作っていたら、間違いなく院内感染が多発していたでしょう。 おそらくニューヨークやイタリアの比でない状況になったと思います。 「かかりつけ医」に相談することは否定しません。 しかし、そこに多くの人が押し寄せたら結局クラスターを発生させかねません。 そういう状況を作らなかった点では、当初、検査を絞ったことは決して批判されるようなことではないのです。 現在報告されている院内感染にしても、慣れてない人が普段使わないような感染防御具を適切でない使用をしたがために他の人や患者に感染させる例があとを絶ちません。 ドライブスルーでの PCR検査を増やせ、という意見についても、乱暴に思います。 病院外での検査体制は進めたほうがいいでしょうが、やり方を間違えるとかえって感染者を増やすことにもなりかねません。 別の観点から補足させてください。 毎年のインフルエンザの流行の仕組みをご存じでしょうか。 PCR検査が注目されることで「偽陽性」「偽陰性」といった言葉もよく目にされるようになったと思います。 前者は「本当は陰性なのに陽性と出ること」で後者は「本当は陽性なのに陰性と出ること」ですね。 実はインフルエンザの検査でも「偽陽性」「偽陰性」は 一定の確率で発生します。 日本では「インフルエンザかな?」となったらまず病院に行って、検査をしてもらって、タミフルを飲んで、ということが当たり前に思われている方が多いかと思います。 でも実は、こんなことをしている国はそんなに多くありません。 一つには先ほどから言っているように、医療費が高い国では、そのたびに大変な料金が発生するので、いちいち検査しない、という人が多いのです。 また、タミフルは病気を治す薬というよりは、よくなるまでの期間を短くする(7日 が 5日半になる)という性質のものです。 アメリカならば、この検査とタミフルだけで下手をすると 500ドルはかかるでしょう。 だから多くの人は「家で寝て回復を待つ」のです。 私もそうしています。 ところが日本は医療費が安いことに加えて、「休むなら証明書を出せ」という習わしが学校や企業にあるので、こぞって病院に来て検査を求めるわけです。 問題は、インフルエンザの簡易キットの感度は 7割 から 8割なので、2〜3割の人は本当は陽性なのに「陰性」という結果になります。 その人たちは、病院のお墨付きをもらったということで、自由に動き回りますから、コミュニティの中で感染を広げます。 実は、これが毎年のインフルエンザの流行の大きな原因なのです。 今回のことを教訓に、「インフルの証明書がないと休めない」といったおかしな慣習はなくしてほしいものです。 何にせよ具合の悪い人は休むべきです。 結果としてそのほうが学校や職場のためにもなります。 そして、今年、インフルエンザがあまり流行していないのは、多くの人が手洗い、うがいをして、なおかつちょっとでも具合が悪ければ、自ら行動を抑えるようにしたからです。 その結果、「実はインフル」の人が感染を広めなかったわけです。
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