ビットコイン
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1 manolo 2014-03-23 13:25:56 [画像] [PC]
出典:『Newsweek』/3/11/3014/「ビットコインは悪玉じゃない」pp.34-35
1-1.
ビットコインは麻薬の取引やマネーロンダリングに利用されかねず、結局はバブルに過ぎない悪い通貨だ――。登場してから5年。新通貨としての注目度が増加しているビットコインには常にこういった「悪玉論」が付きまとっていた。(p.34)
1-2.
その悪玉論が先週、日本で噴き出した。東京にある世界でも大手のビットコイン取引所「Mt. Gox(マウントゴックス)」が突然サービス停止に陥り、約480億円に相当するビットコインが消失して引き出せなくなったのだ。渋谷にあるマウントゴックスの運営元ディバン社には、投資した資金の返還を求める投資家が押し掛けた。(p.34)
2 manolo 2014-03-23 13:28:42 [PC]
1-3.
この取り付け騒ぎを見て、メディアのビットコイン批判は過熱した。「仮想通貨もろさ露呈」「日本の不安拡大」「消える運命」「ビットコイン破綻」……。あたかもビットコインのシステムそのものがすぐにも崩壊するような見出しが新聞に躍った。メディアだけではない。副総理兼財務・金融担当相の麻生太郎はビットコインについて、「誰も認めている通貨ではない。どこかで破綻すると思っていた。」と記者会見で述べた。アメリカでも、上院議員のジョゼフ・マンチンがマウントゴックス騒動後、米財務省とFRB(米国連邦準備理事会)に宛てた書簡で、「非常に不安定ので米経済に混乱を招く」とビットコインの使用禁止を求めた(FRB)ジャネット・イエレン議長は「FRBはビットコインの監督・規制権限をもたない」とコメントした。(p.34)
1-4.
だがマウントゴックスの騒ぎの原因は、あくまでビットコインの仕組みにあるのではない。今回の騒動の原因は、あくまでビットコインの取引を仲立ちする中間業者マウントゴックスにある。例えるなら、銀行預金の取引データが消滅したためにその銀行が負債を負って倒産したようなもの。だからと言って紙幣や硬貨という「お金」の価値には影響しないのと同様、マウントゴックスの失態でビットコインの仕組みや信頼性自体が揺らぐわけではない。(p.34)
1-5.
マウントゴックスは、今回の騒ぎが起きる半年前にもビットコインが引き出せなくなるトラブルを起こしていた。その後も細かいシステム上の不具合を繰り返していたが、今年2月の大規模なサーバー攻撃によりシステムがダウン。ビットコインを引き出すことができなくなった。その後も状況が改善しないままサイトへのアクセスができ[なく]なり、先週末ついに民事再生手続きを申請し、経営破綻に追い込まれた、というのが実情だ。(p.34)
3 manolo 2014-03-23 13:30:55 [PC]
1-6. 【マウントゴックスが例外】
先月上旬にマウントゴックスと似たサイバー攻撃を受けたほかのビットコイン取引所は、すべて操業停止後数日でサービスを再開した。ビットコインの取引自体もサイバー攻撃前と変わらず行われている。マウントゴックスだけが、唯一の例外なのだ。マウントゴックス騒動を受け、別の取引所を運営するカリフォルニア州のコインベース社など6社が共同声明を発表。あくまでもマウントゴックスの問題であり、ビットコインの価値やデジタル通貨業界には影響しないと強調したのも無理はない。マウントゴックスだけでなく、違法薬物などの取引の温床といわれるサイト「シルクロード」も先月、ハッカーに狙われた。ターゲットになったのは、多数の取引を特定のサーバーに集中させる取引所としてのシステムが脆弱であるが故。システムの隙を突いた攻撃を受ければ、被害が出るのは避けられない。(pp.34-35)
1-7.
ビットコインそのものの仕組みは、技術的・構造的にかなり信頼性は高く、こういった騒動の後も揺らいではいない。それは受け手の端末コンピューターと送り手のサーバーが情報をやり取りするのではなく、多数の端末同士が結びつく分散型システム「P2P(ピア・トゥ・ピア)」が取り入れられているからだ。「ビットコインは(中略)その信頼性を命がけで守る中央銀行のような番人がいない」。国際経済に詳しい同志社大学大学院の浜矩子教授はマウントゴックス騒ぎの後、朝日新聞にこうコメントした。発行主体を持たないビットコインに対し、国や中央銀行の裏付けがないから信用できない、という声は根強い。(p.35)
1-8.
だが、ビットコインは分散型ネットワーク上で展開されるプログラムであり、どこか数か所攻撃されても流通不可能になることはない。マウントゴックスが管理しているビットコインがすべて行方不明になっても、ビットコイン全体から見れば、ごく一部にすぎないので、システムにはほとんど影響が出ない。中央銀行がないから信頼性に欠けるというのは、ビットコインのシステムを理解していないからこそできる発言だ。(p.35)
4 manolo 2014-03-23 13:32:38 [PC]
1-9.
この問題を伝えるメディアも、ビットコインの仕組みを十分理解していない。例えば、大半のメディアがビットコインを「仮想通貨」と表現する点。「バーチャルカレンシー(Virtual currency)」という英語を直訳して使っているようだが、通貨はそもそも実在する富を交換・流通しやすくするため仮想化したもの。1万円札も100ドル紙幣も、そもそも紙切れにすぎないことを考えればよくわかる。つまり「仮想通貨」という言葉を使うと、もともと仮想的な存在をさらに仮想化するという意味不明な説明をしていることになるのだ(本誌では「仮想通貨」という表現は避けている)。(p.35)
1-10.
便宜上ビットコインと呼ばれているだけで、「コイン」という実態を伴うわけではない、という事実を見落としやすい。単位はビットコイン(BTC)だが、実際に物理的なコインをやりとりするわけではないため、「枚」と表現するのは間違っている(写真のようにロゴを入れた擬似的なコインは存在するが、あくまでイメージに過ぎない)。(p.35)
1-11. 【通貨として成熟する過程】
たしかにビットコインの仕組みは分かりにくい。その周囲にはどこが怪しげな人間が群がっていることも事実だ。だがそれは、既存の通過と同じことだ。中南米の麻薬取引にドルが使われることを考えればいい。不慮の事故や大災害で銀行の帳簿やデータが完全に消失すれば、おそらく誰も保障を受けることはできないだろう。マウントゴックスの破綻もこれと変わりない。公的機関の裏付けがないことは事実だが、その代わりビットコインには国境や為替に縛られない自由さというメリットがある。(p.35)
1-12.
1つの取引所が事実上消滅したからといって、ビットコインそのものの存在を否定することにはならない。もっともメディアや有識者(とされる人々)の喧騒をよそに、投資する側は冷静だ。マウントゴックス以外のビットコイン取引所では、取引価格が騒動前の水準に戻っている。通貨としてみれば、ビットコインはまだよちよち歩きを始めたばかりの赤ちゃんのような段階でしかない。投資家の保護や法的な枠組みの設定を求める声も出始めた。世界を驚かせた今回のマウントゴックスが騒動は、この新通貨がさらに成熟するための成長期に過ぎない、と勧化が得るのが妥当だろう。(p.35)
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