殊に相手は
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1 Ryou 2014-06-26 19:37:10 [URL]

 殊に相手はもともと茶というものを一向解するところがなさそうなのでなおさらである。名器にも日頃親しむことなどない人々が多いと見て間違いなしという保証つきである。茶を浅はかな考えで見ている人々、茶を志してみたい考えは持っていても元来素質を持たぬ人、天分なきゆえに縁の結べぬ人々、そのいずれかに当たっているはずの現今陶工に向かい、茶を知れ、さすれば名茶碗も生まれるぞ、世の名器を広く見よ、名器の要訣が悟れるぞ、すべからく茶家に教われ、茶道精神が解せるぞ……と吹き込んで、それがどうなるものと松永さんは思っておられるのであろう。それによって事新しく縁が結べてくるとは思えないではないか。世間は存外低いものである。「すこし茶を始めたかと思うとすぐきいたふうな月並みをならべてら」ぐらいが聞く者たちの落ちである。なかなか相手は素直に動いてはくれない。
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