やがて、玄関の方へ
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1 Ryou 2014-05-17 12:05:17 [URL]
やがて、玄関の方へというので、またそつちへまわると、玄関のドアがあいて、
「まあ、まあ……」
と、いつに変らぬ井出夫人の姿があらわれた。
古びてはいるが趣味をこらした調度の、どことなく日本ばなれのした応接間へ通されて、市ノ瀬牧人は、薄地の白いブラウスを無造作に着た井出夫人と向い合い、自分がいまこゝにいることが夢ではないかと思つた。それほど、夫人そのものはこの周囲に溶けこみ、自分だけが別の世界にいることがわかつた。
「こゝはどういうおうちですか?」
彼は、開け放されたガラス戸のむこうに、夏の木立の青々と茂つた庭から、飾りだなの中に並んだ西洋人形や、つぼや、革とじの書物や、壁にかゝつている大きな裸体画や、暖炉の上の珍しい振子時計やに眼をうつしながら、たずねる。
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