うん、矛盾だらけさ
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1 Ryou 2014-01-25 11:32:39 [URL]
「うん、矛盾だらけさ。第一、そんな抗議がなにになるといふんだ。われわれに向つてさうして肩を怒らしてるひまにだ、彼等は、もつと眼に見えん力で、予想もしない方向へ押し流されつゝあるんだ」
伯爵は、さう云ひながら、消えた葉巻に火をつけようとしてあたりを探してゐる。素子はすかさずマツチを擦つた。
「いや、僕の云ふ意味はそれと違ふんですが……」
幾島は、ふと眉を寄せて、素子の動作に見入つた。小さな炎をつまんで、白く浮く素子の華奢な手が、それに近づく伯爵の膏ぎつた顔の下で静かにふるへてゐるやうに見えた。
「するとまあ、結局、どういふことになりますかねえ?」
煙のなかで伯爵の物憂げな声がした。
――どうなるものか!
と、幾島は苦つぽく、心の中で云つた。そして、もう起ち上る身構へで、
「いや、この問題はもう少し考へてみます。僕はなにか勘違ひをしてゐたかも知れません。失礼しました」
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