Tokon Debatabank II

最低賃金引き上げ (コメント数:10)

1 manolo 2013-08-26 12:30:12 [PC]


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出典: 朝日新聞、8/26/2013、p.7

1-1. タイ政府が導入した、*最低賃金を全国一律で日給300バーツ(約930円)に引き上げる政策が、中小企業をじわじわと苦しめている。地方では操業を断念する工場が増え、恩恵を受けたはずの労働者にも影響が及び始めた。閉鎖に追い込まれる工場は数万ヵ所に上るとの推計もある。

*最低賃金一律引き上げ
2011年の総選挙に勝利したインラック政権の公約の目玉の一つ。昨年4月、第1段階としてバンコクなどもともと最低賃金が高かった7都県を300バーツに、残りの県はそれぞれ40%引き上げた。そして今年1月、すべての県が300バーツ引き上げられて完全履行された。タイ国内での労働力確保が難しくなるなど、日系企業にも影響を与えている。

2 manolo 2013-08-26 12:47:10 [PC]

1-2.
 同国北部ランパン県は、陶器の産地として知られる。しかし、人影のなくなった工場や工房がところどころに目立つ。ランパン陶磁器業協会のウォンチャイ副会長によると、同協会会員の陶器製造業者がこの1年ほどで300から200へと3割近く減った。工場を閉鎖して退会したためだ。労働者数も1万2千人から半減した。中小零細企業は例外なく、工場をたたむかどうか迷っている」とウォンチャイ氏は話す。

1-3. 地方の競争力低下
 同国北西部ターク県では、衣料品工場がお同じような状態にある。5年前に子供服の裁縫工場を創業した男性(31)は5月に工場を閉鎖した。「ここはミャンマー人労働者に頼っている地域だが、最低賃金の引き上げが決まるとすぐに、都会への流出が始まった。低賃金の利点がなくなって、注文が減り、人件費を抑えるために残業をなくすと注文がさばけなくなった」

1-4.
 タイでは従来、地域ごとに最低賃金が定められ、地方に行くほど安かった。これが、地方産業の競争力の源になっていた。しかし、インラック政権が導入した新制度は地方の経済発展段階や物価水準に関係なく全国一律に引き上げるという異例のもので、ランパン県は昨年4月から今年1月の間に165バーツから81%、ターク県は162%から85%増になった。

1-5.
 第1段階の引き上げが実施された昨年4月を前に全国685人の中小企業経営者を対象にした定点観測を始めたトラキッドバンディッド大学研究センターの調査によると、規模の小さい企業ほど賃金上昇分を吸収する余力がなく、調査対象の12.5%が工場を閉鎖したと回答。約30万社あるとされるタイの中小零細の5~7万カ所が操業停止に追い込まれる可能性があるとしている。

3 manolo 2013-08-26 13:00:17 [PC]

1-6. 「地下潜伏」で対抗
 賃金引き上げを受けて、製造ラインの効率化や機械化などで労働集約型からの脱皮をはかろうとしている経営者がいる一方で、早くも「脱法行為」が散見されるという。例えば「地下潜伏型」。もともとの工場は人員を大幅に削減したうえで操業を続け、これとは別に会社登録をしていない製造施設をつくってそこに労働者を移し、1日300バーツ未満の賃金で働かせるというやり方だ。失業するぐらいなら最低賃金以下でも働くという労働者がいるため、人は集まるという。

1-7.
 「外注型」というのもある。これは、衣料品の裁縫などで労働者にミシンを自宅に持って行かせたうえで、雇用契約は解除して仕事の外注契約を結ぶ。最低賃金の適用対象外にするという手法だ。

1-8.
 サプライチェーン全般に賃金上昇が影響し、物価も上がり始めている。商務省統計によると、今年6月時点の野菜や果物、肉などの生活に欠かせない食料品の値段が前年比の6~10%と目立った上がり方を示し、低所得者ほど打撃が深刻だ。同センターのキアットアナン所長は「タイ経済を支えている中小企業を弱らせる政策だ。短期間に全国一律で最低賃金を引き上げるのには無理がある。賃金は当面上がらないが、インフレは進む。貧しい労働者が、この政策の被害者になる恐れがある」と指摘する。

4 manolo 2013-09-23 17:00:44 [PC]

出典:『週刊ダイヤモンド』、9/28/2013、(「数字は語る 764円 2013年度地域別最低賃金の全国平均額」川口大司)、p.26

2-1.
 今年の秋から適用される地域別最低賃金について各都道府県の地方最低賃金審議会の答申が出そろい、全国平均額は前年度比15円増の764円となる見通しとなった。10年前の2003年度の全国平均額が664円だから、ちょうど100円分上がったことになる。

2-2.
 生活保護額と最低賃金額の逆転を解消すべく07年に最低賃金法が改正されたことにより、生活保護額が高く設定されている北海道や都市部で最低賃金が大きく上がることになったのだ。03年から13年にかけて生産面の価格指数であるGDPデフレータは約10%ポイント下がっているから、低賃金労働者を多く雇う雇用主にしてみると大幅なコスト増といえる。

2-3.
 最低賃金を引き上げれば賃金の底上げを実現し格差も縮小できるとの見方もあるが、一方で最低賃金の引き上げが技能の低い労働者の職を奪い、格差をさらに拡大させるという見方もある。機械化・自動化を進めたり、事業そのものが立ち行かなくなって廃業に追い込まれたりして雇用が減る可能性があるためだ。

5 manolo 2013-09-23 17:09:24 [PC]

2-4.
 日本学術振興会の森悠子氏と筆者は07年から10年までの政府大規模統計を使って、低技能労働者の代表である10代労働者の雇用への影響を調べてみた。最低賃金が大幅に引き上げられた都道府県では、そうでない都道府県に比べて10代の男女の就業率が低下していることが明らかになった。07年に10代男女の就業率は約17%であったが、最低賃金が10%上がるとその都道府県の就業率は5%低下することがわかったのである。

2-5.
 最低賃金と雇用の関係は諸外国でも大量の研究が存在し論争が続いている。中には雇用への悪影響がないとの報告もあり、日本の政策形成にも一定の影響を与えてきた、しかしここ数年の日本での最低賃金値上げは、低技能労働者の代表である10代の男女の雇用機会を減らしてきた。

2-6.
 この事実を踏まえて、政策担当者は最低賃金引き上げのメリットとデメリットを冷静に比較考量してほしい。また、最低賃金以外の貧困対策を通じた格差縮小策も真剣に検討するべきだろう。

6 manolo 2014-02-05 16:52:28 [PC]


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出典:The Economist "Minimum wages -The logical floor" 12/14/2013, pp.16-17

Moderate mimimum wages do more good than harm. They should be set by technocrats not poloticians

3-1.
 On both sides of the Atlantic politicians are warming to the idea that the lowest-paid can be helped by mandating higher wagaes. Barack Obama wants to raise America's federal minimum wage by 40% from $7.25 to $10.10 an hour, and more than three-quarters of Americans support the idea (see page 34). In Germany, one of the few ig rich-world countries still without a national wage floor, the incoming coalition government has just agreed on an across-the-board hourly minimum of 8.50 Euro ($11.50) from 2015. In Britain, which has had a minimum wage since 1999, the opposition Labour Party is keen to cajole firms into "voluntary" paying higher "living wages". (p.16)

7 manolo 2014-02-05 17:06:19 [PC]

3-2.
 For free-market types, including The Economist, fiddling with wages by fiat sets off alarm bells. In a competetive market anything that artificially raises the price of labour will be curb demand for it, and the first to lose their jobs will be the least skilled - the people intervention is supposed to help. That is why Milton Friedman called minimum wages a form of discrimination against the low-skilled; and it is why he saw topping up the oncomes of the working porr with public subsidies as a far more sensible means of alleviating poverty. (p.16)

3-3.
 Scepticism about the merits of minimum wages remains this newspaper's starting-point. But as income inequality widens and worker's share of national income shrinks, the case for action to help the low-paid grows. Addressing the problem through subsidies for the working poor is harder in an era of austerity, when there are many other pressing claims on national coffers. Other policy options, such as confiscatory taxes, are unattractive.

3-4.
 Nor is a moderate minimum wage as undesirable as neo-classical purists suggest. Unlike those in textbooks, real labour markets are not perfectly competetive. Since workers who want to change jobs face costs and risks, employers may be able to set pay below its market-clearing rate. A minimum wage, providing it is not set too high, could thus boost pay with no ill effects on jobs. (p.16)

3-5. French lessons
 Empirical evidence supports that argument. In flextible economies a low minimum wage seems to have little, if any, depressing effect on employment. America's federal minimum wage, at 38% of median income, is one of the rich world's lowest. Some studies find no harm to employment from federal or state minimum wages, others see a small one, but none finds any serious damage. Britain's minimum wage, at around 47% of median income, with a lower rate for young people, also does not seem to have pushed many people out of work.(p.16)
 
3-6.
 High minimum wages, however, particularly in rigid labour markets, do appear to hit employment. France has the rich world's highest wage floor, at more than 60% of the median for adults and a far bigger fraction of the typical wage for the young. This helps explain why France also has shockingly high rates of youth unemployment: 26% for 15 to 24 year olds.(pp.16-17)

8 manolo 2014-02-05 18:07:43 [PC]

3-7.
 Theory and practice suggest two lessons for governments contemplating setting or changing minimum wages. The first is to ensure that the level is pretty low - say, less than 50% of the median, with lower levels for less productive people such as the young and long-term unemployed. German risks breaking this rule. Its proposed level is, by one calculation, 62% of the median wage. One in six German workers is paid less than that, suggesting that jobs will be lost, especially in the less productive east of the country. Similary the "living wage" which campaigners are calling for in Britain is 20% higher than the minimum wage. That could hit employment. Though America's proposed increase is huge, the minimum wage would still be only about 50% of the median. (p.17)

3-8.
 A second lesson is that politicians should give the power to set minimum wages to technocrats. In Britain, the floor is adjusted annually on the advice of economists and statistitians in the Low Pay Commissions; it has generally advanced gradually. In America, the federal floor is set by politicians and adjusted irregularly in huge increments. That does no favours to American workers or their employees. (p.17)

3-9.
 Finally, governments should remember that minimum wages are palliative. They should distract attention from more fundamental causes of low wages - such as lack of education and skills - and the efforts to address them. (p.17)

9 manolo 2014-07-02 10:31:39 [PC]

出典:『日本版ニューズウィーク』、4/29 & 5/6/2014、「スイスで世界最高の最低賃金?」、p.22

4-1.
 スイスと言えば、高い生活水準と高級時計で知られるが、そこに「最低賃金が世界で最も高い国」という称号が加わるかもしれない。5月中旬に、法定最低賃金を時給22スイスフラン(約2550円)とする提案について国民投票が行われるのだ。スイスには法定最低賃金の制度はないが、働き手の約90%は時給換算で22スイスフラン以上を得ている。それでも22スイスフランの最低賃金を導入すれば、物価の高いスイスで33万人の低賃金労働者(ほとんどが女性)の生活を楽にできると、提案支持派は主張する。

4-2.
 エコノミストや経済界の反対は強い。スイス有数の大企業ネスレの広報担当フィリップ・エシュリマンによれば、同社は既に国内の全従業員に時給22スイスフラン以上を支払っている。打撃を受けるのは、同社の取引先企業だろうと彼は指摘する。

4-3.
 「提案されている法定最低賃金は近隣諸国よりかなり高く、地域や業界ごとの事情も考慮していない」と、エシュリマンは電子メールで取材に答えた。「スイス企業に打撃が及び、ひいては経済全体に悪影響が生じる」 シュナイダーアマン経済相も、提案が通れば、小売り、農業、家事サービスなどの産業に打撃を与え、結果として低賃金労働者を苦しめると主張。国民に反対を呼び掛けている。

4-4.
 最低賃金をめぐり論争が起きているのは、スイスだけでない。米ワシントン州シータックでは最近、最低賃金が全米最高の時給15ドルに引き上げられた。同州シアトルでも同額の最低賃金導入を目指す動きがある。スイスと同様、中小企業が流出するとの理由で反対する声があるが、地元の非営利団体ピュージェットサウンド・セージの報告書によれば、そうした懸念に根拠がないという。昨年、最低賃金を25%引き上げたカリフォルニア州サンノゼでは、むしろ企業の数が3%増えたと、同報告書は指摘している。

4-5.
 スイス国民の意見は割れている。最近のある世論調査では、52%の人が反対票を投じるつもりだと答えている。

10 manolo 2014-07-02 16:33:54 [PC]

出典:『日本版ニューズウィーク』、6/17/2014、「シアトル市が下した最低自給15ドルの「英断」」、p.20

5-1.
 米ワシントン州のシアトル市議会が、最低賃金を現行の時給9.32ドルから破格の15ドルに引き上げる法案を満場一致で可決した。アメリカ最高水準であり、今後7年以内で段階的に導入する計画だ。15ドルの最低賃金は、昨年11月に同州シータック市の住民投票でも承認されている。「1年前、15ドルはプラカードに載る『数字』に過ぎなかった。それが今日、シアトルの10万人の労働者にとっての現実になった」とファストフード店の1年前の大規模ストライキを支援した団体「ワーキング・ワシントン」の広報担当は言う。

5-2.
 法案の支持者は、シアトルは物価が高いだけでなく、現在の最低賃金ではフルタイムに働いても年収約1万9300ドルにしかならないと指摘していた。「低賃金で生活が苦しいという不満と怒りが、ファストフード店のストライキを生んだのだろう」と、ニック・リカータ市議は言う。「少数の人々の手にどれほどのお金が集中しているか、われわれはわかっている。」

5-3.
 マリー市長は最低賃金引き上げを支持し、法案の投票時には議場の後方で見守っていた。有権者も同様で、先月の調査では賛成が74%に達している。
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