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このように直接民主主義の問題点、間接民主主義の効用についてはかねて指摘されていた。 間接民主主義は直接民主主義の 「代替物」 ではなく、むしろ直接民主主義の弊害を乗り越えるために導入された。 エリートを自任する割には朝日の記者たちはこのような基本的なことが理解できていない。 住民投票の問題点については行政法学者の原田尚彦・東京大学名誉教授が明確に指摘している。「諸外国のこれまでの経緯に照らしてみても 住民投票の場合には、 (1) 十分な資料情報にもとづく冷静かつ多面的な討議が浸透しにくく、いきおい煽動家やマス・コミによる大衆操作の影響を受けやすい。 (2) 住民投票の動向は、一時の情熱や偶発的な要素に左右され、政策的にも 一貫性を欠いた予想外の結果になることが多い。 しかも、 (3) たいていは勝敗が僅差で決まり、かえって国民の間にしこりを残すこともある。 にもかかわらず、 (4) 住民投票の結果に責任をもつ者は存在しない。 (5) 住民投票でいったん事が決まってしまうと、再び住民投票にかけなければ覆すことができないため、事態が硬直化することが少なくない」 (『地方自治の法としくみ 全訂二版』 学陽書房、1995年) 原田氏は 「住民投票という制度は、元来かなりプリミティヴな政治的意志統合技法」 であるという。 「プリミティヴ」 とは原始的、幼稚な、というほどの意味である。 そして 「一貫した政策をもたず、重要問題を決定する自信のない為政者が、責任回避の手段として、あるいはある種の政治的思惑から、住民投票に期待を寄せることもある」(同書) と述べている。 「住民投票」 の部分を 「国民投票」 と変えれば、英国の EU離脱国民投票のケースにすべて当て嵌まる。 英国の場合も、国民投票を行った理由としてキャメロン前首相の責任回避が指摘されている。 現在、自治基本条例などを制定することによって住民投票制度を導入している自治体も出てきている。 これは首長を擁立したり、地方議会で多数派を形成したりできない勢力、あるいは国政で少数派に過ぎないセクトの仕掛けと考えてよい。 住民投票はいわば 「ピンポイントの民主主義」 である。 先ず、日本全体の中のピンポイントの地域の住民を煽って多数派を形成すればよい。 次に、その瞬間だけ多数派を形成すればよい。 それで国のエネルギー政策や安全保障を左右できるのだ。 意図した結果が出ればよく、それを 「民意」 であると僭称でき、固定もできる。 こうして空間・時間両面の・ピンポイント・の 「民意」 を獲得して国の政策を大きく動かすことができるのである。 だが、このような問題点こそ、かつての朝日には好都合だったのだ。 その朝日はいま、憲法改正の国民投票を恐れている。 憲法改正賛成という 「民意」 が示される可能性があるからだ。 今さらのように、英国の事態を受けて、 「そのような 『反知性』 の潮流は日本にもあると思います」 「過激な民主主義が世界に広がっています」 と有識者 (長谷部恭男・早稲田大教授) に語らせて 「民意」 に警戒感を示す (7月18日付)。 かつてコントロール可能だった 「民意」 はもはや、自分たちのような 「知性」 によるコントロールが不能となったということだろう。 私は朝日とは別の理由で憲法改正の国民投票に批判的だ。 将来の憲法改正では憲法改正の国民投票を廃止したい。 憲法改正に国民投票を必要しない国はアメリカ、ドイツなど多くある。 しかし、国民投票制度を廃止するにも国民投票を必要とするというジレンマを現行憲法は抱えている。 朝日は 「国民投票は荒れ狂うオリの中の猛獣のようなもの。 軽々に外に出してはいけない」 ということがよくわかっているなら、いっそのこと、憲法改正の国民投票を廃止する憲法改正案を提起してはどうか。 そうであれば、私も賛成したい。
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