『特定秘密保護法』 池田信夫 blog ほかから。
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1 池田信夫 blog: 秘密保護法の超簡単な条文解説 2013年11月28日。 2013-12-13 02:32:31  [編集/削除]

池田信夫 blog: 秘密保護法の超簡単な条文解説 2013年11月28日

 秘密保護法についての騒ぎはまだ続き、きょうは特定秘密保護法案の廃案を求めるアピールなるものが出るそうだ。「憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす」という決まり文句も笑えるが、上野千鶴子、内田樹、金子勝、姜尚中、小森陽一、高橋哲哉など、絶滅危惧種のオールド左翼が一堂に会しているのは壮観である。

彼らは明らかに条文を読んでいない。何も具体的な問題点の指摘がないからだ。これは彼らのような一般人とは関係のない、公務員の特定秘密へのアクセスを制限する法律なのだ。私は法律の専門家ではないが、修正案の主要部分をごく普通に文章として読んでみよう(条文は一部略。<>の部分は修正個所)。

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第一条
 この法律は、我が国の安全保障<(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。)>に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。
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修正案では「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障する」情報と厳密に規定されたので、内田樹氏の人畜無害なエッセイとは何の関係もない。原発反対運動や歴史研究とも関係ない。また第4条第4項で、60年を超えて機密指定できる特定秘密の種類も次のように特定されている。

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 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物
 現に行われている外国の政府又は国際機関との交渉に不利益を及ぼすおそれのある情報
 情報収集活動の手法又は能力
 人的情報源に関する情報
 暗号
 外国の政府又は国際機関から六十年を超えて指定を行うことを条件に提供された情報
 前各号に掲げる事項に関する情報に準ずるもので政令で定める重要な情報
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大部分は「特定秘密の取扱者の制限」と「適性評価」に当てられているので略。

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第十八条
 政府は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとする。

 2 <内閣総理大臣は>、前項の基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を<聴いた上で、その案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。>
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特定秘密の基準については第三者機関で審査することになっている。この規定が曖昧だと批判する人がいるが、今は野放しで、霞ヶ関には「機密文書」があふれている。

報道機関については、第22条で「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と書かれているだけで、処罰の対象ではない。公務員以外を対象にしているのは、次の第24条と25条だけである。

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第二十四条
 <外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、>人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

第二十五条
 第二十三条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。
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24条は現行の刑法や不正アクセス防止法の規定を特定秘密に適用しただけである。25条の規定は現行の国家公務員法と同じであり、これで逮捕できる人は今でも逮捕できる。あなたがスパイかテロリストでない限り、この法律は忘れてよい。

追記:自衛隊から業務委託を受けた業者も「特定秘密の取扱者」に含まれる場合があるが、これは現在も法的に守秘義務がある。それ以外の受託業者については、今は機密の扱いが曖昧だが、今度の法律で厳格化される(23条)。これは報道の自由とは無関係。

 2013年11月28日 12:24

≪上記リンク≫
 ・ 特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール:http://blog.tatsuru.com/2013/11/27_1135.php
 ・ 修正案:http://digital.asahi.com/login/loginselect.html?jumpUrl=http%3A%2F%2Fdigital.asahi.com%2Farticles%2FTKY201311260565.html%3F_requesturl%3Darticles%2FTKY201311260565.html

池田信夫 blog:
秘密保護法の超簡単な条文解説
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51879662.html

コメント:
・古澤 尚博: 問題は、特定秘密の指定が正しく履行されて居るか判断するのも、検証するもの、指定した本人であると云う事。泥棒が自分を縛る縄を綯う事は無い様にこの法律は笊法に成る事も考えられる事の方が問題。「機密」指定が溢れる日本の行政。都合の悪い文書は廃棄。此の姿勢が問題! 11月28日 1:34

2 内田樹の研究室: 特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール 2013年11月28日。 2013-12-13 02:33:57  [編集/削除]

内田樹の研究室: 特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール 2013年11月28日

特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール

 佐藤学先生からお声がけを頂きました、特定秘密保護法案の衆院強行採決に抗議し、廃案を求める学者たちからのアピールに参加した。以下、そのアピールの全文と賛同者たちの氏名を掲げておく。アピールは明日(11月28日)午後1時に学士会館でメディアに公式発表の予定。その段階で、賛同者のリストはさらに長くなるはずである。

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特定秘密保護法案の衆議院強行採決に抗議し、ただちに廃案にすることを求めます

 国会で審議中の特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法であり、ただちに廃案とすべきです。

 特定秘密保護法は、指定される「特定秘密」の範囲が政府の裁量で際限なく広がる危険性を残しており、指定された秘密情報を提供した者にも取得した者にも過度の重罰を科すことを規定しています。この法律が成立すれば、市民の知る権利は大幅に制限され、国会の国政調査権が制約され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が著しく侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシーの侵害をひきおこしかねません。

 民主政治は市民の厳粛な信託によるものであり、情報の開示は、民主的な意思決定の前提です。特定秘密保護法案は、この民主主義原則に反するものであり、市民の目と耳をふさぎ秘密に覆われた国、「秘密国家」への道を開くものと言わざるをえません。さまざまな政党や政治勢力、内外の報道機関、そして広く市民の間に批判が広がっているにもかかわらず、何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます。

 さらに、特定秘密保護法は国の統一的な文書管理原則に打撃を与えるおそれがあります。公文書管理の基本ルールを定めた公文書管理法が 2009年に施行され、現在では行政機関における文書作成義務が明確にされ、行政文書ファイル管理簿への記載も義務づけられて、国が行った政策決定の是非を現在および将来の市民が検証できるようになりました。特定秘密保護法はこのような動きに逆行するものです。

 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があるのか、安倍首相は説得力ある説明を行っていません。外交・安全保障等にかんして、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちも必ずしも否定しません。しかし、それは恣意的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上のことです。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要です。困難な時代であればこそ、報道の自由と思想表現の自由、学問研究の自由を守ることが必須であることを訴えたいと思います。そして私たちは学問と良識の名において、「秘密国家」・「軍事国家」への道を開く特定秘密保護法案に反対し、衆議院での強行採決に抗議するとともに、ただちに廃案にすることを求めます。


2013年11月28日
特定秘密保護法案に反対する学者の会
 (※ 板主:地域・大学名別に並べ替えました。)

樋口 陽一 (東北大学名誉教授、憲法学)
小沢 弘明 (千葉大学教授、歴史学)
伊藤 誠  (東京大学名誉教授、経済学)
宇野 重規 (東京大学教授、政治学)
大沢 真理 (東京大学教授、社会政策)
加藤 陽子 (東京大学教授、歴史学)
和田 春樹 (東京大学名誉教授、歴史学)
小森 陽一 (東京大学教授、文学)
高橋 哲哉 (東京大学教授、哲学)
上田 誠也 (東京大学名誉教授、地震学)
鷲谷 いづみ(東京大学教授、生態学)
佐藤 学  (学習院大学教授、教育学)
杉田 敦  (法政大学教授、政治学)
浅倉 むつ子(早稲田大学教授、法学)
金子 勝  (慶応大学教授、経済学)
栗原 彬  (立教大学名誉教授、政治社会学)
加藤 節  (成蹊大学名誉教授、政治学)
姜 尚中  (聖学院大学全学教授、政治学)
廣渡 清吾 (専修大学教授、法学)
池内 了  (総合研究大学院大学教授・理事、天文学)
久保 亨  (信州大学教授、歴史学)
益川 敏英 (京都大学名誉教授、物理学)
上野 千鶴子(立命館大学特別招聘教授、社会学)
宮本 憲一 (大阪市立大学・滋賀大学名誉教授、経済学)
内海 愛子 (大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長、社会学)
野田 正彰 (元関西学院大学教授、精神医学)
内田 樹  (神戸女学院大学名誉教授、哲学)

 (2013年11月27日 0時現在)
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内田樹の研究室:
特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール
 http://blog.tatsuru.com/2013/11/27_1135.php

3 池田信夫 blog: 日本を戦争に巻き込むのは誰か 2013年12月08日 10:10 2013-12-13 02:35:26  [編集/削除]

池田信夫 blog: 日本を戦争に巻き込むのは誰か 2013年12月08日 10:10

 朝日新聞によれば「学者の会」の 3181人が「与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます」という声明(前と同じ)を出したそうだが、これは電子集計なので、署名した人が本当に学者かどうかはわからない。

 ・ 朝日新聞デジタル:特定秘密保護法案に関するトピックス: http://www.asahi.com/topics/word/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%A7%98%E5%AF%86%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95%E6%A1%88.html

 他方、朝日新聞のアンケートによると、上のように「日本の安全が脅かされている」と感じて「法案に賛成」の人は 4959人で、法案に反対の 1236人の 4倍だ。これは2ちゃんねるなどでおもしろがって投票した人が多いためと思われるが、少なくとも朝日新聞ばかり読んでいる老人とは違う意見の人がネットには多いことを示している。また BLOGOSでは、私の「強行採決は民主主義の機能する第一歩」という記事が、きのうの「最も支持された記事」だった。

 条文を普通に読む限り、秘密保護法が「戦争へと突き進む」原因になるとは思われない。今後、尖閣で軍事衝突が起こったとき、もっとも懸念されるのは軍事機密が守られることではなく、マスコミが大きな声で報復を叫ぶことだ。それを煽動するおそれがもっとも強いのは、朝日新聞である。2010年11月6日の朝日社説は、尖閣諸島の衝突事件のビデオが流出した事件についてこう書いている。

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 流出したビデオを単なる捜査資料と考えるのは誤りだ。その取り扱いは、日中外交や内政の行方を左右しかねない高度に政治的な案件である。それが政府の意に反し、誰でも容易に視聴できる形でネットに流れたことには、驚くほかない。[…]仮に非公開の方針に批判的な捜査機関の何者かが流出させたのだとしたら、政府や国会の意思に反する行為であり、許されない。
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 この映像は「特定管理秘密」に指定されていなかったにもかかわらず、朝日新聞は機密を漏洩した者(当時は不明)の処罰を求めている。それは当時の菅政権がこれを激しく非難したからだ。このビデオは彼らの政治決着の誤りを暴露し、民主党政権の(すでに落ちていた)支持率はさらに落ちた。民主党を支持する朝日新聞は、ビデオを隠蔽したかったのだろう。

 要するに、朝日新聞には一貫した原則も論理もないのだ。一貫しているのは、感情的な世論に迎合しようという商業主義である。このように部数を増やすために戦争をあおった新聞が、日本を戦争に導いたのだ。彼らが次の戦争の火付け役になるおそれが強い。占領軍が(ドイツのように)新聞社を解体しなかったのは、大きな間違いだった。

 2013年12月08日 10:10

≪上記リンク≫
 ・ 朝日新聞:http://digital.asahi.com/login/loginselect.html?jumpUrl=http%3A%2F%2Fdigital.asahi.com%2Farticles%2FTKY201312070243.html%3F_requesturl%3Darticles%2FTKY201312070243.html
 ・「強行採決は民主主義の機能する第一歩」という記事:http://blogos.com/outline/75205/?utm_content=buffer1d2a0&utm_source=buffer&utm_medium=twitter&utm_campaign=Bufferhttp://blogos.com/article/75205/
 ・ 日本を戦争に導いた:http://agora-web.jp/archives/1565093.html

池田信夫 blog:
日本を戦争に巻き込むのは誰か
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51880665.html

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