翌日は、頭が痛むと言つて
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1 Ryou 2014-05-16 11:09:26 [URL]

 翌日は、頭が痛むと言つて、北原ミユキは店を休んだ。
「くよ/\せんとおき。ゆんべの元気、なくさんとおいてや」
 同宿の筒井レイ子は、そう言いながら、彼女をひとり部屋へ残して出て行つた。
 午後は雨になつた。
 手紙を書きたいと思うのだけれども、机もなにもないこの部屋では、腹ばいになつて書くよりしかたがないのである。
 だれに手紙を書こうというのか? それは井出夫人にである。けさ、ふとそれをおもいついた。どうしても書かずにはいられないのである。

 先日の手紙はごらんくださいましたでしようか。なにを書きましたやら、さぞお読みづらかつたことゝ存じます。ところが、また、奥さまに手紙をさしあげたくなりました。ほかにだれも話しかける相手がございません。話せば気持がほつとするというような相手が、奥さま以外にはないのです。それはわたくしにとつてあたりまえのことですけれども、奥さまは、ことによると、そんなことは想像もなさいませんでしよう。どうかわたくしのわがまゝをお許しくださいませ。そして、しばらく我まんをあそばして、とりとめもないわたくしのおしやべりをお聞きくださいませ。

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