2 manolo 2013-09-11 23:33:57 [PC]
1-3. フェミニズムの主張は、男性中心主義批判、家父長制批判、ヘテロセクシズム批判、マルクス主義、ポスト植民地主義などをふまえ、「性の商品化」を複合差別の結果ととらえる方向へも展開しました。それはまず、生産手段をもたない労働者にとって自らの労働力を売って生活の糧を得ることは必要不可欠だ、と指摘します。そして、ジェンダー格差によって生産手段を持つ機会や雇用機会が男性よりも少ない女性、ヘテロセクシズムによって男性の性的欲望を満たすことを期待されている女性、とくに年長者によって反抗の機会を奪われがちな若い女性、人種主義によって社会的排除を受けやすい少数民族の女性などは生き延びるために、自らの「性」を労働力の一部として商品化する機会が増えるというのです。(p.206)
1-4. 2. 「セックスワーク」概念の登場と展開 ここで、「性の商品化」を「性労働(セックスワーク)」の側面からとらえる考え方が出てきます。この言葉が日本で定着したのは、1993年に『セックスワーク - 性産業に携わる女性たちの声』が邦訳されたことがきっかけでしょう。以来、性労働をする人びとの立場に立って、「性の商品化」にかかわる仕事を「生き延びるための労働」として社会に認めさせ、セックスワーカーの労働者のとしての権利を獲得しようという議論も行われてきました。現役セックスワーカーの意見も公表され、この議論に大きな影響を与えました。そこには、複合差別から生じる搾取や暴力やスティグマを克服する力と手段を、その現状を生きる当事者こそが得るべき、発揮するべきだ、という理念と希望が込められています。(pp.206~207)
1-5. つまりセックスワークの議論は、非常に立場性の強い当事者中心主義の議論です。そしてこの点において、男性中心主義の社会を女性というマイノリティの観点でとらえなおし、さまざまなジェンダー・イシューについて「当事者のわたしの経験は違う」「わたしの経験を聞け」「わたしの経験を(政策などに)反映させろ」と抗議してきたフェミニズムと親和性が高いのです。ですから、「性の商品化」に反対する議論とセックスワークを認める議論とは、対立するところもありますが、どちらが勝つか負けるかして、すんなり決着がつくような単純な二項対立の議論ではありません。(p.207)
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