イスラム国(ISIS)
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1 manolo 2014-10-18 21:38:04 [画像] [PC]

出典:『エコノミスト』、9/30/2014、「イスラム国を知っておく スンニ派不満分子を取り込み 石油と恐怖で支配地域拡大」、池田明史、pp.46-48

1-1.
 オバマ大統領は9月10日、国民向けのテレビ演説を行い、イラク・シリア北部国境地帯に勢力を拡大する「イスラム国」に対して、本格的な軍事圧力の強化に踏み切る決意を表明した。実際に15日からはこれまでの北部に加えて首都バグダッド南西に展開するイスラム国勢力にも空爆を拡大した。これに呼応する形で、欧米・中東を中心とした約30ヵ国・機関の外相らが15日パリに参集し、脅威を国際社会全体で共有しつつ、その撃滅に向けて連携することを申し合わせている。(p.46)

2 manolo 2014-10-18 21:39:35 [PC]

1-2.
 国際社会の憤激は、8月末以降ほぼ隔週で米英の人質が次々に斬首される様子を、ネット上でイスラム国が「実況」公開するに及んで頂点に達し、ナチス以上の脅威とする見方さえある。そもそもイスラム国とは、アルカイダの唱えるカリフ(スンニ派イスラム最高指導者)復興の主張に共鳴し、2003年のイラク戦争によってサダム・フセイン体制打倒後のイラクに進駐したアメリカ軍に対する攘夷主義的な武装抵抗運動から出発している。(p.46)

1-3. 【イラクの3分の1を支配】
 「イラク・イスラム国」建設を掲げた彼らは、国外のアルカイダ系武装勢力を呼び入れ、また国内ではサダム・フセイン体制下で享受していた既得権を剥奪させて不満を募らせていたスンニ派諸部族と結んで、06年ごろは、暫定政権を脅かすほどの勢力を誇示した。しかし、国外からの活動分子のふるまいに対する反発や、イラク暫定政府がスンニ派の懐柔・取り込みといった融和政策に転じたために行き場をなくし、中部ファルージャや北部ティクリットといった拠点からの撤退を余儀なくされて、北西部のシリアとの国境近辺に押し込められていたのである。(pp.46-47)

1-4.
 その彼らがここ数年で勢いを盛り返し、いまやイラク中部から北西部にかけて全領土の3分の1に及ぶ地域を影響下に置き、さらにシリア領内にも進出して北東部を中心に支配地を広げている。要因は大きく二つ挙げられるだろう。(p.47)

1-5.
 第一は、暫定政権を引き継いで新生イラクの最初の正式政権となったヌーリ・マリキ内閣が、あからさまなシーア派優遇路線に終始してスンニ派の疎外意識を格段に強化してしまったことである。スンニ派のアラブ系住民は既得権を失ったのみならず、構造的な不利益を強いられるに至った。とりわけ、警察や国軍といった暴力装置から「サダム・フセイン時代の残滓(ざんし)」として放逐された幹部や将校たちの怨念は強く、彼らの多くをイスラム国の側に奔(はし)らせる結果を招いた。(p.47)

3 manolo 2014-10-18 21:41:46 [PC]

1-6.
 第二の要因は、シリア内線である。11年の内戦勃発時にはバシャール・アサド政権と自由シリア軍など反アサド勢力と対立という単純な構図であったが、その後反政府側の分断・分裂によって複雑怪奇な状況が生まれた。イスラム国は、そこに付け込む格好で13年以降北部シリアに勢力を伸ばし、トルコの国境一帯の支配をクルド人勢力や他の反政府勢力と争いながら時歩を固めていった。イスラム教スンニ派の極端な解釈に立って、異教徒・外国人の排撃を呼号して武力闘争を展開している点では、現今のイスラム国も、母体となったアルカイダや西アフリカのボコ・ハラム、ソマリアのアル・シャバブ、あるいは等しくシリア内線を戦うヌスラ戦線など、他のスンニ派過激勢力も同じである。(p.47)

1-6.
 イランの革命防衛隊やレバノンのヒズボラなど、シーア派系の活動が目立つために「スンニ派は穏健」とのイメージがあるのだとすれば、それは誤解である。エジプトのムスリム同胞団やパレスチナのハマスはスンニ派閥の武力抵抗を展開中であるし、何よりもスンニ派最大の金主であるサウジアラビアは、「国体」そのものがワッハーブ派と呼ばれる原理主義イデオロギーに根差している。残虐性の有無、急進・穏健の差は宗派イデオロギーの相違に由来するものではない。(p.47)

1-7. 【日量4万バレルを密売】
 6月末に自らカリフを名乗ってイスラム国の樹立を宣言したアブ・バクル・アル・バグダディはその支配を東地中海(レバント地方)一帯に拡大して全世界のスンニ派ムスリム人口を指導し、異教徒・異宗派に聖戦を挑むとの構想を明らかにした。そうした大風呂敷を広げる一方で、イラクではモスルまで進撃し、シリアでは東部デリゾールまでを制圧し、いずれも相当規模の油田と製油施設を支配下に置いた。他の諸運動が「点と線を結ぶ」遊撃的な戦闘に終始するばかりであるのに、イスラム国は明らかに「面の制圧」を目指した軍事作戦を展開している。(p.47)

4 manolo 2014-10-18 21:47:20 [PC]

1-8.
 イスラム再興を掲げて戦闘イデオロギーを純化させ、統治よりも戦闘(つまりテロ攻撃)を重視している他の過激派と異なり、イスラム国はその呼号するイデオロギーの激しさとは裏腹に、「カリフの下の統治」を優先させているかに見える。支配地域においては、ムスリム男性を徴兵し、イスラム国に従う異教徒・異宗派からは人頭税(ジズヤ)を取り立て、反抗する勢力を組織的に殲滅(せんめつ)するという形で、彼らなりの実効支配を展開している。(p.47)

1-9.
 それを可能にしているのは、日量で3万〜4万バレル程度と推計される石油密売収入と、イラク、シリア両国政府がイスラム国の存在を否認しているがゆえに、イスラム国の版図に含まれる自治体に対してなお公務員・教員などの給与を支払っているという逆説による。ことさらに残虐さを見せ付けるのは、イデオロギー上の自己主張による以上に、イラクのサダム・フセイン体制やシリアのアサド政権が残した「恐怖による支配」の成功事例に倣(なら)うという側面が強いと思われる。(p.47)

1-10.
 カリフとなった自分の下にイスラム世界を統合するというバグダディの野望は、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの構想を引き継いでいる。アルカイダは9・11などの劇的なテロ事件を引き起すことで世界中に反欧米の戦闘イデオロギーをばらまくことに、一定の成功を収めた。彼らの成功はアフガニスタンの現地に根を下ろしたイスラム勢力タリバンと結び、その庇護下に活動したことによる。欧米主体の「有志連合」によるアフガニスタンへの攻撃で、よそ者であるアルカイダは事実上アフガニスタンからたたき出されたが、地場社会に伝統的基盤を築いていたタリバンは生き残った。(pp.47-48)

1-11.
 同様のことが、イスラム国についても言えるのではないか。バグダディという名が示すとおり、カリフ本人の出自はバグダッド近隣であり、イスラム国が土着的社会基盤を持つ「本領」はイラクのスンニ派居住圏である。その意味では、その拡大はほぼ限界線に到達している。(p.48)

5 manolo 2014-10-18 21:47:56 [PC]

1-12.
 イラク北方や中南部以南は、ペシュメルガ(クルド民兵)やバドル軍団・マハディ軍といったシーア派民兵の本拠地であり、そもそも連携すべきスンニ派友邦勢力に乏しい。スンニ派地域での作戦には戦意が見られなかったこれらの民兵諸派も、彼らの本拠地の侵犯に対しては政府軍と並んで死守の構えを示している。シリアにおいても、イスラム国の統治を進んで受け入れているのは、北東部のイラクと国境沿いに点在するスンニ地域に限られている。(p.48)

1-13.
 アレッポやデリゾールの方面へのイスラム国の進出を可能にしているのは、アサド政権に対抗するべき反政府諸勢力が相互に敵対し、誰が誰と戦っているのかさえ不明な状況が出来しているからである。(p.48)

1-14
 寸断されたシリア北部から中北部の間隙を埋める形で進撃したイスラム国の主力は、外国人義勇兵の部隊と見られる。イラク人将兵主体のイラクにおけるイスラム国軍事力とは対照的に、シリアではチェチェン人その他の外国人司令官が混成部隊を率いる例が珍しくない。アフガニスタンとの類推で考えれば、パキスタンとの国境に接する険しい山岳地帯にはタリバンと同質なパシュトゥン系部族が勢力を張っており、パキスタン中央政府と対峙している。その意味ではイスラム国もイラクを本拠としてシリアとの国境を超えてやや膨らんだタリバンのような存在に映る。(p.48)

1-15. 【3000人の外国人兵士】
 1万2000人に上るといわれるイスラム国外国人兵士の出自は、多くがヨルダンやチュニジアなどスンニ派アラブ圏だが、欧米からもムスリム系移民の若年層が「カリフの下の解放闘争」の戦列に加わりつつある。ある推計によれば、その総数は3000人を超えるとされ、国籍はフランス700人、イギリス400人、ドイツ250人、アメリカとカナダがそれぞれ100人などとなっている。これとは別に北欧出身者が目立つとの報告もある。イスラム国が積極的に展開するフェイスブックやツイッターなどSNSを通じた英語による募兵キャンペーンの成果であろうが、これに応じる若者たちの動機は文字通り「神の召命」と捉えるものから現実社会への復讐や逃亡、あるいは単純な冒険意欲まで、実にさまざまである。(p.48)

6 manolo 2014-10-19 17:38:29 [PC]

1-16.
 かつて「国際階級闘争」を呼号して国内外でテロやハイジャックを繰り広げたイタリアの「赤い旅団」やバーダーマインホフ(ドイツ赤軍)、あるいは日本赤軍などの現象のイスラム版を想起すれば、なぜ「怒れる」あるいは「孤独な」若者たちがイスラム国に吸引されるのかわかりやすいかもしれない。(p.48)

1-17.
 欧米各国の政府は、英米人人質の「処刑」などの残虐行為が、自国出身のこうした義勇兵の手による犯罪だとの事実を突きつけられて戦慄を隠せない。その彼らが再び自国に帰還あるいは潜入して、ロンドンやパリ、あるいはワシントンで大規模テロを日子起こす可能性は捨てきれないからである。(p.48)

1-18.
 いずれにせよ現在、イスラム国はイラク・シリアのみならず、国際社会全体にとって「いま、そこにある脅威」としてその動向に深刻な懸念が向けられている。最大の問題は、しかし、国際社会の側にイスラム国を生んだ中東アラブ・イスラム世界に対する中長期的な戦略が欠けているところにあろう。オバマ演説では、イスラム国支配地域(とりわけシリア)への空爆の拡大とイラク政府軍や自由シリア軍など現地連携勢力への武器兵站供給・訓練といった間接支援、さらには友邦諸国との情報共有といった具体的な施策を示した。(p.48)

1-19.
 「敵の敵は味方」という論理によって、つい最近まで反目していた諸勢力がイスラム国を共通の撲滅対象として暗黙裏の蓮連携を見せ始めているのも事実である。しかしそれはどこまでも、対症療法的な作戦方針であり戦術的な達成目標にすぎない。(p.48)

1-20.
 「アラブの春」でいったん膨らんだ期待がその後の内乱や混乱で急速にしぼみ、閉そく感が蔓延する中東各地の状況をどのように収拾するのか。「自由で寛容なイスラム世界の実現を目指す」といいながら、「いかにして」との疑問に答えぬままである。この点について戦略的な展望を示せない限り、イスラム国が国際社会の喉元に突きつけているやいばを外すことはできないであろう。(p.48)

7 manolo 2015-01-24 08:43:25 [PC]

出典:『朝日新聞』1/22/2015、(「「イスラム国」3つの疑問」)p.2

 日本人2人を人質に取り、2億ドル(約236億円)もの身代金を日本政府に要求した過激派組織「イスラム国」。シリアとイラクで勢力を広げ、「異端」とみなす少数派の異教徒を殺害するなど残虐さが際立つ。いったいどんな組織なのか。

2-1. 【Q1 どんな組織なのか】
戦闘員1.5万人、国境無効化狙う

 「イスラム国」は反欧米を掲げる組織だ。昨年6月、イラクで2番目に大きな都市モスルをいきなり占領し、1カ月ほどで周辺の都市を次々と陥落させた。そのときは、「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS = Islamic State of Iraq and Syria)と名乗っていた。6月29日にはイスラム教の預言者ムハンマドの「代理人」を意味する「カリフ」を頂点とする「国家」をつくったと一方的に宣言。最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者をカリフに選んだ。内戦が続く隣国シリアでも勢力を広げ、いまはイラクとシリア両国土の約3分の1を支配したとされる。

2-2.
 狙いの一つは、1992年のオスマン帝国の崩壊でなくなったカリフ制を再興し、聖典コーランやムハンマドの教えを厳格に守ること。ムハンマドが生きた7世紀に回帰したかのような社会の実現だ。サウジアラビアやイランもイスラムの教えを厳守する国だが、「イスラム国」は少数派ヤジディ教徒の女性を奴隷にしたり、同教徒の男性を殺したりするなど極端なことをする点で大きく異なる。

2-3.
 もう一つの狙いは、中東に引かれた国境線をなくすことだ。いまの国境線は第1次世界大戦中の1916年英仏ロシアがオスマン帝国の領土を切り分けるために秘密裏に結んだ「サイクス・ピコ協定」に基づいている。「イスラム帝国」はイラク・シリア国境をまたぐ地域を支配することで、この協定を無効にするとした。将来的には中東の枠を越え、中部以北のアフリカ大陸、中央アジア、イベリア半島にも版図を広げようとしているようだ。

2-4.
 バグダディ容疑者については謎が多い。71年生まれのイラク人で、大学でイスラム方角を学んだといわれる。もともとはイラクのアルカイダ系組織にも加わっていた。昨年7月、バグダディ容疑者とされる男の演説映像がインターネットに流れたが、その後の消息は不明だ。米軍の空爆でけがをしたとの報道もあったが、真偽は分からない。

8 manolo 2015-01-24 08:45:07 [PC]

2-5.
 「イスラム国」に加わる戦闘員の多くは、中東や北アフリカ、欧州などから集まっている。米政府は80ヵ国以上から1万5千人が加わっているとみる。彼らには「給料」が支払われ、住宅も提供されているようだ。資金源の一つが外国人ジャーナリストらを拘束して手に入れる身代金だ。昨年11月、国連安全保障理事会に提出された報告書は、「イスラム国」がこの1年間で得た身代金を総額3500万〜4500万ドル(約41億〜53億円)と推計。原油密売や支援者からの寄付などとならび、大きな収入源である実態を指摘した。

2-6. 【Q2 支配地域での人々の暮らしは】
宗教警察が監視、「県庁」も

 支配地域では国家のような統治機構を築いているとされる。なかでも広報部門に力を入れる。全世界に「イスラム国」を宣伝する意図がうかがわれる。20日に公開された、日本人人質の身代金を要求する映像はメディア部門が制作した。これまで「イスラム国」に殺害された英米人5人の映像もメディア部門が作ったとされ、高画質でニュース映像や効果音を巧みに用いている。昨年7月以降は英語のオンライン機関紙を発行するなど、多言語での発信に力を入れ、世界での戦闘員勧誘に利用している。

2-7.
 米CNNなどによると、重要事項を協議する「諮問評議会」や内閣に相当する組織を設置。支配する都市には「県庁」にあたる行政機関や県知事を置き、徴税や治安、司法、軍事などを担っている。「ヒスパ」と呼ばれる宗教警察もあり、市内を巡回して市民を監視しているという。水道や電気などインフラ管理を担う技術者は、もともと公務員だった人たちが引き続き「イスラム国」に雇用されている。学校もあるが、アラビア語とイスラム教以外はほとんど教えられていないという。

2-8.
 「公金に手をつけるものはイスラム法廷で裁かれる。個人の財産を盗むものは手を切断される。」昨年6月、イラクのモスクを占領した「イスラム国」はこんな「憲章」を発表した。彼らなりに宗教を厳密に解釈しているようで、飲酒だけでなく喫煙も禁じられた。「イスラム国」が首都とするシリア北部ラッカでは、喫煙が見つかって人差し指と中指を折られた人もいたという。女性については「貞淑でなければならず、髪を覆い、長衣を着て、外出が必要な時以外は家にとどまるべきだ」として、社会進出を抑える方針が示された。

9 manolo 2015-01-24 08:47:28 [PC]

2-9. 【Q3 他の過激派との関係は】
アルカイダ系は拒否反応

 今月、フランスで起きた連続テロ事件では、スーパーマーケットに立てこもったアムディ・クリバリ容疑者が地元テレビに対し、「イスラム国」に所属していると話した。一方、仏週刊新聞「シャルリー・エブド」を襲撃したシェリフ・クアシ容疑者は、イエメンに拠点を置く「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)から資金提供を受けたと明かした。

2-10.
 「イスラム国」とAQAPは国際テロ組織アルカイダの流れをくむ点で一致するが、実は絶縁状態だ。「イスラム国」は2006年にイラク国内の過激派組織が合流。名称を変えながら活動を続けてきた。11年に始まったシリア内戦にも介入。当初はアルカイダ系組織と手を携えてアサド政権と戦った。しかし、残虐行為を繰り返す「イスラム国」にアルカイダ指導部が反発。バグダディ容疑者がカリフを名乗り、世界のイスラムに対して自らに「忠誠」を誓うよう求めたことで関係悪化が決定的となった。「イスラム国」がアルカイダに先んじてカリフ擁立を宣言した背景には、資金集めや戦闘員の勧誘をアルカイダより有利に進める意図があったとみられる。

2-11.
 「イスラム国」には、ナイジェリアの「ボコ・ハラム」など忠誠や連帯を表明する組織がある一方、AQAPなどアルカイダ系組織は拒絶反応を示す。「イスラム国」は「国家」を自称するが、イスラム諸国を含めた国際社会はテロ組織とみなす。中東でもサウジアラビアやカタールなど、米軍とともに「イスラム国」への空爆に加わる国がある。

2-12.
中東・アフリカなどの主なイスラム過激派

-パキスタン・タリバーン運動(TTP)
14年、パキスタンの学校で児童ら約150人を殺害。12年にはマララ・ユスフザイさん(14年、ノーベル平和賞受賞)を襲撃

-シャバブ
14年、ケニアでバスの乗客28人を殺害し、犯行声明

-アラビア半島のアルカイダ(AQAP)
今月、仏週刊新聞襲撃事件で犯行声明。09年には米旅客機爆破未遂事件で犯行声明

-ボコ・ハラム
今月、少女を使った「自爆テロ」を繰り返す。14年には200人以上の女子生徒を誘拐。

-イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQIM)
分派した武装勢力が13年、アルジェリアの天然ガス生産施設を襲い、日本のプラント建設大手日揮の社員ら約40人が死亡。

10 manolo 2015-02-15 23:52:05 [PC]

出典:『ニューズウィ−ク日本版』、1/13/2015、「ISIS、テロと狂気の集金システム」、pp.40-46

中東
金融制裁や禁輸措置をものともしない
史上最も資金力豊富なテロ組織
取材から見えてきた強靭な資金調達の実態

3-1.
 大掛かりな戦争を行い、莫大な人口を統治するには、カネが掛かる。短期間で勢力を拡大させたイスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)も、巨額の資金を得ているはずだ。「今ISISの支配地域で暮らしている人は800万人。これだけの人を支えるには、途方もない規模の資金が必要だ。」と、イラク・エネルギー研究所(バグダッド)の所長で、ブルッキングズ・ドーハセンターの客員研究員も務めるルアイ・アル・ハティーブは言う。「しかもISISは何万人もの戦闘員を擁して、何カ月も戦争を続けている。新しい戦闘員も増え続けている……それなのに、資金が底を突く気配がない」(p.40)

3-2.
 金融制裁と禁輸措置で外の世界から切り離され、世界有数の豊かな国々による空爆を日々受けているなかで、ISISはどうやって資金を調達しているのか。イラク、クルド人勢力、ヨーロッパ、シリア、アメリカの政府機関や情報機関の関係者に対する本誌の取材から見えてきたのは、ISISの大規模で、強靭で、効率的な資金調達システムだ。米政府でISIS対策の中心になっているデービッド・コーエン財務次官(テロ・金融犯罪担当)は先頃の講演でこう語った。「(ISISは)前例のないペースで資金を集めてきた。収入源の構成も、ほかの多くのテロ組織とは異なる」。コーエンによれば、ISISは「国境を越えて金を動かす」よりも「地元の犯罪活動とテロ活動により大方の資金を得ている」。(p.40)

3-3.
 ISISは中東各地の仲介業者を通じて現金を移動させたり、古くからの密輸ルートを使って現金や物資を運んだりしている。そのため、金融機関に情報を提供させて資金を断ち、テロ組織を追い詰めるというこれまでの米政府の手法が通用しにくい。中東地域には、何世代も続いてきた密輸ルートが多数存在する。昔から、国境警備員たちはいくらかの金と引き換えに、現金や原油、その他の物資が検問所を通過するのをお目こぼししてきた。フセイン政権時代にイラクの原油をクウェート、イラン、トルコに密輸していた業者の多くは今、同じルートを使ってISIS支配地域の原油を外の世界に運び出している。(pp.40-42)

11 manolo 2015-02-15 23:54:23 [PC]

3-4.
 ISISの集金マシンは本質的に、支配地域に暮らす人々の恐怖(と金銭欲)によって動いている。コーエンの言葉を借りれば、ISISはアメリカがこれまでに立ち向かった中で「最も資金力豊富なテロ組織だ」。その最大の資金源は、接収した石油資源。そのほかにも、私的な寄付、支配地域からの徴税、銀行預金や、私有財産の没収、誘拐の身代金、歴史的遺物の略奪と売却からも安定的に収入を得ている。以下では、主な資金源をそれぞれ見ていこう。(p.42)

3-5. 【湾岸諸国からの寄付】
 ISISにはこの2年間、ペルシャ湾岸の豊かな産油国であるサウジアラビア、カタール、クウェートから莫大な金が流れ込んできた。ペルシア湾岸諸国には、王族や実業家、資産家など、ISISに多額の寄付をしている人が大勢いる。最近までこの3カ国は、シリアのアサド政権と戦うISISなどのイスラム教武装勢力に公然と資金を送り込んでいた。(p.42)

3-6.
 サウジアラビア政府は13年、米政府や国際社会の厳しい批判を受けて、アルカイダ、アルヌスラ戦線、ISISなど武装勢力に対する資金的支援を法律で禁じた。昨年8月には、サウジアラビアで最高位のイスラム教指導者であるアブドルアジズ・シェイフ師がISISを「最大の敵」と非難。サウジアラビア軍は米軍主導のISIS空爆に参加している。しかし、カタールとクウェートは追随していない。湾岸諸国の民間人からISISに資金が流れ続けていると、ワシントン中近東政策研究所のロリ・プロトキン・ボガート研究員(湾岸諸国政治)は言う。「テロ組織の資金源を断つ上でいまだに際立った問題なのがカタールとクウェートの2カ国だ。」(p.42)

3-7.
 背景には、2つの大きな問題がある。第1に、カタールとクウェートの金融システムは監視が緩く、送金がなされた場合に自動的に警告サインが発せられる仕組みになっていない。第2に、カタールとクウェートの政府は、有力者によるISISへの寄付を制限することに腰が引けている。何しろクウェートには、ISISと直接結び付きのある武装勢力に資金提供を行っている国会議員の一族もいるくらいだ。「ISISへの資金提供を取り締まることは、これらの国の指導者にとって政治的に難しい問題」なのだと、ボガートは説明する。(pp.42-43)


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