もちろんわしは
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1 Ryou 2013-09-30 11:10:25 [URL]

「そうだ、もちろんわしは喜劇を演じたのさ! 喜劇! いい言葉だ! ほかにどんな慰めが、わしという年老いた男やもめの父親にあるだろうか? いってくれ――お前が答える瞬間だけはお前はまだわしの生きている息子というわけだ――、奥の部屋に閉じこめられ、不実な使用人どもに追い払われ、骨まで老いぼれたこのおれに、何が残されているというのだ? 息子のほうは歓声を上げながら世のなかを渡り、わしがこれまでに仕上げた店をやめてしまい、面白がって笑いこけ、紳士ぶった無口な顔つきをして父親から逃げ去ってしまうというのだ! わしがお前を愛さなかったと思うのか、お前の実の父親であるこのわしが」
「今度はおやじは身体を前にかがめてしまうだろう」と、ゲオルクは思った。「もしおやじが倒れ、くだけてしまったら!」この言葉が彼の頭のなかをかすめ過ぎた。
 父は身体を前にかがめたが、倒れはしなかった。ゲオルクは父が期待したように近づかなかったので、父はまた身体を起こした。

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