小さな日常の物語
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1 ◆d2AslxwNyY 2018-08-26 15:24:23 [URL] ID:Z5gLr.sAO

-声が聞こえる-


小さな小さな、日常の物語

12 声が聞こえる 2018-08-26 15:35:34 [URL] ID:Z5gLr.sAO

「ここって……」


「俺のお気に入りの場所なんだ」


そこは草木が静かに呼吸をする小さな丘だった。


そこからは街が一望できて、朝靄に飲まれた街が目前に広がっていた。


「ほら、座って」


俺は一足先に丘に腰をかけて千絵美を導いた。千絵美は俺の導き通りに、丁寧にスカートを織り込んで俺の隣りに座った。
目線が同じ高さになる。
二人して少し目を合わせた後、俺達は街を見下ろした。


「昔さ、よく此処で絵を描いたんだ」


「絵?」


「ここから見える街の景色の絵をさ」


山の向こうの空が徐々に明るくオレンジに染まっていく。
時が来た様だ。


「この景色を、千絵美に見せたかったんだ」


黄色い光が、空に広がっていく。


眩しい位に、美しい位に。
手を伸ばせば触れられそうな位に。


それは街を包み込む朝靄に反射して、街全体を光で満ちた街に変えてしまった。


「綺麗……」


千絵美の潤んだ目は太陽の光を受けて、それはもうこの世の何より美しかった。
少なくとも、俺はそう思った。

13 声が聞こえる 2018-08-26 15:36:05 [URL] ID:Z5gLr.sAO

「この景色は俺だけのものにしておこうと思ってた。俺の心の中だけに、俺の為だけに、この太陽が昇ればいいと思ってたんだ」


千絵美は俺の方を見て、小さく頷いた。そしてまた、光で満ちた世界を仰ぐ。


「でもさ、千絵美には知って欲しいんだ。知って欲しいって思えたんだ」







その丘は、その街は。




明るい小鳥が歌を歌ってた。
泥に塗れた猫も歌ってた。
可憐なタンポポも歌ってた。


風も、木も、地面も、空も。


皆一緒に歌ってた。


「……だからさ」


「……?」


「俺は歌を歌うんだ」


千絵美の頬を涙が撫でるのが見えた。


「……私も歌うよ。由と一緒に」


「これからも?」


「……いつまでも!」


街を見渡す丘の上で笑い合う。
そうだ。


生まれて来て、初めて流すこの涙。


この日の為にとっておいたのだとしたら、頷ける。


俺はこいつと生きて行くんだ。







太陽はすっかり登って、眩しい光で満ちた街はいつもの街に戻っていた。


「そろそろ帰るか」


「うん………あ!その前にさ!」


そう言って千絵美は何かを思い出した様に、持っていた手提げ鞄から何かを取り出した。
それは少し大きめのバスケット。







「サンドイッチ食べる?」



今日もまた、聞き慣れた声がする。







おわり

14 名無しさん@もっとき 2018-08-27 09:42:12 ID:Z5gLr.sAO

つまんな


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