家庭内暴力(DV)
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1 manolo 2014-10-12 11:33:56 [画像] [PC]

出典:『よくわかる女性と福祉』、森田明美編著、4/20/2011、ミネルヴァ書房、(IX-5. ドメスティック・バイオレンス(DV))、山田知子、pp.152-155

1-1. 【1. ドメスティック・バイオレンスの実態】
 ミドルエイジは更年期という心身のゆらぎ、熟年離婚や親の介護や看取りなど、シビアで高齢期へつながる生活問題の火種を抱えやすいリスキーな時期といってもよいでしょう。こういう時期こそシーシャルなサポートが必要です。次に女性のソーシャルサポートの中で重要と思われる熟年離婚の原因の一つに挙げられていたドメスティック・バイオレンス(DV)について取り上げ、DVとはなにか、どのようなソーシャル・サポートが必要か考えてみましょう。(p.152)

2 manolo 2014-10-12 11:37:43 [PC]

1-2.
 DVとは、一般的に「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」です。1993年、「国連女性に対する暴力撤廃宣言」をきっかけに社会の関心が集まりましたが、DVが問題として社会の全面に出てきたのは、1995年の世界女性会議(北京)で女性への暴力がさまざまな角度から語られたことがきっかけといわれています。この会議では、夫や恋人からの暴力、子ども時代の性的虐待、旧ユーゴ地域やアフリカなどの民族紛争における集団レイプ、従軍慰安婦、政治的・経済的人権侵害などの女性への暴力が体験者自身や支援者によって語られました。(p.152)

1-3.
 2000年、当時の総理府男女共同参画室が行った「男女間における暴力に関する調査」で、はじめて男女間の暴力が統計的に明らかになりました。被害者はほとんど女性でした。「夫または妻から暴力を受けた経緯の有無」の質問に対し、「何度もあった」と回答している主なものの数値を次に挙げておきます。

 「命の危険を感じるくらいの暴行」(2.7%)
 「医師の治療が必要となる程度の暴行」(2.6%)
 「医師の治療が必要とならない程度の暴行」(3.4%)
 「無視される」(4.4%)
 「性的行為の強要」(4.1%)
 「だれのおかげで生活できるんだ・甲斐性なしといわれる」(4.4%)
 「大声でどなられる」は(37.7%)
 特に「大声でどなられる」は約4割にものぼり、大変高い比率でした。

 また、「相談の有無」について、「何らかの相談をした」は50.4%でしたが、どこ(だれ)にも相談しなかった」も40.4%にものぼり、多くの女性たちが深刻な暴力を受けていながら、相談をしていない実態が明らかになったのです。(p.152)

3 manolo 2014-10-12 11:46:37 [PC]

1-4.
 家庭内の夫婦間の暴力は、私的な領域に押しとどめられ、表面化しにくいことが特徴です。暴力を受ける女性も恥ずかしい、自分にも落ち度があるのではと考え、我慢してしまうこともあります。しかし、女性に対する暴力は重大な人権侵害です。人権擁護、男女平等の実現のため、配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護を目的とする法律が、超党派の女性議員によって立法化され成立しました。DVは犯罪であると明確になったのです。

1-5.
 2009年の内閣府調査結果は、表IX-3に示す通りです。男性も暴力の対象になっていますが、圧倒的に女性が被害者です。15〜20%程度の女性はなんらかの暴力の被害にあっていることが読み取れます。(p.153)

1-6. 【2. 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)】
 2001年4月、DV防止法が成立しました。その後、2004年、2007年に改正され、暴力の定義の拡大、法律の保護の対象の拡大(被害者の保護)などが拡充されています。(p.153)

1-7. 〇暴力の定義
 この法律では、配偶者からの暴力を次のように定義しています。

配偶者:配偶者、元配偶者、事実婚のパートナー、元パートナー

暴力:身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって、生命や身体に危害を及ぼす言動、たとえば「お前は馬鹿だ」などと人間としての尊厳を侵害する言葉による暴力も含まれます。(p.153)

4 manolo 2014-10-12 11:57:54 [PC]

1-8. 〇法律の内容
@ 配偶者からの暴力の防止、被害者の自立支援・保護を国・地方自治体の責務とする。
A 主務大臣は基本方針を、都道府県は義務、市町村は、基本方針の策定を努力義務とする。
B 都道府県は義務、市町村は「配偶者暴力相談センター」の設置を努力義務とし、被害者支援のための相談、カウンセリング、自立援助、関係機関との道路調整等を行う。
C 婦人相談所は、被害者(同伴する家族を含む)の「一時保護」を行うこと、民間シェルターに委託して行うこともできる。
D 福祉事務所は、法令に従って、被害者の自立支援のために必要な措置を取るよう努める。
E 配偶者からの暴力を発見した人は、支援センターや警察に通報するよう努めなければならない。
F 警察は通報を受け、法令に従って、被害者発生防止と被害者の保護に努めなければならない。
G 関係各機関は、被害者の国籍、障がいの有無にかかわらず、協力して迅速な対応をしなければならない。
H 保護命令とは、配偶者から脅迫・暴力により、生命や身体に危害を受けるおそれのあるとき、被害者の申し立てによって、裁判所が加害者に対して発する命令のことであり。以下のものがある。保護命令に違反したものは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金で処罰される。

接近禁止令:被害者やその子、親族等の身辺へのつきまとい、住居付近・職場・学校等への徘徊を6か月間禁止する。(再度申立て可能)。

退去命令:当該住居からの2カ月間の退去と付近の徘徊の禁止(再度申立て可能)(pp.153-154)

5 manolo 2014-10-12 11:59:00 [PC]

1-9. 【3. 相談機関】
 DVに関する相談は下記の所などさまざまな機関で行っています。

〇配偶者暴力相談センター
 都道府県の婦人相談所などがこの機能を果たしています。市町村が設置してる配偶者暴力相談センターもあります。相談または相談機関の紹介やカウンセリング、被害者及び同伴者の緊急時の安全確保及び一時保護、被害者の自立生活促進のための情報提供その他の援助、保護命令制度利用に関する情報提供や保護する施設に関する情報提供等を行っています。(p.154)

1-10.
〇民間シェルター
 民間団体によって運営されている暴力を受けた被害者が緊急一時的に避難できる施設です。民間シェルターは、被害者の一時保護だけでなく、相談、被害者の自立へ向けたサポートなど、被害者に対するさまざまな援助を行っています。NPO法人や社会福祉法人等の法人格を持っているところや、法人格を持たない運営形態を取っているところもあります。各都道府県・政令指定都市が把握している民間シェルターは全国で108カ所(2008年11月現在)ありますが、被害者の安全の確保のため、所在地は非公開です。(pp.154-155)

1-11.
〇DV相談ナビ
 暴力の被害にあっている当事者の多くはどこに相談したらよいかわからず、状況がどんどん悪化してしまいます。内閣府男女共同参画局は、どこに相談すればいいかわからないという人のために、相談先の電話番号を自動音声で案内する「DV相談ナビ」(0570-0-55210)を設置しました。DV被害は「恥ずかしい」ことではありません。とにかく相談することが被害者から脱出するための第一歩です。医療や福祉事務所、警察、学校などの関係者は、DVを疑うケースに出会うことがあるでしょう。発見したら関係機関につなげること、それがDVの被害を最小限にとどめることになるのです。(p.155)

6 manolo 2014-10-12 12:00:40 [PC]

(図)配偶者の暴力から身を守るさまざまな支援

配偶者などから暴力を受けた →

→ 相談したい

相談
〇配偶者暴力相談支援センター
・相談、相談機関の紹介
・カウンセリング
・情報提供(自立生活保護や保護命令制度、保護施設の利用などに関する情報提供)
〇警察
被害者の意思を踏まえ、配偶者の検挙、指導、警告、自衛対応策の情報提供など、適切な措置をとります。

→ 加害者から逃れたい 自立して生活したい

一時保護
〇婦人相談所や民間シェルター
被害者と子どもが一緒に、安全に過ごすことができる場所を提供しています。

自立支援
〇配偶者暴力相談支援センター
職業紹介や職業訓練などの就業の促進に関することや、公営住宅の確保に関すること、生活保護や児童扶養手当の支給などに関する情報提供を行っています。
→ 加害者を引き離してほしい

保護命令
〇裁判所
身体に対する暴力や生命などに対する脅迫などがあり、さらなる暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合、裁判所に申し立てると、加害者に対し、下記のような保護命令が出されます。

・被害者への接近禁止命令
・被害者の子または親族等への接近禁止命令
・電話等禁止命令
・退去命令
(p.155)

7 manolo 2014-10-12 12:07:29 [PC]

出典:『日本版ニューズウィーク』、9/30/2014、「DVへの無知をさらしたMFLの大甘処分」、p.50

婚約者を気絶するまで殴った選手を
事実上かばい続けたNFLのモラルと常識

2-1.
 エレベーターに乗り込んだときから、そのカップルの雰囲気はあまりよくなかった。行き先階のボタンを押す女を男が小突く。「何するの」と女が立ち向かうと、男はその右あごをはたいた。本気で怒った女が男につかみ掛かろうとすると、男は素早く女の顔を殴り付けた。女は手すりに頭を強打して、床に倒れこんだ。男は気絶した女を抱えてエレベーターを降りようとするが、ドアをまたぐ中途半端なところで降ろしてしまう。意識を失ったまま床に転がった女を、男は蹴り出そうとするがうまくいかない――。

2-2.
 そんなショッキングな監視カメラの映像が流出したのは9月初めのこと。そこに映る男、NFL(全米プロフットボールリーグ)ボルティモア・レイベンズのレイ・ライス選手は、ビデオが公開された日にレイベンズを解雇され、NFLからは無期限出場停止処分を言い渡された。

2-3.
 だが、この事件がいまアメリカで大論争を起こしているのは、衝撃的のせいだけではない。事件が最初には発覚したとき、NFLはライスにたった2試合の出場停止処分しか下していなかったのだ。NFLの言い分は、「監視カメラの映像を見ていなかったから」。そして被害者である妻(2月の事件当時は婚約者)ジャネーが、ライスを許し、自分にも非があると言ったからだ。

2-4.
 ライスは3月に暴行罪で起訴されたが、その翌日にジャネーと結婚。さらにカウンセリングを受けると約束して、刑罰や罰金を免除された。だからNFLも軽い処分を下した。だが、事件の全貌を暴露するビデオが流出して、状況は大きく変わった。変わらないのはジャネーだけかもしれない。ビデオ発覚後にスポーツ専門チャンネルESPNに出演した彼女は、「私は夫を愛しているし、夫の味方だ。これは家族の問題だということを理解して、私たちのプライバシーを尊重してほしい。」と訴えた。

8 manolo 2014-10-12 12:08:18 [PC]

【被害者の心理まで支配】
2-5.
 NFLがビデオを入手した時期をめぐっては議論がある。だが、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者の供述と現実に起きたこととの間には、しばしば大きな食い違いがあることは、ビデオを見ていなくても知っておくべきだろう。DVの被害者は、相手をかばい、別れようとしないことが多い。一方、暴力を振るう側は、被害者を友達や家族から遠ざけて、自分に精神的に依存させようとする。また殴っても相手が自分の元を去らないという一定の確信を持っている。

2-6.
 DV経験者の作家レスリー・モーガン。スタイナーによれば、DV被害者は暴力が終わってほしいと願う反面、「相手と別れたくない」と考えている。それは自分を殴った相手を愛しているからだけではない。離婚は失敗であり、結婚を続けるために努力するのは美徳だと、社会に刷り込まれているからだ。だからDVもカウンセリングで「治せる」と信じてしまう。

2-7.
 今回の事件で、DVとは肉体的な暴力だけではなく、加害者が被害者の言動を支配する精神的な暴力でもあることが、多くの人にもわかっただろう。ニューヨーク・タイムズ紙のジョディ・カンター記者は、ジャネーのこれまでの言動は「男に殴られる女の複雑な心理を人目にさらした稀有な例」だと指摘した。ライスがエレベーターでジャネーに振るった暴力と、事件後に彼女に取らせた態度。そのすべてがDVだ。「被害者が大丈夫と言ったから」は、もう言い訳にはならない。


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