おもらし表示器とおむつ交換所
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1 1読者 2024-04-05 22:06:21 [PC]
おもらし表示器とおむつ交換所_1
冴子さんの世界観を独自解釈でお借りしております。
ピピピッ、ピーピーと私の胸に付けられている『おもらし表示器』から電子音が車内に鳴り響く。
(えっ、あっおしっこ出てる?ヤバっ!)
慌てて座席からお尻を浮かせておむつがあふれる前におしっこが止る事を祈った。
祈りが通じたのか、おもらし表示器の電子音は鳴り止み、おむつの濡れ具合を示すLEDも、おむつがあふれている事を示す赤の点滅の一歩手前、吸収力の限界を示す赤の点灯でおさまっている。
(ふぅ、危なかった。)
私のおもらし判定は『排泄遅滞A-4』『おむつは常に必要』判定の『A』なので、公共の場をおもらしで汚さないように外出時は常に『認証を受けた分厚いテープタイプの紙おむつ』もしくは『公費の布おむつと当てるタイプのカバー』のどちらかを当てて、おむつをあふれせてないか管理するための『おもらしセンサー』と『おもらし表示器』を付けなければならない。
けれどようやく、『おむつの濡れ具合によって適切に交換の判断が出来る』が認められて『4』に判定を変えてもらう事が出来たおかげで、おむつ交換のタイミングや場所は『おむつ管理アプリ』を使って自分で選べるようになった。
『おもらし表示器の指示に従っておむつ交換所に行く事が出来る』が判定基準の『3』だった時は、おもらし表示器から「おむつがかなり濡れています。今すぐおむつ交換をしてもらいに行きましょう。おむつ交換所は〇〇メートル先です。」という自動音声の指示に従っておむつ交換所に行かないといけなかった。
A-4になった今は、替えの紙おむつを持っているなら大人用のおむつ替えブースを備えた『誰でもトイレ』で自分でおむつを替えても良いし、替えの紙おむつを持ち歩きたくないのであれば、自分で選んだおむつ交換所に行って替えてもらう事も出来る。
分厚くかさ張り、しかも資源保護税のせいで値段も高い紙おむつの替えを持ち歩きたくない私は、おむつ交換所を利用している。
2 1読者 2024-04-05 22:06:44 [PC]
おもらし表示器とおむつ交換所_2
『おむつ交換所』は、元々は大きくなってもおもらしが直らない子急増していった時に、『おもらしで公共の場を汚した者は以後、公共の場所に居る時は必ずおむつの着用を義務付ける』という法律が作られ、そんな子たちのおむつを替えるために『公営失禁管理所』が作られたのが始まりだが、何度か法律が改正される中で公営で運営するのは無駄が多いとされ、民間委託の『おむつ交換所』に取って代わられて今ではそれなりに数も多くなり、よほどの田舎か深夜早朝でなければどのおむつ交換所に行くかを選べるようになった。
ほんの些細な違いと思うかもしれないが自分で選べる『4』判定か、自動で選ばれた一番近いおむつ交換所に行かなけれいけない『3』判定かは大きく異なる。
過度に赤ちゃん扱いされる事が多い、おむつが取れてない子用の簡易保育園や幼稚園がやっているおむつ交換所は避けたいし、救急指定病院だった場合は急患とかち合ってしまい、長く待たされた挙句、おむつ交換が間に合わずあふれさせてしまった。なんて事もあるので可能なら避けたい。
ベビーホテルとも呼ばれる無認可の24時間保育園はいろいろ扱いが雑で、入口の脇で立てかけてあるクッションマット敷いてそこでおむつ交換を行う所も珍しくない。
どのおむつ交換所に行くか選べる今は出来れば対応が良さそうな所を選んで行きたい。
いつもなら最寄り駅に着いた時でもおむつの吸収力にはまだ余裕があって、おもらし表示器の濡れ具合表示は黄色ままなのだが、今日はまだ最寄りの駅が遠い段階でおむつの吸収力が限界に達っしてしまった。
一度でもおむつをあふれせさせてしまうと適切におむつを交換する判断能力が無いと判断されて、最低でもおもらし表示器がおむつの濡れ具合を判断しておむつ交換を指示される『A-3』、悪質だと判断されてしまえば『おむつ交換のための行動がとれないためおむつの定時交換が必要』とされ、おむつがあふれないように歩きにくいほどたくさんの布おむつを当てられて、長時間ぐっしょりと濡れたおむつに耐えなければいけない『A-2』に降格させられてしまう。
3 1読者 2024-04-05 22:07:15 [PC]
おもらし表示器とおむつ交換所_3
(次の駅で降りておむつ交換所に行かなきゃ!)
スマホを取り出して、『おむつ管理アプリ』を開き、近くのおむつ交換所の場所を検索する。
以前に利用した事の有るおむつ交換所が近くに有れば良かったのだが、残念ながら一度も降りたことが無い駅だったため、おむつ交換所を探さないといけない。
(やっぱり良い対応をしてくれる確率が高いのはこういう所になるよね)
近くのおむつ交換所一覧から詳細を開き、どの駅前にもよくある個人病院のクリニックがやっているおむつ交換所を目的地にセットした。
こういう所は設備や対応が悪いと普通の患者さんの数が少なくなって潰れてしまうからか、設備が新しくキレイで対応が良い所が多く、おむつ交換の利用者にだけ態度が悪くても居合わせた患者さんの心象が悪くなるため、おむつ交換で行っても優しく対応してくれる所が多いため、すでに行った事が有りどんな対応をされるのか分かってる所が近くに無い場合は、新しそうな個人病院のクリニックを選ぶ事にしている。
電車を降りて駅の改札を抜け、少し歩くと目的のクリニックに到着した。
「こんにちは、今日はどうされ…」受付の女性はそこまで言いかけて、おもらし表示器を付けている事、そしてそのおもらし表示器のおむつの濡れ具合を示すLEDが赤く光っている事に気が付いたのか、「おむつ交換に来たのでいいかしら?ここに来たのは始めて?」と言葉を言い換えた。
その言葉に頷きながら「始めてです、お願いできますか?」と返事をすると、「おむつは公費の布おむつ?それとも交換用の紙おむつを持ってる?1枚売りで紙おむつを置いてあるからそれを使う事も出来るけどどうする?」と尋ねられた。
「布おむつでお願いします。」と伝えると、「では、対応可能なのかの確認と利用登録のために読み取らせて頂きますね。」とICを読み取れるカードリーダーをおもらし表示器にかざしてICに登録されている私の個人情報と共に、おもらし判定の指定情報や、前回のおむつ交換の情報、公費の布おむつ利用のため、当てるおむつの枚数やカバーのサイズ、過去におむつ交換の時に非協力的な態度をとった事があるのかや、おむつを交換する際に拘束が必要かなどの情報も読み込まれて確認が行われる。
4 1読者 2024-04-05 22:07:42 [PC]
おもらし表示器とおむつ交換所_4
「確認終わりました。問題無く利用出来ますので、あちらでお待ちください。」と指し示しめられた『おむつをしている方はこちらでお待ちください』と案内が書かれた待合室の奥は、待合室の手前側に使われている毛の短い絨毯が敷かれた床と布張りのソファーとは異なり、床は冷たいリノリウムで、そこに置かれている椅子の座面もビニール貼りの物が使われており、汚れても簡単に拭き取れる様になっていた。
このようなおもらしで汚されても簡単に拭き取れるように対策が取られている場所は、万が一おむつをあふれさせても大丈夫な場所と施設管理者がしているので、すでにおむつの吸収力の限界に達していてこれ以上おしっこが出てしまいおむつをあふれさせてしまうのは絶対ダメだと気を張っていた私は間に合ったと胸を撫で下ろした。
さほど待たされる事なく、おむつがあふれる前に名前を呼ばれ「処置室にどうぞ。」と案内された。どうやらここは普通の診察用ベッドに使い捨ての吸収シーツを敷いておむつ交換を行っているようだ。
場所によってはおむつ交換の利用者は全て、非協力的で暴れる可能性のある子に使う拘束ベルトと足を強制的に大きく開かせるアームの付いた専用のおむつ替え台に乗せて対応するという所もある。
そういったおむつ交換所は非協力的な子のおむつ交換も受け入れる数少ない施設だが、このおむつ交換所のように普通の診察台やベッドで対応をする所は非協力的な子を受け入れていないので、おむつ交換の利用者は手のかかり面倒と思われる事が無く丁寧な対応をしてくれる事が多い。
(この近くでおむつ交換所に行く時はまたここを利用しよう。)
そう思いながらスムーズにおむつ交換を済ませると受付に戻り、もう一度おもらし表示器のICを読み取り、今回のおむつ交換情報がICに書き込まれ、おむつ交換料もそのままおもらし表示器のICにチャージされている残額から支払いを済ませた。
5 1読者 2024-04-05 22:08:07 [PC]
おもらし表示器とおむつ交換所_5
おむつ交換所の利用料は公定価格として行った対応や時間で細かく値段が決められていて、その料金のほとんどが公金から支払われるが、多少の自己負担額を支払わなければならない。
世間の中には、『おむつが取れないのは自己責任だから全額を自己負担にさせろ。』だとか、『せめてもっと自己負担割合を上げるべき。』との声も有るが、現況では経済的に厳しい家庭の子がお金が払えずおむつ交換が出来なくなる事を防ぐのと同時に、『お金が無いからおむつ交換に行けず公共施設を汚してしまった』という言い訳をさせないために自己負担はほんの少額にされているが、それでもおもらし表示器がまだ青色でおむつの吸収力に余裕が有る時は、『過度なおむつ交換は公金の浪費に繋がる』として比較的高い自己負担を求められてしまう。
そのため、多くの保護者が、子供が頻繁におむつ交換に行ってお金を浪費しないように、『保護者用おむつ管理アプリ』からおもらし表示器がまだ青色表示の時はおむつ交換不要の制限を入れており、おむつの吸収力にまだ余裕が有る時におむつ交換所に行っても、保護者制限により交換を断られてしまう。
おむつ交換を終えて、ぐっしょりと濡れたおむつから乾いたおむつにかわりお尻がさっぱりした私は、改めて帰路についた。
おわり
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