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櫻井よしこブログ:「別姓法案の黒幕は法務官僚だ」 ----------------- 子供の命名について、人生の先輩に聞いた話である。生まれてきた子供がどんな一生を歩むかは、誰にも予見出来ない。起伏に富むのが人生だから、いい時も悪い時もある。であれば、不運な巡り合わせで逆境に立つような場合、せめて子供が自分の名前ゆえに自信をなくしたりしないようにしておくのがよい。だから、字画などにも気を遣って、本人を支えるような命名をしておくのが古来の知恵だ、と。 我が家で子供が誕生したとき、ちなみにそれは私の兄の子供たちのことだが、命名を担当したのは私の母、姪や甥にとっては祖母だった。母は沢山の漢字を拾い出し、長い人生における孫たちの幸福や充実につながるようにと願いながら、字画も含めて思案していた。父の名前からも一字を貰って、母は命名した。その一字に、祖父から孫へと、思いが伝わり絆が深められることへの願いが込められていたのは間違いない。 両親や祖父母と同じ名前をつけることで家族の絆を確かめようとするケースは欧米諸国にも少なくない。名前の共通性を活用するのは、洋の東西、時代の今昔を超えて見られる現象である。それは、家族としての慈しみの表現でもあろう。 いま、民主党が提案しようとしている夫婦別姓法案は、こうした価値観の対極にあると思える。民主党だけでなく、夫婦別姓推進論者の中に、社民党党首の福島瑞穂氏もいる。氏は「夫婦別姓を選択的に認めることは、人がのびやかに生きていくための必要条件」(『楽しくやろう夫婦別姓』明石書店)と位置づける。なぜ別姓でなければ、夫婦も子供ものびやかに生きていけないのか、私にとっては全く説得力のない主張である。氏はさらにこう主張する。「(夫婦別姓は)十分条件ではない。別姓の人は別戸籍に、そして将来は、みんな個人籍になるといいなと思う」(同)。 別姓論者の最終目標は、日本の家族の在り方を根幹から変え、戸籍制度もなくすことだ。それが日本人の幸福につながると信じているのだ。 別姓を名乗りたければ、現在も許されている通称を使用すればよいと、私は考える。だが、戸籍制度も含めた全面的な民法改正には、到底、同意出来ず、埋め難い溝を感じる。 民事局課長の「備忘録」 民主党の法案が成立するとどんなことが起きるだろうか。まず、結婚する人たちは結婚に先立って、別姓、同姓どちらを選ぶのかを決定し、次に、子供の姓をどちらの親の姓にするのかを決めなければならない。別姓か同姓かは、一旦決めたら、以降、変えることは出来ない。これら全てをきちんと決めて申請しなければ婚姻届は受理されないことになる。 民主党が準備する民法改正には以下の点も含まれている。 @ 女性の再婚は、前の結婚の解消の日から100日を経過して以降に可能となる。つまり、現行の 6ヵ月から約半分に短縮される。 A 嫡出子と非嫡出子の財産相続分を同一とする。現行法では非嫡出子は嫡出子の半分の財産を相続するが、全て平等になる。 B 女性の結婚年齢を現行の 16歳以上から 18歳以上に引上げる。 @について、98年当時の法務省民事局第三課長の原優(ルビ=まさる)氏は『婚姻制度等に関する民法改正について−−備忘録(その2)』の中で、「女性の再婚の自由を拡大するという観点」から決定されたと解説している。考えようによっては、離婚を奨励しているようにも受けとることが出来る。 Aについては、現行法で相続財産の差が設けられているのは、正式の結婚で作った家族を保護する目的と、嫡出子は親の財産形成に対する寄与があるのに対し、非嫡出子は通常それがないという、二つの理由ゆえだとしている。だが現行法を改め、全ての子供を平等にする理由を、原氏はこう説明する。結婚以外の男女関係に対する非難を子供に及ぼすのは子供の人権尊重の視点から問題であり、親の財産形成にどれだけ貢献したか否かについては一律に論じられないことだからだ。
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