おむ中出身者の成人式
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1 冴子 2023-01-16 16:43:35 [PC]

「成人式かぁー。どうしようかなぁ・・・」
市から送られて来た成人式の案内のハガキを見ながら、あたしはため息をついた。
ちらりと視線を落とせば、そこには『失禁者制服』の短いスカートからのぞく、大きなおむつのふくらみ。
そう、あたしはまだおむつが取れていない。
もちろん、この格好で成人式に行くわけではない。
けれど、こういう式典などの時に着る『失禁者、式典用制服』もおむつが見えはしないとはいえ、おむつのふくらみはごまかしようがないし、幼いデザインのそれを着ている事自体がおむつを当てられている事を示しているわけで。
会場で、さんざんにからかわれることは確実だった。

でも・・・
おむつが取れていない子達が通う『おむ中』を卒業して以来、顔を合わせていない友達に直接会いたい気持ちはあった。
こういう機会でもないと、なかなか会えないし。
あたしたちのLINEを見ると、大体半数くらいが「行きたいね」と言っている。
迷った末、結局あたしは、案内のハガキの「出席」に丸をしてポストに入れた。


成人式当日。
あたしが会場に入ると、早速そこかしこから押し殺したくすくす笑いの声が起こった。
席は、市立中学校の学区ごとに座るようになっている。
中学の時の友達と会いやすいようにという配慮なのだろうけど、『おむ中』は市内に1つだけで、あたしたち生徒は市内各所から集められていたから、普通の中学に通っていた人達が中学の友達と一緒にいる中に、たった1人で座る事になった。
会場に入った時は押し殺したくすくす笑いだったのが、何の遠慮もないくすくす笑いに変わり、さらにあちこちからあたしを指さしてのひそひそ声まで聞こえ始める。
「成人式に、おむつ当てられて出席って・・・ぷっ。」
「まだおむつ当ててるなんて、成人じゃなくて、赤ちゃんだろうにねぇー、くくく。」
「あんまり噂すると、泣いちゃうよ?。まだおむつの取れない赤ちゃんなんだし。くく、ぷっ。」
「お嬢ちゃん?、ここは成人した大人の人が来るところでちゅよぉー?。赤ちゃんは、おむちゅが取れてから来まちょうねぇー?、ぷーっ!くっくっくっ・・・」
そんな声の渦巻く中、あたしは、じっとうつむいて、涙をこらえているしかなかった。
そして、「参加するんじゃなかった」と後悔し始める。

2 冴子 2023-01-16 16:44:31 [PC]

その時。
「愛景美(あけみ)ちゃん!」
あたしの名前を呼ぶ声がして、あたしと同じ制服を着た子が、小走りにあたしの方へ向かって来た。
「知鶴(ちづる)ちゃん!」
『おむ中』の時のクラスメイトだった。
知鶴ちゃんはあたしの隣の席に座って、うれしそうに笑った。
そうしてあたし達は、『周囲の騒音』を耳から締め出して、式が始まるまでお互いの『おむ中』を卒業してからの事を話したのだった。
時々『周囲の騒音』を締め出し損ねては、ビクッとしたり、顔を赤らめたりしながらだったけれど。

式が始まる。
お偉いさんの退屈な話。
その中でふと・・・
「・・・これからは、諸君は大人の一員として、権利と同時に義務や責任を負う事になるのです。罪を犯せば大人として罰されますし、おもらしをして公共の場を汚せば自分では外せないおむつを強制的に当てられてしまいます・・・」
その言葉を聞いて周りの視線があたし達に集中する!。押し殺したくすくす笑いの声。
いたたまれなさに思わずうつむいてしまう。
家を出てからのおもらしでぐっしょりと濡れたおむつが気になって、思わずあふれていないかお尻を触って確かめてしまう。
もちろんあふれていなかったし、もしあふれてもスカートの下にはかなければいけない事になっている『防水ペチコート』で大丈夫なはずだったけれど。

お偉いさんの話が契約やらお金の話に移って、やっとあたし達は息をついた。

3 冴子 2023-01-16 16:45:32 [PC]

式が終わって、あたしは知鶴ちゃんと一緒に式場を出た。
LINEでみんなと約束した同窓会の居酒屋に向かう前に、どこかの『誰でもトイレ』で、ぐっしょりと濡れたおむつを、知鶴ちゃんと替えっこしようと思いながら。
ところがそんなあたしに、千鶴ちゃんがうつむいてポツリと言った。
「先に行ってて。その、あたし、『やっちゃった』から・・・。」
「えっ!?」
そっと知鶴ちゃんがあたしにだけ見えるように制服のスカートをめくる。
スカートの中で知鶴ちゃんのおまたに鈍く光る大きな金具と、それが付いている丈夫そうな布地。
「1年前かな?、うっかりおむつ替えるのを忘れて電車に乗っちゃって。電車のシート、汚しちゃったの。」

『強制排泄管理処分』。
お偉いさんが言っていた『強制的に自分では外せないおむつを当てられる』というやつだった。
もちろん、おもらしする子は指定のおむつを当てないといけないんだけど、普通はその管理は各自に任されていて、自分で替えたり家族に替えてもらう事が出来る。
でも、おもらしで公共の場所を汚しちゃった場合は、自分でおむつを替える事が禁止され、駅等にある『失禁管理所』で替えてもらわなければならなくなる。
それでも、未成年の内はまだ、おむつを保護者に替えてもらう事が出来る。
けれど、成人したら、もうそれは許されなくなってしまう。
千鶴ちゃんのスカートの中にあったのは、自分でおむつを外せないようにするために、着せられる『排泄管理拘束ロンパース』だった。

4 冴子 2023-01-16 16:46:15 [PC]

「知鶴ちゃん・・・」
あたしは慰める言葉が見つからなかった。
「だから、先に行ってて。あたし、『失禁管理所』でおむつ替えてもらってから行くから。」
知鶴ちゃんはそう言って力なく笑った。
『失禁管理所』は怖い所だと聞いている。
駅などにあるその前を通る時、罵声が聞こえる。
そんな所に知鶴ちゃんを一人で行かせるなんて・・・
せめて今日だけでも!。
「あたしも一緒に行く!。別に処分を受けてない人も行って良いんだし。」
「え、でも・・・」
「それともあたしと一緒に行くのはイヤ?。」
「そんな事ない!。とっても心強い。けど・・・」
「じゃあ、一緒に行こっ!。」

「おむつも取れてない子が、成人式とか笑っちゃうわねっ!。」
「ほらもっと足を広げなさいっ!。」
「モタモタしないでお尻を持ち上げてっ!。」
そんな罵声を浴びながら、あたしと知鶴ちゃんは朝からのおもらしでぐっしょりと濡れたおむつを替えてもらった。
『失禁管理所』はやっぱり怖い所だった。
でも、とりあえず、千鶴ちゃんと目を合わせていたら怖さは和らいだし、心強かった。
知鶴ちゃんもあたしと一緒で少しは怖くなくなっていたようで、良かった!。

「ありがとね、愛景美ちゃん!。」
「あたし達、友達でしょ!。」
「うん!。」

おむつを替え終わったあたし達は、途中で合流した『おむ中』クラスメート達と、同窓会の会場の居酒屋へと急ぐのだった。


ちゃんちゃん!



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