ルナンも一時芝居に
[スレッド一覧] [返信投稿] [▼下に]
1 Ryou 2014-02-01 17:56:44 [URL]

 ルナンも一時芝居に食指を動かしたことがある。一八八六年、ヴィクトオル・ユゴオの誕生日に、「千八百〇二年」と題する対話劇をコメディイ・フランセエズで上演させてゐる。
 これは、死者の対話であつて、死者とは即ち、コルネイユ、ラシイヌ、ボアロオ、ヴォルテエル、ディドロの面々である。
 それからまた、「哲学劇」数篇を物してゐるが、ルナン自ら、「上演の意図毛頭これなし」と云つてゐるにも拘はらず、ラ・デュウゼが、そのうちの一篇「ジュアアルの尼院長」を伊太利で舞台にかけた。
 アントワアヌも、自由劇場の上演目録中にこれを加へようと思つて、ルナンに許を乞ふた。ところが、ルナンの返事は「ユゴオの誕生日に一寸した思ひつきをやつてみたのだが、その経験によると、自分の書くやうな仏蘭西語は、どうも役者が覚えにくいらしいから」といふのであつた。でも、兎に角といふ話になると、ルナンは、アントワアヌに、それでは、主人公ジュリイの役を誰がやる。心当りがあるかと問ふた。アントワアヌは早速サラ・ベルナアルのところへ駈けつけた。そして、ラ・デュウゼが演つた役だと話すと、サラは傍らの侍女を顧みて、「お前、ラ・デュウゼつて女を知つてるかい」と尋ねたものである。侍女の答はかうであつた。「はい、存じをります。でも、いい加減なもんでございますよ」
 そこで、「ジュアアルの尼院長」は自由劇場の上演目録から消え失せた次第である。

[管理ページ]
もっとき*掲示板