アフガニスタン (コメント数:4)
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1 manolo 2014-10-18 22:30:29 [PC]
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出典:『日本版ニューズウィーク』、10/7/2014、「アフガニスタンを待つ10の難題」、タミム・アセイ、pp.30-31
新政権 ガニ新大統領は挙国一致を掲げるが 安全保障から経済、腐敗一掃まで問題は山積
1-1. アフガニスタンの大統領選挙は4月初めの第1回投票以降、不正疑惑で混迷が続いていた。先日やっとアメリカの仲裁で政治的な合意がまとまり、アシュラフ・ガニ元財務相の勝利が正式に発表された。新設される行政長官(首相に相当)のポストには、大統領選でガニと戦ったアブドラ・アブドラ元外相が就任することになった。ガニとアブドラがタッグを組む挙国一致の新政権は山積みの難題に挑まなければならない。経済は停滞し、国庫は底を突き、人々は民族や部族ごとに分断されている。発足早々に着手すべき優先課題は次の10項目だ。(p.30)
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2 manolo 2014-10-18 22:33:26 [PC]
1-2. 【1. 米軍とNATO軍を引き留める】 ガニもアブドラも選挙戦中、アメリカとの安全保障協定とNATOとの駐留軍地位協定に署名すると公約した。将来的にアフガニスタンの政府軍が治安維持の任に当たるためにも、この2つの締結は不可欠だ。これらの協定の下、米軍とNATO軍は兵士の訓練や装備の提供などでアフガニスタン政府軍の強化に協力する。協定締結はタリバンや周辺地域のテロ組織に対するメッセージにもなる。米軍とNATO軍が、引き続きアフガニスタンで治安を守ることを意味するからだ。経済への波及効果も見逃せない。この10年間、駐留軍に物資を納入してきた地元の業者は引き続き受注を確保できる。(p.30)
1-3. 【2. タリバンの攻勢を抑え、麻薬取引を取り締まる】 ガニは大統領を議長とする軍事評議会を作り、政府軍の最高司令官に就くと公約した。大統領選以降の混乱に乗じてタリバンが攻勢を強めており、治安回復は待ったなしの状況だ。一方で、アフガニスタンのケシ栽培はこの2年間で倍増しており、麻薬の密輸組織をたたくことも喫緊の課題だ。(p.30)
1-4. 【3. 腐敗を一掃し外国の援助を確保する】 アフガニスタンの経済は伸び悩み、このままでは今年の成長率はマイナスに転じかねない。危機を回避するには、欧米諸国と交渉して援助を前倒ししてもらう必要がある。それには腐敗を一掃し、行政改革を進め、法の支配を強化しなければならない。国際的な汚職監視団トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数ランキングで、アフガニスタンは世界第3位という不名誉な位置を占めている。汚職の蔓延は経済活動の足を引っ張り、経済の発展を妨げている。ガニとアブドラは、身内や支持者でも不正行為を許さない断固たる姿勢で腐敗体質にメスを入れる必要がある。(p.30)
1-5. 【4. 民族間の融和を実現する】 大統領選で有権者は、自分の帰属する民族や部族を優遇しそうな候補者を支持した。そのため選挙結果に不満を抱いている人も多い。ガニとアブドラは挙国一致体制を打ち出し、単一のビジョンの下に多様な集団をまとめていかねばならない。新たな国家構想を示して国民を統合し、先延ばしにされてきた政治・経済改革を断行すること。これが新政権の最重要課題だ。新政権も派閥争いに明け暮れるようになれば、アフガニスタンの将来はあまりに暗い。(p.30)
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3 manolo 2014-10-18 22:35:20 [PC]
1-6. 【5. 外交路線を転換する】 ハミド・カルザイ前大統領は欧米にはけんか腰の姿勢を取り、パキスタン政府とは激しい言葉の応酬を繰り広げた。おかげでアフガニスタンは欧米にも近隣諸国にも嫌われるようになった。新政権は、アフガニスタンが欧米の同盟国やインドなどの周辺国と結んできた戦略的パートナーシップ協定の精神に立ち戻り、これらの協定に盛り込まれた経済や安全保障上の協力体制を活用すべきだ。(pp.30-31) 1-7. さらに善隣友好をうたった「カブール宣言」を復活させるか、それに代わる周辺国との新たな協力体制を築く必要がある。外交政策を転換するには、各国を精力的に訪問する必要もあるし、相応のレベルの外交チームも必要になる。首都カブールの外務省と世界各地の大使館・領事館に人材と資金を投入し、優れた外交感覚を持つ人材を交渉に当たらせることだ。(p.31)
1-8. 【6. 司法制度を改革し、法の支配を強化する】 カルザイの任期中に最も改革が進まず、ないがしろにされた部門の1つが司法だ。アフガニスタンの国家機関の中で最も腐敗した、最も無能かつ脆弱な機関の1つでもある。司法制度改革は避けて通れない課題だが、カルザイは及び腰だった。なぜか。法の厳格な施行で政治的な盟友を失うことを恐れたからだ。裁判官を罷免する勇気もなかった。カルザイの有力な盟友や、カルザイ政権の柱である軍閥の息がかかった人物が裁判官になっていたからだ。司法制度がまともに機能していないため、中央政府の統治が行き渡っていない地方では、人々はタリバンに公正な裁きを求める。タリバンは支配地域で腐敗と無縁な裁判を行っている。それに劣らぬ制度を早急に整備することも新政府の大仕事だ。(p.31)
1-9. 【7. 憲法を改正し行政改革を行う】 選挙の決着のためにガニとアブドラが取り交わした合意書には、新政権発足後2年以内に憲法改正のためにロヤ・ジルガ(国民大会議)を招集することが明記されている。憲法を改正して首相のポストを創設するためだ。ガニは選挙戦でほかにも憲法改正を行うと支持者に約束した。副大統領を現行の2人から4人に増やすこと、地方自治体の首長の権限を拡大することなどだ。(p.31)
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4 manolo 2014-10-18 22:36:27 [PC]
1-10. 【8. 金融改革を進める】 アフガニスタンの最大手のカブール銀行の経営危機に加え、資金洗浄防止法の成立の遅れでアフガニスタンの銀行のすべてが国際的な取引から外されそうになるなど、金融システムのお粗末さは、破綻寸前の国家経済の息の根を止めかねない。カブール銀行の経営再建は進んでおらず、他の大手銀行の経営にも不安材料がある。金融部門の改革・強化なしには経済の再生、成長は望めない。新政権が強固で明確な意思を示して、中央銀行をはじめとする金融機関の改革に取り組めば、国内だけでなく国際的にもアフガニスタンの金融制度に対する信用が回復するだろう。(p.31)
1-11. 【9. 公務員制度を改革する】 アフガニスタンは若い優秀な人材に恵まれている。彼らは汚職の誘惑に負けない有能な公務員になれるだろう。ガニとアブドラの合意書にあるように、腐敗にまみれた現在の「アフガニスタン公務員制度改革員会」の検証と改革が急務だ。それにより国家基盤が強化され、新政権は他の改革に取り組みやすくなる。(p.31)
1-12. 【10. 中東のイスラム世界と新たな関係を築く】 カルザイは就任当初、中東のイスラム諸国に背を向けた。欧米の同盟国に過度に依存していたためでもあるが、アラブ世界がタリバンにテコ入れしようと考えていたからだ。その後にこうした姿勢の過ちに気付き、関係を修復しようとしたが、うまくいかなかった。新政権の誕生を機にアフガニスタンとアラブ世界の新たな歴史の1章が幕を開けることを期待したい。(p.31)
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