溝板を飛んで来る
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1 Ryou 2014-01-03 21:30:02 [URL]
溝板を飛んで来る板裏草履の音がして、勢いよく格子戸が開くと、
「南條さん、お電話ですよ。」と、酒屋の小僧さんの声が、家の中を、つん抜けた。
食卓をかこんでいた姉妹は、一様に視線を合せたが、新子は、前川氏からだろうと思うと、大いそぎで立ち上ろうとすると、美和子が、
「あたしよ。」と、厳しく云うと、早くも茶の間を横ッ飛びに飛んで、駈けだして行った。
思えば、前川氏に呼出しの電話番号は、教えてなかったものをと、新子は、われ知らず頬を染めて、また箸を取りあげた。
間もなく、
「ゼャーズ、ア、ランプ。シャイニング、ブライト、イン、ア、キャビン。イン、ザ、ウィンドウ、イッツ、シャイニング、フォア、ミイ。アンド、アイ、ノウ、ザット、マイ、マザー、イズ、プレーイン……」と、鼻にかかった、甘ったるい声で、晴れ晴れと唄いながら、美和子が帰って来た。
「誰から……?」圭子と新子が、同時に訊いた。
「お友達……フォア、ザ、ボーイ、シー、イズ、ロンギイン、ツウ、シイー……」頭を、コクリコクリとうなずきながら、
「もう、ご飯食べないわよ。」と、二階へ上ってしまった。
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