【オンライン・ミニ例会】ワルツはウィーン・フィルの音響で…
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1 名演を別の角度から楽しむ 2021-01-24 17:28:58 [画像]

 昨年の12月例会でやる予定だった「Xマス&ニューイヤー大全集」のプログラムから一曲お届けします。

J・シュトラウスU世:ワルツ《春の声》 C・クライバー/ウィーンフィル
http://www.ne.jp/asahi/my/maple/wma/newyear.wma

 1989年ニューイヤーのお馴染の名演ですが、今回は、ウィーン・フィルの音響という別の角度から、聴きどころをご案内しましょう。
 まず、音の良さで定評のあるウィーン楽友協会・黄金のホールでの録音が何よりの魅力。この木造りのシューボックス型ホール(写真)は、日本の多くのホールが、響きを整理して上澄みだけ聴かせる感じなのに対して、全部の音をそのまま実在感を伴って、豊かに響かせます。一方、アメリカやロシアの楽団の爆音では、音が飽和してしまうデリケートなホールでもあります。
 以前、楽団長のプロシャウアーが箕面でのリサイタルの際に語っていましたが、「このホールでは大きな音を出す必要は無い。いかに美しい音にするか心掛けるだけ」だそうです。このホールとオーケストラの美質の産物である佳麗なるワルツの音響を改めて味わってください。

2 ウィーン・フィルの楽器配置 2021-01-24 17:33:33 [画像]

 次に、ウィーン・フィルは独特の楽器配置で演奏しています。左の写真をクリックして拡大して見てください。モダン楽器のオーケストラの殆どは、上図のような現代的配置で、高音のヴァイオリンを左、中低音のヴィオラ、チェロ、コントラバスを右に配置します。指揮者のシノーポリに言わせると、ただ分けただけという並び方です。
 ウィーン・フィルは、下図の古典的な配置を基本にした並び方で、ヨハン・シュトラウスの楽団もこの配置でした。但し、コントラバスは中央最後列のひな壇に配置されます。黄金のホールの音響特性に合わせて、土台となる低音は中央奥で、どっしりと支えようというわけです。低音センターの音場は、ヘッドホンでも、なかなか心地よく聴こえます。

3 古典的な配置にするメリット 2021-01-24 17:36:46

 第1Vnと第2Vnが左右両翼に配置されると、何がどう変わるでしょうか。
ワルツの音響は、主に第2Vnとヴィオラがブン チャッ チャのリズムを刻み、それに乗って、第1Vnが まるでプリマドンナのように美しいメロディを奏でるというものです。しかし、現在的配置では、この対比はうまく表現されず、左側でゴチャゴチャ混じって響いています。
 古典的な配置にすると、ブン チャッ チャのリズムは、右側だけで刻まれて響きが整理され、左側ではプリマの美しいメロディが伸びやかに、華麗に歌う様が聴こえてきます。そんなポイントを意識しながら、この快い臨場感をお楽しみください。

 さて、古典的な配置のメリットは、何もワルツだけのことではありません。
例えば、マーラーの交響曲の対位法というのは、第1Vnと第2Vnが独立したメロディを奏でて、その対比と調和を聴かせるものです。ですから、二つのメロディが同じ左側で混ざり合って鳴るよりも、左右両翼に分かれて鳴る方が、対位法の構成が判りやすく、より克明に聴き取れるようになります。ですから、シノーポリは来日時の演奏会で、マーラーをやる時だけは、わざわざ古典的配置に並べ変えて演奏しました。
 シノーポリいわく、「作曲家の時代の配置で、作曲家が意図した本来の響きを聴け」。じつに説得力のある言葉だと思います。

 (選曲・文責)中野 哲男

4 Piet 2021-01-24 22:49:47

オーケストラ配置のお話、とても参考になりました。
あのホールの座席の椅子一つをとっても、素材や経年変化も含め、全てが世界遺産級のホールですね。
オペラを除き「クラシック音楽の鑑賞に画像は邪魔」と思っている私ですが、クライバーの指揮姿を含め、美しい花で飾られたホールの大画像を例会で鑑賞できることを楽しみにしています。

5 maple 2021-01-25 17:19:51

ウィーン・フィルの歴史的な配置で聴くと、おやっ?他と違うな、ということがよくありますね。
例えば、ベートーヴェン《田園》の第2楽章も、ワルツと同じように、左側だけで小川の音が流れ、右側は第1Vnのフラジオレットやフルートで小鳥が鳴く岸辺の音場になります。
チャイコフスキーの《悲愴》第4楽章は、最初は第1Vnと第2Vnが交互に一音符ずつ弾くので、悲嘆の旋律が左右に不安定に揺れながら始まります。
ふーん、作曲家はこんな効果を考えて書いたのか、と気付くと面白さも増しますね。

6 maple訂正 2021-01-25 17:39:19

↑間違いました。「右側が小川、左側が岸辺」ですね。
他にも、ベートーヴェン《運命》の扉の叩き方、第7番の「舞踏の饗宴」の踊りの音場など、古典的な並び方になると、また違った面白さが聴こえたりします。

7 Herbert von Klemperer 2021-01-31 08:43:29

こんにちは ヘルベルト フォン クレンペラー です。ウィンナワルツは本当に心を和ませてくれますね。ところで皆さんは誰の演奏するどの曲が好きですか?クライバーの春の声や蝙蝠は名人芸ですね。私はクナッパーツブッシュのウィーンの森の物語を朝一番に聴くのが大好きです。

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