同意
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1 manolo 2013-08-23 01:48:36 [PC]

出典:『Jurist増刊 刑法の争点』、10/30/2007、有斐閣、「18. 被害者の同意」、木村光江、pp.38-39

1-1. I. 問題の所在
 被害者の同意(承諾)とは、法益の主体が法益侵害に対して同意を与えることをいう。国家、社会法益については、「個人の同意」が犯罪の成否に影響を及ぼすことはないため、同意が問題となるのは個人法益に対する罪に限られる(もっとも、「被害者ではないものの、放火罪における居住者の同意、偽造罪における名義人の同意は、犯罪の成否に影響を及ぼす場合がある)。(p.38)

1-2.
 個人法益の中でも、生命については同意があっても処罰される(刑202条)。他方、財産犯においては、被害者が放棄した財物は要保護性を欠くことが明らかであるから構成要件該当性が欠ける。このほかの犯罪類型のうち、自由に対する罪では強姦罪や強制わいせつ罪(13歳以上の者に対する場合)、さらに逮捕・監禁罪も同意により構成要件該当性を欠く。また、住居侵入罪も住居権説の立場からは、被害者の同意により構成要件該当性が阻却されることになる。(p.38)

1-3.
 これに対し、傷害罪は被害者の同意があっても当然には犯罪の成立を否定しないと解する立場が有力である。違法阻却としての被害者の同意が問題となるのは、事実上同意傷害に限られる。なお、同意により構成要件該当性が阻却される犯罪類型についても、同意が欺罔や脅迫により得られた場合には、そもそも同意が無効とされる余地がある。(p.38)

2 manolo 2013-08-23 01:52:04 [PC]

1-4. II. 同意傷害の処理 ――被害者の同意の体系的位置づけ
1. 被害者の同意の体系的位置づけ
 被害者の同意は、一般に違法阻却事由として説明されることが多い(大谷實〔2007〕、川端博〔2006〕)が、構成要件該当性が欠けるとする見解も有力である(山中敬一〔1999〕、前田雅英〔2006〕、山口厚〔2007〕)。(p.38)

1-5.
 この対立は、同意、すなわち被害者の自己決定権を犯罪の成否においてどの程度重視するかに関わる。(a)被害者の自己決定権を重視し、同意による法益の放棄があれば、法益侵害性が否定されると解せば、構成要件該当性が欠けることになる。これに対し、(b)被害者の自己決定権に絶対的な意味を持たせず、同意のみで法益侵害性は失われないと考えれば構成要件該当性は否定されない。同意があることを一要素としつつ、他の要素と併せて違法阻却の可否を論ずることになる。したがって、同意を単独で阻却事由と認める見解が構成要件該当性阻却説と結びつき、同意を単独では阻却事由として認めない見解が違法阻却事由説と結びつく。(p.38)

1-6.
 もっとも、同意を単独の阻却事由としつつ、違法阻却事由説と採る見解もある(曽根威彦〔2000〕)。この見解は、被害者という同一主体の中で、「自己決定の自由」という利益が「行為により侵害された法益」に優越することを理由に、同意を違法阻却で扱うとする。しかし、202条が存在する以上、自己決定の自由が「生命」に優先しないことは明白であるし、逆に自己決定の自由が「財産」に優先することもまた明白である。傷害罪について、なぜ自己決定権の自由が「常に優先する」のかについて、なお説明が必要であろう(山中・前褐参照)。(p.38)

3 manolo 2013-08-23 01:56:16 [PC]

1-7.
2. 同意と社会的相当性・生命への危険
 現在の判例・多数説は、上記(b)の立場に立ち、同意を単独では違法阻却事由として認めない。ただ、同意に加え、違法阻却のためにどのような要件を必要とするかについては争いがあり、@同意に加え、傷害行為が社会的に相当であることを要するとする見解と、A同意に加え、傷害の程度が生命に危険を及ぼすことのない程度であることを要するとする見解とに分かれる。(p.38)

1-8.
 @の社会的相当性を要求する立場は、多くの判例・裁判例が採用するもので、たとえば、やくざの指詰めは、いかに被害者の同意があっても社会的に相当な行為とはいえないため違法性は阻却されず(仙台地石巻支版昭和62・2・18版時1249号145頁)、自動車事故を装って、保険金を騙取するという違法な目的で被害者の承諾を得ても、違法阻却は認められない(最決昭和55・11・13刑集34巻6号396頁)。「承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合わせて決すべきものである」とするのである(同決定。さらに無資格者による手術に関し、患者の承諾があっても違法阻却されないとした東京高判平成9・8・4高刑集50巻2号130頁参照)。(p.38)

1-9.
 これに対し、学説上はAの傷害の程度を重視する見解が有力に主張されている。この見解はさらに、生命に危険が及ぶ場合に限って同意を無効とする見解(西田典之〔2006〕)と、「重大な(取り返しの付かない傷害)」についても「含むべきであるとする見解(井田良〔2005〕)、さらに山中・前褐参照)とがある。前者は、202条の存在を根拠に、その延長線上にあるものとして生命危険の高い傷害への同意を無効とするものであり、後者は、自己決定を行う主体そのものを破壊するような結果についての同意は、もはや意思決定として尊重すべきでないことを理由とする。(p.38)

4 manolo 2013-08-23 01:59:39 [PC]

1-10.
 しかし、同意殺から「類推」して、条文上存在しない(「同意重傷害罪」)を認めることはできない。また、202条に未遂規定があることから、「生命への危険」も保護すべき対象となるとの主張もみられるが(井田・前褐)、これは(同意)殺人罪と傷害罪の区別を軽視するものである。また、自己決定を行う主体そのものを破壊するという場合も、どの程度の傷害であれば「取り返しの付かない」傷害となるのかは、まさに人によって評価の分かれるところであろう。(p.38)

1-11.
 もっとも、Aの見解は、社会的に相当でないとされる傷害行為について違法阻却を認める。やくざの指詰めや、保険金目的で得られた同意についても、傷害罪の成立を否定することになろう。しかし、違法阻却という観点から同意を捉えるのであれば、傷害の程度だけではなく、むしろ、目的の正当性、行為の相当性や緊急性をも含めた判断がなされるべきである。したがって、仮に、同意傷害を違法阻却として扱うのであれば、判例の判断基準の方が妥当性を持つといえる。(pp.38-39)

1-12.
3. 自己決定権に対する意識の変化
 自己決定をどの程度重視するかは、時代により変化しうる。近年、青少年に対し刺青を施す行為について青少年保護育成条例で罰則付きの禁止規定が盛り込まれる例が見られるが(従来からの例に加え、たとえば平成17年の愛知県、宮城県、平成19年の宮崎県、山梨県条例への導入)、これは少なくとも18歳未満の少年について、自己決定権よりもパターナリズムを重視する傾向が強まったことを意味する。しかし他方では、あくまで青少年保護条例における規制にとどまるものであることも重要である。この規制を成人に拡大することや、条例ではなく傷害罪として評価することについてまで、国民の合意があるとはいえない。(p.39)

1-13.
 現時点では、少なくとも成人の自己の身体に対する意思決定については、当該個人の意思を無視してまで保護しなければならない利益はないと考えるべきであり、法益の不存在により構成要件妥当性が阻却されると解すべきである。この結論は、自傷行為を処罰しないとする、現在の通説的な見解とも整合する。(p.39)

5 manolo 2013-08-23 02:02:37 [PC]

1-14.
 たしかに、やくざの指詰めや、無免許医師による施術による傷害は、傷害罪として処罰に値するという結論は妥当性を持つ。しかし、その理由は、社会的相当性を欠くことや、生命に危険が及ぶためではなく、脅迫や欺罔により得られた同意は、被害者の真摯な同意とは認められないからである。(p.39)

1-15. III. 推定的同意
 たとえば、意識不明の重傷者を意識の回復を待たずに手術する場合のように、「現実」の同意はないが一般人なら同意するであろうという状況であれば、処罰しないとする見解が有力である(大谷・前褐)。しかし、どのような論理で、どこまで正当化するのかについては、見解が分かれる。(p.39)

1-16.
 まず、@被害者の同意の延長戦上にあるものと理解し、一般人から見て同意があったと同視しうる客観的事情があれば正当化するとする見解がある。しかし、「同意」の問題とする以上、あくまで「本人」の同意が必要とされるべきであろう。これに対し、A同意とは別の、許された危険の法理により違法阻却されるとする見解は、行為の有用性を根拠に結果を正当化する(手術は死ぬ確率が高くても有用な行為だから許される)。しかし、いかなる手術でも常に許されるわけではない。当該本人にとって本当に望ましい「許された」ものかどうかは、本人以外の者が判断するわけにはいかないからである。(p.39)

1-17.
 自己決定の自由を重視する立場からは、現実の同意がない以上、原則として処罰されると解されることになろう。ただ、たとえば正当な治療目的の相当な医療行為であれば、本人の同意を得ることができないという緊急状態であることを考慮して、違法性が阻却される余地を認めるべきである(前田・前褐参照)。(p.39)

6 manolo 2013-08-23 02:09:04 [PC]

1-18. IV. 同意に瑕疵[かし]がある場合 ――欺罔[ぎもう]・脅迫により得られた同意

 同意に瑕疵がある場合、特に同意が欺罔や脅迫により得られた場合には、その同意の有効性が争われる。主として同意殺、監禁罪、準強姦罪、さらに住居侵入罪において問題となるが、同意傷害についても、インフォームド・コンセントがなかった場合には同意に瑕疵がある場合の一類型と考えることができる。(p.39)

1-19.
 同意が脅迫により得られた場合には、一般には同意は無効とされる(福岡高宮崎支判平成元・3・24高刑集42巻2号103巻参照)。これに対し、錯誤に基づく同意の場合については見解が対立する。その錯誤が被害法益に直接関わるものに限り同意を無効とするとする「法益関係的錯誤説」(佐伯仁志・神戸法学年報1号51頁以下、山口・前褐)によれば、殺人罪を認めた裁判昭和33・11・21(刑集12巻15号3519頁)のように、被告人が追死するものと被害者が誤信しているのを利用して自殺を決意させる行為は、被害者の生命と「法益関係的」でない行為者の死についての錯誤であるから、同意は有効となり、202条の成立にとどまることになる。(p.39)

1-20.
 しかし、「法益関係的」錯誤を形式的に捉えると、同意が無効となる範囲は極めて限られてしまう。そこで、たとえば、炎上する自動車内の人を救助してくれと騙され、火傷を負いながら助けようとしたが、中には犬しかいなかったような場合、「自己の身体が火傷を負う」という意味での「法益関係的」錯誤はないものの、より大きな法益(人の生命)を救うために自らの法益を犠牲にするという、法益の「相対的価値」について錯誤があるから、やはり法益関係的錯誤が認められ同意は無効であるとする主張もある(山中・前掲、さらに山口・前褐)。しかし、「法益関係」をこのような相対的なものと理解するのであれば、「自己の生命」を(その者にとって)より大きな利益(心中すること)のために犠牲にするという点についての錯誤も法的関係錯誤にあたると解する余地もある。(p.39)

7 manolo 2013-08-23 02:09:40 [PC]

1-21.
 法益関係の範囲が必ずしも明確でないとすると、法益関係以外の何らかの判断基準が必要となる。しかし、「本当のことを知ったら同意しない場合」のすべてにつき同意を無効とすることもできない。些細な事情についても「誤信」があれば、すべて合意を無効にするというわけにはいかないからである。結局その同意が自由な意思決定によってなされたか否かにより判断せざるをえない。@十分な情報を与えられたうえで、A自由な価値判断により意思決定ができる状況にあった場合にはじめて、真摯な同意があったといえるのである。(p.39)

1-22.
 この観点からは、脅迫による場合は、A自由な意思決定とはいえず、錯誤による場合は、@十分な情報を与えられていないことになる。どの範囲の「情報」を問題とすべきかは「法益関係」のみでは判断しえない。たとえば治療行為であると誤信し行為者と性交した場合は、いかに「性交」自体の認識があったとしても、当該治療行為についての情報が与えられたとはいえず、準強姦罪が成立することになる(東京地判昭和62・4・15判時1304号147頁参照)。(p.39)

【参考文献】
・大谷實『刑法講義総論(新版第2版)』(2007)
・川端博『刑法総論講義(第2版)』2006)
・山中敬一『刑法総論T』(1999)
・前田雅英『刑法総論講義(第4版)』(2006)
・山口厚『刑法総論(第2版)』(2007)
・曽根威彦『刑法総論(第3版)』(2000)
・西田典之『刑法総論』(2006)
・井田良『刑法総論の理論構造』(2005)

8 manolo 2013-09-25 23:56:24 [画像] [PC]

出典:『よくわかる刑法』井田良他著、4/20/2006、ミネルヴァ書房、(II-7. 「被害者の同意」、飯島暢)pp.60-61

2-1. 1. 自己決定権としての被害者の同意
 法益の主体が、その侵害に対して同意を与えることを被害者の同意(承諾)という。自分のことを自分で決めることは自己決定権として尊重されるが、それは幸福を増進するようなポジティブな内容だけでなく、ネガティブに自己の利益を放棄することも含んでいる。従って、被害者が自己の法益に対する侵害に同意することも自己決定権の現われとして尊重されなければならない。ここから、被害者の同意に基づく法益的侵害行為が原則として適法とみなされ、処罰されないという結論が導き出される。こうして学説の多くは、被害者の自己決定権を同意による適法化の根拠に据え、法益の主体が自主的に法益を放棄する場合には刑法によって保護する必要がなくなり、たとえ法益侵害行為がなされても、その違法性は阻却されるとしている。ただ、*被害者の意思に反することを法益重視の前提にする犯罪類型においては、被害者の同意によって、法益侵害自体がなくなり、そもそも構成要件該当性を否定することができる。また、生命に関しては、その重要性から法益主体の自己決定権が制限され、たとえ被害者が殺害されることに同意していても、殺害行為の違法性は阻却されずに減少するにとどまり、同意殺人罪(202条後段)が成立することになる。(p.60)

*被害者の意思に反することを法益侵害の前提にする犯罪類型
例えば、監禁罪、住居侵入罪、強姦罪のような自由に対する罪が挙げられる。他人の住居に同意を得て立ち入ることは、もはや「正当な理由がないのに、人の住居……に侵入」(130条)したとはいえないのである。(p.60)

9 manolo 2013-09-25 23:58:31 [PC]

2-2. 2. 同意の有効条件
 同意の対象となる法益は、被害者が放棄できるものでなければならないので原則として個人的法益である。そして、同意が有効なるためには、まず被害者が同意の内容として意味を理解できる能力(*同意能力)を有していなければならない。それ故、幼児や精神障害者の同意は無効である。そして、同意能力のある被害者が、無理に強要されたり、だまされたりしないで、任意で(かつ真意に基づいて)法益侵害に対して同意を行わなければならない。ただ、被害者が錯誤に陥って同意を与えた場合については、その錯誤の意義をめぐり学説上争いがある。通説・判例は、被害者の意思決定にあたり重要な影響をもつ錯誤がある場合には同意を無効とする。これに対し、最近の有力説は、放棄される法益の内容に関する法益関係的錯誤とそれ以外の動機の錯誤を区別して、後者の錯誤の場合には法益が失われること自体をきちんと認識して同意を与えているとして、その有効性を認める(**法益関係的錯誤の理論)。また、同意の存在を行為者が認識している必要があるか否かという問題がある。有力説は行為者の認識は不要とし、そもそも同意は被害者の内心にあるだけでよく、それが外部に表示される必要もないとしている。(pp.60-61)

*同意能力
刑法は、性的自由に対する侵害である強制わいせつ罪、強姦罪について、13歳未満の被害者に同意能力を否定している(176条後段、177条後段)。これはわいせつ行為、姦淫行為について、13歳未満の者は適切に理解することができないとみなされるからである。(p.60)

**法益関係的錯誤の理論
この理論によれば、被害者が処分する法益の種類や範囲に錯誤がある場合にだけ同意は無効となる。例えば、輸血のために血液を採取する場合に、約束した以上の量の血液を採る場合には、法益関係的錯誤が認められ、同意は無効になって傷害罪が成立する。これに対して礼金として金を払うからといってだまして、約束した量の血液を採取した場合には、被害者はその量だけ血液を採られることをきちんと認識しているのだから同意は有効であり、たとえ礼金がもらえる点について錯誤に陥っていたとしても、それは動機の錯誤でしかないので同意の有効性には関係がないことになる。この法益関係錯誤の理論は偽装心中の事例の関係においても問題となる。(pp.60-61)

10 manolo 2013-09-26 00:00:35 [PC]

2-3. 3. 同意傷害の問題
 被害者の同意に基づく傷害(同意傷害)において、どの範囲で違法性が阻却されるのかについて学説上の対立がある。*判例(最決昭和55年11月13日刑集34巻6号396頁)及び従来の通説は、被害者の同意だけでなく、(傷害行為の)同意を得た目的、行為の手段・方法・態様、生じた結果の重大性等の様々な要素も総合的に考慮して社会的に相当といえる場合に傷害罪の違法性を阻却させる。つまり、身体という法益が侵害されることに被害者が同意していても、それだけでは違法性は阻却されないというのである。しかし、これでは被害者の身体という法益の保護とは無関係に、主観的に違法な目的を行為者が有しているかとか、侵害行為が社会倫理や公序良俗に反しているどうかという観点から違法性の有無が決められてしまいかねない。そこで、近時の有力説は、同意傷害は原則として違法だが、傷害の程度に着目して、死ぬ危険性があるような重大な傷害について同意を与えている場合には違法性が阻却されないという見解を唱えている。生命については同意による違法阻却の効果は完全でなく同意殺人罪が成立する。しかも、刑法はその未遂も罰している(203条)。つまり、同意があっても生命にとって危険となる行為は違法とされるのであるから、それに近い重大な傷害を与える行為についても同意によって違法性は阻却されないと有力説は解するわけある。ただ、学説の中には、自己決定権をより強調して同意傷害は全面的に不可能であるとする見解もある。(p.61)

*最決昭和55年11月13日刑集34巻6号396頁
本事案は、XとYら数人がわざと交通事故を起こして保険金をだまし取ることを共謀し、Xは車をYの車に衝突させ、Yらに身体傷害の結果を生じさせたがYらはそれに同意を与えていたというケースであった。最高裁はYらに対する傷害が軽いものであり、彼らがそれに同意していたとしても、彼らがそれに同意していたとしても、ここでの同意は保険金詐欺という違法な目的のために得られたものであるので違法性阻却は認められないとした。(p.61)

11 manolo 2013-09-26 00:01:09 [PC]

2-4. 4. 推定的同意
 推定的同意とは、被害者が現実には同意を与えていないが、もし彼が事態を正しく認識していたら同意していたであろうと推定されることをいい、推定的同意に基づく法的侵害の行為の違法性は阻却される。例えば、意識不明の負傷者を医師が手術する行為や、火災の際に不在者宅に勝手に入って貴重品を持ち出す行為などが考えられる。被害者の現実の同意がないのに、それを推定して違法性を阻却できる理由について、有力説は、被害者の同意が現実には存在しなくても、彼の意思に合致していると合理的に判断される法益侵害行為が行われることを挙げている。また、あくまで推定的同意は被害者の現実の同意を補充するものなのであるから、推定的同意を援用できるのは、現実の同意を得ることが不可能な状況だけである。これを補充性の原則という。(p.61)



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