親の権利
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1 manolo 2014-04-12 16:44:33 [画像] [PC]
出典:『よくわかる子ども家庭福祉(第5版)』、山縣文治編、2/20/2007、ミネルヴァ書房、(III-6.「親権と子ども」、桜井智恵子)pp.48-49
1-1. 【1. 親権】
未成年の子どもを保護するために親に認められた法律上の地位を親権といいます。父母の婚姻中は父母が共同して親権を行い、その一方が親権を行えない時は、他の一方が、養子の場合は養親が行います。具体的には、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と書かれている監護教育権(民法第820条)があります。そのほかに、居所指定権(民法第821条)、懲戒権(民法822条)、職業許可権(民法第823条第1項)、財産管理権(民法第824条)などが認められています。(p.48)
2 manolo 2014-04-12 17:17:31 [PC]
1-2.
今までの親権の考え方は、子どもを支配する要素を持ち続けているといわれています。そのため、児童虐待ケースのような場合、子どもの権利と親権が衝突することがあります。しかし、これからは子どもの権利を擁護するという視点から、全面的に見直されるべきだと考えられるようになってきました。そこでは、親の権利が何のために親に付与されているかについて問い直す必要が出てきます。親権者により子どもの虐待がなされた場合は、親権の濫用に当たります。そのような場合には、親権の制限を考慮する必要があります。親権の制限には、民法による親権の喪失宣告、児童福祉法によるさまざまな親権の制限があります。(p.48)
1-3. 【2. 親権の制限】
親権の制度は未成年者の保護・育成という社会目的をもち、その利益・福祉のためにありますから、親権の適切な行使をなしえない親からは、その意思に関わらず親権を剥奪すべきという趣旨に立っています。ですから、親権者の行為が喪失原因に当たるかどうかの判断については、子どもの利益に反するかどうかを基準とします。また、親権者を排したとき、他の保護者によって現状以上の福祉・利益を子どもにもたらすことができるように考慮される必要があります。(p.48)
1-4.
児童福祉の理念は子どもの最善の利益の実現にあります。親が子どもの利益を害するときには、親としての責任を果たしているとはいえないと考えられています。このような場合には、国は、子どもの権利を守る責任を果たさなければなりません。児童福祉法は、親権者の虐待などがあったとき、家庭裁判所の承認を得れば、都道府県が子どもを福祉施設に入所させる措置をとることができるとしてます(児童福祉法28条)。しかしながら、家庭裁判所による親権喪失宣告も、公的機関によるそれらの権限の行使もきわめて慎重であり、いまだ親権を侵すべきでないとの意識が強く、最近の児童虐待への関心が高まるにしたがって、これらの制度のあり方が問われています。(pp.48-49)
3 manolo 2014-04-12 17:33:06 [PC]
1-5. 【3. 親子の絆】
親の親権を喪失させた後、子どもの面倒を誰がみるかという問題があります。日本の伝統的な家族観・親子間のもとでは、養子制度、里親制度がなかなか発展しにくいのです。子どもにとって親というのは、かけがえのない存在です。その親との関係を断絶するということは、子どもの人生に大きな影響を与えるでしょう。親と引き離され児童養護施設で生活している子どもたちは、親への捨て去りがたい思いを抱えて成長しています。子どもたちは、そのような親への思いの整理に多くのエネルギーを費やすことになります。(p.49)
1-6.
親権の喪失宣言は、法律上の親の資格剥奪に過ぎず、決して親子関係の断絶ではありません。親子分離がなされた後の児童養護施設を含む代替擁的養育システムの中では、親子の絆をつなぎとめることが課題になるでしょう。また、親子関係を修復できない子どもには、子ども自身がそれを受け止め、乗り越え、自立していく力をつけるように支える必要があります。(p.49)
1-7.
現行制度の背景には、親が子どもの最適な養育者であり、親が全面的に子どもの養育を委ねることが子どもの福祉に合致するとの理念がある。この考え方は、子どもの権利条約にも見られるように、普遍的真理であり、親子の養育をめぐる権利を保障しようとすれば、国家による私的養育への干渉には慎重でなければならない。しかし、共働き夫婦や離婚の増加、少子化による親の期待大、育児に対する社会的支援の絶対的不足等、子どもの養育をめぐる状況は大きく変わってきている。私的養育への全面的依存は、現代では親に過大な養育負担を強いる結果となり、その矛盾が児童虐待となって子どもに向けられることになる。(p.49)
1-8.
戦後、子育ては私的な親子の絆にのみ委ねられ、地域や社会は子育てから撤退してきました。その結果、近年、児童虐待が増加していると注目され、それに対して虐待家族に対する批判や親子分離が問題とされます。しかし、そういった指摘や対処だけに留まらず、なぜ親は可愛い子どもを虐げることになってしまうのかという、親を取り巻く状況や文化的背景をも含めて分析し、社会的子育ての仕組みの創造や社会状況の変容を目指すという課題も私たちに与えられているのです。(p.49)
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