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【質問番号23:ぎんがけいさん】 もう一つ最近作ったスープから1つ持ってきました。 「消えた157」 https://late-late.jp/mondai/show/1067 問題への寸評をお願いします。 ラテシンを初めて2か月になりました。 最初の自信作から上達してるのでしょうか。 ぜひ、観ていただきたいです。 【鑑定士:牛削りさん】 はじめまして。激辛鑑定士の牛削りです。 すみません、最初に投稿した鑑定文の出来がよくなかったので再投稿させてください。 ※ぎんがけいさん ⇒ 辛口批評注意 ※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意 【謎がないことについて】 【正解条件がおかしいことについて】 【答えの正当性の根拠とは】 【問題を作るというのはどういうことか】 以上の観点で分析しつつ、ウミガメのスープの根本をおさらいしましょう。 【謎がないことについて】 この問題には謎がありません。 問題文を要約すると、「第156回の大会からちょうど1年後の同じ大会が第158回だったのは何故?」となります。 間の157回はどこへ行ったのか、ということですね。 問いかけを見た瞬間に、誰でも次の@やAの可能性を思い浮かべるでしょう。 @年に2回開催される大会だった。 A157回は何らかの理由で欠番とされた。 これらの可能性で十分説明できるので、問題文の状況が全然不思議に見えません。 @Aのどちらなのか、問題文の時点ではわかりませんが、それがどちらであろうと、参加者の予想の範囲内です。どちらが正解なのかということへの興味は、正直なところ沸かないという人が大多数でしょう。 もしも問題文の中で@Aの可能性が潰されていたら、一気に参加意欲が増すかもしれません。 <問題> 第156回大会の1年後に開かれたのは第158回大会だった。 この大会は1年に1回のみ開催されており、第158回まで中止も延期も欠番も無かった。 では第157回はどこへ消えたのだろうか? これならすごく不思議です。まあ、解説までは考えていませんが。 【正解条件がおかしいことについて】 上で見たように、この問題文は「第156回の1年後が第158回だったのは何故か?」と要約できます。 解説を見ると、大会は年間2回行われていて、種目は違うものの同じ大会名となっており、回数も合算でカウントされているということがわかります。 この情報を用いて「第156回の1年後が第158回だったのは何故か?」に回答するなら、「1年後までの間にもう1回大会があったから」で十分です。 「奇数回と偶数回では種目が違う」などということに言及する必要は全くありません。 例えるなら「私は今朝何を食べたでしょう?」という問いかけに対して、「牛丼」ではなく、「伊万里焼で牛丼を食べた」という答えを求めるようなものです。 No.1「1年に2回行われる大会だったのかナ? 」 これは「正解」とすべきであって、ぎんがけいさんの回答のような「注意付きのNO」というのはコミュニケーションとしてちぐはぐです。 こういうことが起きてしまわないよう、問題を作る際には以下のことをチェックするようにしてください。 ・問題文が結局は何を問っているのか自分でちゃんと把握する。 ・正解条件が問題文の問いかけに過不足なく答える形になっているか確認する。 【答えの正当性の根拠とは】 ところでウミガメのスープには問いかけがあって答えがあります。 問いかけられた人が色々な質問をして、答えと一致する内容の質問が出た場合、それが正解とされます。 ではこの、「その答えが正解とされる根拠」とはいったいなんでしょうか? もちろん形式的には、≪出題者が用意したものだから≫です。 どんな内容であれ、出題者が解説欄に書き込んで出題したその内容が正解となるのがこのゲームのシステムです。 <問題>レストランで注文したウミガメのスープを一口食べて「これはウミガメのスープですか」と質問し「間違いありません」という答えを得た男が、大嫌いだった椎茸を克服できたのは何故? <答え>ほびゃっぷへけろぺてろくるーむ こんなことになっていたとしても、形式的には「ほびゃっぷへけろぺてろくるーむ」が正解で、その根拠は「解説にそう書かれているから」です。 でも、ウミガメのスープをちゃんと楽しみたい、楽しませたいという人には、こんなところで思考を止めてほしくありません。 「その答えが正解とされる『実質的な』根拠」を考えてみましょう。 答えらしきものがいくつもあったとして、その中で解説に書き込まれているものが唯一正解とされるのは何故なのか。 実質的と言ったのだから、ざっくり≪他の答えよりも良い答えだから≫と言えるでしょう。 だとすれば、 「解説には『ほびゃっびゃへけろぺてろくるーむ』と書かれているけど、『男の母親は男にウミガメのスープと偽って椎茸スープを飲ませていた。レストランで飲んだウミガメのスープの味が違うことでそのことに気付いた男は、(なんだ、椎茸ってうまかったんだ)と思い椎茸嫌いを克服した』っていう答えの方が正解にふさわしくない?」 というクレームが意味を持ってきます。 さてでは、二つの答えAとBがあって、Aの方がBより良いとはどういうことでしょうか。 理想的な問題の場合、Bなんか見なくても、Aを見た瞬間に「あ、これが間違いなく正解だ」と思ってしまいます。 何故そう思うのか。納得感、というとまたややこしい定義をしなくてはならなくなります。もっと感情的な話にします。 他のどの答えよりも良い答えというのは、そこに出てくる要素の一つ一つが、問題文がなぜそういう表現になったのかを説明してくれるように思えるものです。「この答えだから問題文のここはこうなのか」というのがどの要素にもピタリとはまるんですね。そういう解説が来ると、形式論を超えてそれが正解であることに納得させられます。 というわけで、ある答えが正解とされる実質的な根拠は、≪それが他のどの答えよりも良い答えだと感じさせる答えだから≫と結論したいと思います。すっきりした結論ではないですが、良い問題にたくさん触れていくと、このまどろっこしい言い回しの真意がつかめると思います。 先人が作り守ってきたウミガメのスープという文化に入り込んで、それを壊さず、発展に寄与していきたいという気持ちが少しでもあるのなら、形式論ではなく実質論を採ってください。 僕はすべての出題者にそれを望みます。 さてでは、ぎんがけいさんの問題の答えに形式を超える実質的な根拠があるか見てみましょうか。 先ほど述べた通り、問題文から推測される答えは@Aの2パターンあります。正解は@でした(余計な正解条件がついていましたが)。Aではなく@であることに、実質的な根拠はあるでしょうか。@の方がAよりも良い答えだと、誰もが思うでしょうか。辛うじて、@の方がAよりも現実に起こっている例が多いという根拠はありそうですが、それだけです。@が間違いなく正解だと感じさせるものはありません。Aが解説に書かれていても、終わったあとの感想はそう変わらないでしょう。 ウミガメのスープのハウツーによく、「別解が無いかチェックしよう」というのがあります。でも僕は、問題文の状況を成り立たせる正解以外の説明があったっていいと思います。数多くあるそういう説明の中で、解説に書いたそれが、一番良いものだと思わせる力があればいいのです。 ダメなのは、解説に書いた答えが、他の答え候補に比べて特に良いという訳ではないという場合です。そういう問題が何故できてしまうのか、それは次項で説明するように、問題を作る動機が弱いからだと考えます。 <参考> 「落第シューター」http://sui-hei.net/mvs/show/35118 に寄せられた、SoMRさんの批評文を読んでみてください。 これが良い問題だと言いたいわけではないのですが、SoMRさんはきっとこの解説に、上に書いたような実質的な根拠を感じられたのだと思います。 【問題を作るというのはどういうことか】 またそもそも論みたいになって恐縮ですが、問題を作るというのはどういうことかについて語りたいと思います。 問題はどういうときにできるのか。リラックスしている時、集中して考えている時、など、人によって様々ですが、問題が出てくる前の最後の瞬間は同じだと思います。 「あ、いいこと思いついた」「あ、いい経験した」「あ、いいこと聞いた」……。 この「あ、」が大事です。「あ、」無しでは問題なんか作れません。もちろん形式的には、出題されてさえいればどんなものであっても問題は問題ですが……。 「あ、」を問題に仕上げるにはまたもうひとつステップがあります。 そのままでは問題にならない思い付きが大半です。アイディアのどこをいじくって問いかけの形に持っていくか。そこで技術が試されます。 でもやっぱり技術とは関係ない最初の「あ、」がウミガメのスープの問題には一番大事です。不可欠です。 あなたの“問題”には「あ、」がありますか? 「あるよ、競馬を見たとき、これって面白いかもなと思ったんだよ」と主張されるなら、僕の見立てが間違えていたことになります。 その場合には二段階目の技術が明らかに足りていません。 何も頭を悩ませずただ事実を並べて“出題”しているだけ。僕にはそう見えます。 例えば何故コウヘイが第156回大会に参加できなかったという設定にしたのか、説明できますか? 彼が第156回大会に参加した後、来年の同じ大会にも参加したいと思ったという流れにしなかったのは何故ですか? そこにあなたの思索は少しでも入っていますか? 問題を作るというのは、まずひらめいて、それについて考えて、表現を吟味していくこと。 僕はそう思います。あなたの問題はその過程を辿っていますか? ─────────── ─────────── ─────────── さてぎんがけいさんの問題には、謎がない、正解条件がおかしい、などの欠点がありました。これらが何故生じたのかというと、出題動機が弱かったからだと思います。勝手にぎんがけいさんの心中を決めつけるようで僭越とは思いますが、「競馬の大会は秋と春とで競技内容が違う」という事実は、ウミガメのスープを作ろうという動機を形成するにはあまりにも心許ないと考えます。 これは発想でも発見でもなくて、まだ発想の種の状態です。この種に思考という名の水をやって、丁寧に育てていくのです。あるとき「あ、」が芽を出します。するともう、出題せずにはいられなくなります。これが出題動機がちゃんとある状態。そのとき問題は生まれるのです。 感覚的な話ばかりでわかりにくかったとしたらすみません。 いつかぎんがけいさんの素敵な問題を読める日を楽しみにしています。頑張ってください。
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