マリ紛争
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1 manolo 2013-01-31 14:16:37 [PC]

出典: ニューズウィーク日本版、4/4/2012、p.15

1-1. 西アフリカのマリでクーデターが発生した。兵士の反乱のきっかけは、首都バマコ近郊の軍事キャンプを訪れた国防相への抗議行動だった。独立を求めるトゥアレグ人の反政府武装勢力、アザワド解放国民運動(MNLA)と戦う兵士らは、軍の装備が不十分だと不満を抱いていた。MNLAは、昨年のリビア内戦の際にカダフィ政権側で戦った民兵が持ち帰った武器を保有しているとされ、この数カ月間の軍との交戦で相次いで勝利を収めていた。

1-2. マリ北部などの砂漠地帯を拠点とする過激派「イスラム・マグレイブ諸国のアルカイダ組織」と戦うアメリカにとって、マリの戦略的意義は大きい。アフリカの紛争地域にあって過去20年間、比較的安定した民主的国家であり続けたマリで起きた今回の事件は、テロ組織や干ばつによる食糧不足に悩む地域全体にとっても大きな懸念だ。

2 manolo 2013-01-31 14:45:35 [PC]

出典: ニューズウィーク日本版、4/18/2012、p.15

2-1. どさくさ紛れの独立宣言は浅はかだったのかもしれない。西アフリカのマリで、軍部の反乱組織がクーデターを起こして政権を奪ったのは先月22日のこと。北部の反体制派に対する対策が甘いとしてトゥーレ大統領は職を追われた。

2-2. このクーデターの混乱に乗じたのが、イスラム系武装勢力の支援によって北部で独立運動を続けてきたトゥアレグ人だ。トゥアレグ人はの主要武装組織アザワド解放国民運動(MNLA)は北部の主要都市の大半を制圧。公式サイトで「4月6日よりアザワド国として独立を宣言する」と一方的に表明した。MNLAの中核を担っているのはシャリア(イスラム法)を敷きたいイスラム主義者たちとみられている。

2-3. しかし彼らの思惑通りにはいかないだろう。マリの政権を奪った反乱部隊は先週、西アフリカ15カ国からなる西アフリカ諸国経済共同体と協議の末、実権を文民政府へ委譲することで合意した。国会議長が暫定大統領に就任し、後に選挙が実施される。

2-4. マリの国家分裂を避けるため、国際社会が介入した形だ。MNLAによる突発的な独立宣言は空虚に響いて終わりそうだ。

3 manolo 2013-01-31 15:16:48 [PC]

出典: 朝日、1/16/2013、pp.10

3-1. 西アフリカのマリに対する旧宗主国フランスの軍事介入は、周辺国軍も巻き込んだ終わりも見えない対テロ戦の要素を帯びてきた。フランス軍は、マリ北部を実効支配するイスラム武装勢力南下を阻もうと、13日からは北部の拠点都市への空爆を始めた。

3-2. AFP通信などによると、仏軍は軍用ヘリや戦闘機を投入し、イスラム武装勢力「アンサル・ディーン」などが支配する主要都市のガオやキダルを空爆した。仏軍が空爆による介入を始めたのは、アンサル・ディーンが10日、中部の交通の要所コンナを制圧して南下を始めたことがきっかけ。武装勢力側の死者は数百人に上るとされるが、14日には政府軍が支配する中部の町ディアバルへ侵攻するなど抵抗を強め、戦闘が激化している。

3-3. 周辺国もフランスに続き、自前では戦う力が乏しいマリ政府軍の援護に急いでいる。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、支援部隊を派遣することを決め、すでに一部がマリ入りした。武装勢力を刺激することを恐れて介入に消極的だった隣国アルジェリアも、仏軍の領空通過を認めた。

3-4. ただ、先月国連安全保障理事会が派兵を承認したナイジェリアやセネガルなどの周辺国軍の部隊3300人による本格介入は、訓練の必要性や資金の問題から9月以降になる。オランド仏大統領は介入を「テロとの戦いだ」と強調する。武装勢力側は「フランスはイスラムを攻撃した。フランスの心臓部を狙う」と報復を誓っている。」

4 manolo 2013-01-31 15:17:24 [PC]

3-5. 混乱の発端は、一昨年のリビアのカダフィ政権崩壊にさかのぼる。カダフィ政権側に立って戦ったマリの反政府勢力「アザワド解放国民運動(MNLA)のメンバーが高性能の武器を大量に持ち帰ったことから、マリ政府軍を圧倒。政府軍内ではさらに、昨年3月に軍部クーデターが発生。これに乗じて、MNLAはわずか10日余りで北部全域を制圧し、独立を宣言した。

3-6. 無政府化した北部に、アンサル・ディ−ンや国際テロ組織「イスラム・マグレイブ諸国のアルカイダ(AQIM)」など複数のイスラム武装組織が相次いで入り込んだ。テロリストの活動も活発化。世俗の国家建設を求めるMNLAは武装勢力側に駆逐され、北部地域では厳格なイスラム法が適用されるようになっている。

3-7. マリには6千人、周辺国を含めると3万人のフランス系住民がいるほか、隣国ニジェールでは仏原子力大手のアレバがウランの採掘に携わっている。西アフリカ一帯の治安の悪化はフランスの国益への脅威になってきた。仏政府は介入について「必要なだけずっと続ける」とし、部隊の増強を見込む。だが、AQIMは、世界で最も重武装のアルカイダ系組織とも言われ、フランスを敵視している。戦闘が泥沼化し、「第2のアフガニスタン」になることも懸念される。

5 manolo 2013-01-31 15:39:27 [PC]

出典: 朝日、1/31/2013、p.10

4-1. マリに介入したフランス軍は、イスラム武装勢力が支配していた主要都市を相次いで制圧するなど攻勢を強めている。武装勢力はジハード(聖戦)を叫ぶが、もともとは民族対立が根底にある反政府闘争だった。関係者らの話から、国際テロ組織アルカイダ系組織がつけ入った実態が浮かび上がってきた。

4-2. マリ北部ガオ、ニジェール川の川辺で男がくつろいでいた。居合わせた地元記者ババ・アメッドさん(24)は、男を囲むアラブ系の護衛に「何者だ」と詰問された。ババさんは「この土地のものです」と丁寧に答えた。身重180センチほどの男は温和な表情を見せ、握手を求めてきた。昨年の6月のことだ。

4-3. 男はアルジェリア人の人質事件を首謀したとされる武装組織「覆面旅団」のモフタル・ベルモフタル司令官。当時は「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の幹部だ。ベルベル人とも呼ばれるアマジグ系とされる。ババさんもアマジグ系のトゥアレグ族出身。ババさんの周囲は「トゥアレグでなければただでは済まなかっただろう」という。ババさんは「ベルモフタルは敵対しないと思ったものには丁寧に接していた」と話す。

4-4. ベルモフタル氏は肌の色がやや薄くアラブ系に近い顔立ちだ。マリ国内で少数派のトゥアレグ族は「白人」と呼ばれ、黒人各民族とは、互いに差別感情が根強い。

6 manolo 2013-01-31 15:57:46 [PC]

4-5. この2カ月前、トゥアレグ族の反政府勢力、アザワド解放国民運動(MNLA)が北部を制圧し、独立を宣言していた。MNLAは当初、トゥアレグ族の「民族自決」の行動だった。政府の観光大臣までがMNLAに合流し、政治色も帯びていた。軍事介入した仏軍は「テロとの戦い」を強調する。民族運動はなぜイスラムの聖戦と化したのか。

4-6. トゥアレグ族は1990年代にも複数の組織が武装蜂起したが戦闘は拡大せず、政府と和平を結んだ。当時、反政府組織にいた運転手アリさん(43)は「組織は黒人の家だけを略奪した。民族主義、長年の確執が根底にあったのは今回と同じだ。だが今、ある海田が別の次元のものにした」と話す。

4-7. MNLAはイスラム武装勢力アンサル・ディーンの力を借り、マリ政府と戦った。アンサル・ディーンもトゥアレグ族の組織だった。指導者イヤド・アガリ氏も90年代に民族主義を掲げていた。当時和平交渉に携わったマリ国会のアッサリド副議長は「宗教色は全くなかった」と振り返る。だがアガリ氏は約10年前にパキスタンに渡ってアフガニスタンの現状に触れ、聖戦思想に染まったとされる。

4-8. 長年、武装勢力の取材を続ける「AQMII」(AQIMの仏訳)の著者セルジュ・ダニエル氏(48)によると、03年に旅行者32人が誘拐される事件が起きた。ベルモフタル氏の関与が疑われている。「マリ政府が北部の事情に詳しいアガリ氏に(解放交渉の)仲介を依頼したことでイスラム武装勢力と急接近した」と指摘する。

7 manolo 2013-01-31 16:08:24 [PC]

4-9. 独立を宣言したMNLAは、世俗の政権樹立を目指した。だが、アンサル・ディーンを媒介になだれ込んできたAQIMなどには受け入れがたく、駆逐されてしまった。アッサリード副議長は「アガリ氏とMNLAはアルカイダに利用されてしまった。」という。

4-10. ベルモフタル氏はAQIM内で自身の処遇に不満を抱き、昨年末に分派組織を立ち上げたとされる。ダニエル氏は、「(ベルモフタル氏は)息子をオサマと名付けるほどビンラディンを尊敬している。AQIMを出た後、アルカイダ本体から尊敬され、称賛を受けることが一番の望みだった」という。「そのために仏軍介入を口実に人質を取った。一部を殺害し、身代金を取るのが目的だった」と指摘した。

4-11. アラブ諸国からに加え、多くのトゥアレグ族の若者が戦闘に参加している。マリ中部セバレのイスラム教指導者バセドー師(70)は「武装勢力に参加する者は本当のイスラム教徒ではなく、信心もない。貧しいものは容易に説得され、金でかり出される。イスラムの名が金のために利用された。市民を苦しめることは聖戦ではない」と語った。

8 manolo 2013-02-07 23:55:04 [PC]

出典: ニューズウィーク日本版、1/29/2013、p.64

5-1. マリへのフランスの軍事介入は少なくとも5つの理由から正当なものと断定できる。

5-2. 第1に、軍事介入はこの地域における反啓蒙主義とのテロの広がりを阻止する意思表示であること。イスラム武装組織アンサル・ディーンを中心とするマリの反政府軍が組織的で訓練された強力かつ凶悪な軍隊であることは、フランス軍ヘリが銃撃されるなど、彼らの反撃を見れば明らかだ。

5-3. 第2に、マリ北部を支配下に置く反政府軍は南部にある首都バマコの制圧を目指しているが、その裏にはアンサル・ディーンの真の狙いがあり、軍事介入はそれをつぶすためのものだ。真の狙いとは、ナイジェリアのイスラム武装組織ボコ・ハラムと手を組んで、モーリタニア、ニジェールのテロ拠点(その標的は欧米だ)を強化することにほかならない。

5-4. 第3に、今回の介入はリビアへの介入と同様、その国の国民を守るための行動だ。豊かな国が内政不干渉を口実に、国境の向こうで悲惨な目に遭っている人々を見捨てる――そんな欺瞞を許せない人々はフランスの介入に拍手を送るだろう。

5-5. 第4に、この介入は「正戦」という古典的概念を再確認するものである。フランソワ・オランド仏大統領は最後の手段として、国連安全保障理事会の決議にのっとり、介入を決断した。作戦には「論理的に妥当な」成功の可能性があり、「あらゆる可能性を考慮して」介入による犠牲は防げる犠牲よりは少ないと判断したのだ。これはまさに「正戦」の条件を満たす決断と言えよう。

5-6. 第5に、今回の介入は、民主主義と偏狭な原理主義との戦いの前線で、フランスがその役割を果敢に果たすという宣言でもある。オランドがサルコジ前大統領のタカ派路線を引き継いだと批判する人たちもいるが、それは問題ではない。フランスは新保守主義と不干渉主義という2つの大罪を克服する新たな戦略的指針を創造しつつあると、アメリカは理解を示すはずだ。

9 manolo 2013-02-08 00:20:06 [PC]

5-7. 5つの理由があるとはいえ、現段階では作戦の完了には程遠い状況だ。作戦開始直後、アンサル・ディーンの最高指導者オマル・ウルド・ハマハはフランスが「地獄の門を開けた」と怒りをぶちまけた。アルカイダ系テロ組織がよく使う不吉な脅し文句だが、民間人を危険にさらすという宣言であり、決して侮れない。

5-8. アンサル・ディーンはフランス人の人質をマリ国内で盾に取っていたが、オランドは介入に踏み切った。掛けていた保険が無効になったら、人はどんな行動を取るか。やけになるか、腹いせをするか、取れるものを取ろうとするか。彼らが走る残虐な行為は想像するだに恐ろしい。

5-9. 地上戦は砂漠で戦闘を展開することになる。砂漠ではゲリラ戦は難しいと言われるがそんなことはない。砂丘の砂に兵士が身を隠す、偵察衛星の目をくらまして突然トラックの列が現れるなど、武装組織のゲリラ攻撃にフランス軍の精鋭部隊が手を焼く可能性が大いにある。

5-10. 軍事作戦の展開と併せて、あらゆる手段を行使して政治的解決を探る必要がある。反政府軍に参加している遊牧民のトゥアレグとどう接触するか。彼らの独立要求にどう対応するか。寄せ集め所帯の反政府軍の内部に亀裂はないか。マリの暫定政権の内の誰に民主的な国家再建の任を託せるのか。問題は多くあるが、答えはほとんどない。こうした問題を扱うには、強靭な意志とともに繊細な配慮が必要だ。


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