テロリズム、国際テロリズム
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1 manolo 2013-02-21 19:26:16 [画像] [PC]
出典: 『よくわかる国際法』 大森正仁、ミネルヴァ出版、4/5/2008、pp.148-149
1-1. テロリズムとは、ある集団が第三者に恐怖状態を作り出すために暴力を組織的に使用し、ある目的を達成する手段をいう。テロリズムの主体は、国である場合もあるが、多くの場合は私的集団(いわゆる「非国家主体」)である。テロ行為の容疑者、行為地、被害者、対象国、テロ組織の拠点などが複数国に広がっている場合、国際テロリズムと呼ばれる。一般市民に無差別かつ大規模な危害を加える国際テロリズムの防止は、国際社会の課題となっている。(p.148)
1-2. 国際法がテロリズムを規制する際に直面するのは、テロリズムの定義の問題である。近年の事例だけでも、イラクやアフガニスタン等で頻発する事件、イスラエルにおけるパレスチナ人による事件、2001年の米国の9.11事件、2004年スペインの列車爆破事件、同年ロシア連邦・北オセチア共和国の学校占拠事件、2005年英国の地下鉄爆破事件等、これらすべてを包括的に定義することは困難である。1996年国連総会によってテロリズムに関するアドホック委員会が設立され、包括的テロリズム防止条約の作成が審議されているが、当該条約の対象犯罪であるテロリズムの定義をめぐり難航している。各国の国内法による対応が国際法に先行している現状である。(p.148)
1-3. これまで、テロリズムの手段として行われる特定の行為(ハイジャック・シージャック、国家代表に対する犯罪、人質等)が個別に禁止され、その訴追・処罰を確保する多数の普遍的条約が成立してきた。これらの条約の共通点として、(1)犯罪行為の構成要件を規定し、国内法の犯罪として重い刑罰を科すこと、(2)裁判権を設定すること、(3)容疑者が所在する国はその身柄を確保し、「引渡か処分か」の義務を負うこと、(4)犯罪人引渡に関して、引渡条約が別途ある場合はその犯罪を含めることとし、ない場合は当該条約自体を引渡条約とみなして引渡すこと、ことがある。(p.148)
2 manolo 2013-02-21 19:26:55 [PC]
1-4. 現在審議中の非公式草案では、暫定的に以下のように定義されている。(テロリズムに関するアドホック委員会報告書、2002年、UN. Doc A/57/37)
第2条「条約上の犯罪」
1. 不法かつ故意に行われた以下の行為は、集団のいかんを問わず、この条約上の犯罪とする。
(a)人の死又は身体の重大な傷害
(b)公的及び私的財産に対する重大な損害(公共のように供される場所、国若しくは政府施設、公共の輸送機関、基盤施設、または環境を含む。)
(c)(b)に定める財産、場所、施設 又は機関に対する損害であって重大な経済的損失をもたらし又もたらすおそれのあるもの。ただし、当該行為の目的が、その性質上の又は状況上、住民を威嚇し又は何らかの行為を行うことを若しくは行わないことを政府若しくは国際機関に対して強要することである場合に限る。
2. 1.に定める犯罪を実行するとの信憑性ある重大な脅迫も犯罪とする
3. 1に定める犯罪の未遂も、犯罪とする。
4. 次の行為も犯罪とする。
(a)1. 2又は3に定める犯罪に加担する行為
(b)1. 2又は3に定める犯罪を行わせるために他の者を組織し又は他のものに指示する行為
(c)共通の目的を持って行動する人の集団が1、2又は3に定める犯罪の一又は二以上を実行することに対し、寄与する行為。ただし、故意に、かつ、以下の場合に限る。
(i)当該集団の、1に定める犯罪の実行を含む、犯罪活動若しくは犯罪目的の達成を助長するために寄与する場合。
(ii)当該集団の、1に定める犯罪の実行の意図を知りながら寄与する場合。(pp.148-149)
1-5. また、多くの地域的条約も成立している。
地域 条約名(採択年)
米州機構 米州テロ行為防止処罰条約(1971)
欧州審議会 欧州テロリズム防止条約(1977)
南アジア地域協力機構 地域テロリズム防止条約(1987)
アラブ諸国連盟 テロリズム防止アラブ条約(1998)
独立国家共同体 テロリズムと戦うCIS加盟国協力条約(1999)
アフリカ統一機構 テロリズムの防止及び戦うための条約(1999)
イスラーム会議機構 国際テロリズムと戦うOIC条約(1999)
上海協力機構 テロリズム、分離・過激主義と戦う上海条約(2001)
(p.149)
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