暴力団犯罪 (コメント数:4)
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1 manolo 2013-12-11 03:00:30 [PC]
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出典:『よくわかる憲法[第2版]』、工藤達朗編、5/25/2013、ミネルヴァ書房(V-10.「暴力団犯罪」)pp.166-167
1-1. (【1. 暴力団とは何か】 *暴力団犯罪とは暴力団の構成員によって敢行される犯罪である。ここでいう暴力団」とは、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(平成3年法律第77号、以下、暴力団対策法と略称する)2条2号に定義されているごとく、「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」であるということになる。(p.166)
*データは少し古いが、暴力団犯罪の特徴として、林則清は、①暴力団気質の変化(打算的になった)と組織統制力の低下、②暴力団の縄張り観念の希薄化と流動化、③暴力団がその資金活動の対策や幅を、企業社会や一般的経済取引、さらには市民の日常生活にまで拡げてきていること、④暴力団の拳銃による武装化と所持の日常化、⑤徹底した功利主義が支配する職業的利欲犯罪集団である点に求めている。これらの特徴は、現時点での暴力団犯罪を説明する上でも有用であろう。(p.166)
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2 manolo 2013-12-11 03:05:10 [PC]
1-2. 【2. 戦後の暴力団の動向】 『平成元年 犯罪白書』(1989年)によれば、戦後の暴力団の動向は大きく5つの時期に区分することができるとする。第1期は「戦後の混乱期」(昭和20年代前半)で、この時代は、旧来の博徒・的屋のほかに、大小無数の新興不法集団が続々登場し、露店、闇市、賭博、集団強盗、用心棒等あらゆる分野に進出し、各種利権をめぐり、既存勢力らと武力による激しい対立抗争を繰り返した時代である。第2期は「対立抗争期」(昭和20年代末~昭和30年代末)で、この時代は、朝鮮戦争特需を契機に社会経済の復興が進むに従い、大都市や新興工業都市に盛り場が誕生し、パチンコ、公営ギャンブル、風俗営業、売春、ヒロポン等、新たな利権をねらって多くの新興グレン隊が台頭し、既存勢力の間に抗争事件が続発し、旧来の組織と振興組織が離散集合を繰り返し、各地域において一応の勢力地図ができ上がる時代である。第3期は、「頂上作戦とその影響期」(昭和30年末~昭和40年前半)で、暴力団幹部による不法事犯、資金源犯罪及び武器関係犯罪等の厳重取締りを中心とした暴力団に対する総合的集中取締りが展開された時代である。第4期は、「広域化・寡占化による再編の時代」(昭和40年代後半~昭和50年代前半)で暴力団の組織の復活・再編を図り、大規模広域暴力団が確立していく時代である。そして、第5期は、「世代交代と変動の時代」(昭和50年代後半~平成元年)で、暴力団の世界において、大規模な世代交代が進行中で、新たな覇権をめぐって大きな変動が起こりつつある時代である。(p.166)
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3 manolo 2013-12-11 03:05:46 [PC]
1-3. 【3. 暴力団対策法の制定】 特に、近年において、暴力団犯罪はかなり巧妙になっているが、その巧妙化は、①資金獲得活動のために使用する手段の巧妙化、②資金獲得活動の範囲の巧妙化、③組織維持のための巧妙化等において顕著である。特に、暴力団の資金獲得の範囲が。覚せい剤の密売、賭博、ノミ行為といったいわゆる伝統的なものから、一般市民の間の民事事件にまで介入するようになった。結果として、ついに、平成3年5月15日、暴力団員の行う暴力的要求行為等について必要な規制を行い。暴力団の対立抗争等による市民生活に対する危険を防止するために必要な措置を講ずる等により、市民生活の安全と平穏の確保を図る目的として、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」が公布され、よく平成4年3月1日に施行された(平成5年5月12日一部改)のである。(pp.166-167)
1-4. 本法は、形式も実質上も暴力団対策のみを目的とする、日本で初めての警察庁所管の立法であり、現行の法令では充分にカバーされていない、あるいは現行の法令には抵触しないような形で行われている。グレー・ゾーンにおける*暴力団員の不当な活動を規制してくことにその目的がある。そして、その手段として、行政命令が用いられる点に特色があるのである。(p.167)
*暴力的要求行動の禁止(9条) 指定暴力団の威力を示して行う、以下の違法と合法すれすれの14種類の行為を禁止している。 (1)人の弱みに付け込む金品要求行為 (2)不当贈与要求行為 (3)不当下請等要求行為 (4)みかじめ料要求行為 (5)用心棒料要求行為 (6)高利債権取立行為 (7)不当債務免除要求行為 (8)不当貸付要求行為 (9)不当信用取引要求行為 (10)不当自己株買取事業等要求行為 (11)不当地上げ行為 (12)競売等妨害行為 (13)不当示談介入行為 (14)因縁をつけての金品等要求行為 (p.167)
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4 manolo 2013-12-11 03:07:20 [PC]
1-5. その法的性格にしても、イタリアのような団体規制・組織成立法ではなく、また、アメリカのような立法規制立法でもなく、その中間に位置し、具体的に暴力団を指定し、その指定暴力団の活動のうちでも規制する必要性の高い行為のみに限定するという、二重の絞りをかけている点に徳所があるいえよう。暴力団対策法の概要は、①一定の要求に該当する暴力団を指定し、この指定された暴力団(指定暴力団等)の暴力団員(指定暴力団員)を規制の対象とする、②指定暴力団員が指定暴力団の威力を示しておこなうみかじめ料の要求等の典型的な不当な金品等の要求行為を規制すると共に、都道府県公安委員会は、暴力団の不当な要求行為による被害の回復等のための援助を行う、③対立抗争時の指定暴力団員の事務所の使用及び暴力団への加入の勧誘等の行為について一定の規制を行う、④全国及び都道府県ごとの暴力団追放推進センターを指定し、暴力団員の活動に被害の予防等に資するための民間公益活動の促進を図る等である。(p.167)
1-6. 今後の暴力団犯罪対策の長期的な対策としては、この種の犯罪を醸成しやすい社会環境を除去し、暴力団構成員の強制に力尽くし、さらには暴力団予備軍ともいうべき者を一掃することが必要となるであろう。しかし、当面の対策としては、暴力団の存立基盤である人(構成員)、金(資金源)、物《武器》に対する徹底的な取締りを行い、組織に実質的な打撃を与えることによって。その分断・解体を図る直接的制圧作戦と、暴力団の存在を許している社会基盤を崩壊させ、社会から孤立させるために、関係機関・団体等が連携して、暴力団を社会から締め出す孤立化作戦を並行して押し進めることが肝要であろう。(p.167)
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