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特定秘密保護法7 manolo 2013-10-24 01:21:00 manolo
宗教と中絶3 manolo 2013-10-17 19:16:23 manolo
チュニジア4 manolo 2013-10-17 09:05:32 manolo
肥満3 manolo 2013-10-10 18:25:37 manolo
中国と宗教6 manolo 2013-10-04 02:51:08 manolo
アフリカの民族紛争5 manolo 2013-10-03 01:19:46 manolo
銃規制9 manolo 2013-09-26 00:14:41 manolo
イスラム教と民主主義8 manolo 2013-09-23 12:27:12 manolo
性の商品化3 manolo 2013-09-11 23:35:59 manolo
違法薬物19 manolo 2013-09-11 23:10:45 manolo
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1 manolo 2013-10-24 00:57:33 [PC]


289 x 175
出典: MSN産経ニュース、8/27/2013(「秘密保全法案の概要判明 公務員に最高懲役10年」)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130827/plc13082722430021-n1.htm

1-1.
 政府が国の機密情報を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込む「特定秘密保護法案」の概要が27日、分かった。「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分類に関する事項のうち「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」に指定する。特定秘密を漏らした国家公務員らには最高で懲役10年を科し、厳罰化を図る。政府は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を年内に発足させる方針。米国のNSCなどと機密情報の共有を活性化させるためには秘密保全法制の強化が不可欠としている。

2 manolo 2013-10-24 00:59:08 [PC]

1-2.
 各府省の大臣らは、特定秘密の対象を指定、秘密を取り扱う国家公務員の範囲を定める。罰則は「日米相互防衛援助協定(MDA)等に伴う秘密保護法」の最高刑が懲役10年であることを踏襲した。民間人に対しても、特定秘密を得るために(1)あざむき・暴行・脅迫(2)窃取(3)施設侵入(4)不正アクセス-の行為をすれば最高で懲役10年。共謀や教唆、扇動も処罰対象となる。一方、言論・報道の自由や国民の知る権利が損なわれるとの懸念もあるため、法案には拡大解釈や基本的人権の侵害を禁じる規定も盛り込む。

1-3.
 安倍晋三首相は秘密保護担当相を森雅子少子化担当相に兼任させる。政府は10月召集予定の臨時国会に法案の成立を目指す。自民党も27日、「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」を開き、法案を議論した。

3 manolo 2013-10-24 01:09:02 [PC]

出典:朝日新聞、10/19/2013、(「耕論 何が秘密?それは秘密」)p.17

2-1.
 あれも秘密、これも秘密。国家が秘密と指定すれば、国民は何が秘密かもわからない。そんな特定秘密保護法案が国会に提出される。秘密と社会、そして権力とは何かを考える。

2-2. 【塚越健司さん 専修大非常勤講師、「自由との境界線、監視せよ」】
 権力が情報を統制し、自国民を監視するのは世界の潮流です。米国の国家安全保障局(NSA)がテロ対策でネット上の個人情報を極秘のプログラムで収集したうえ、協力要請されたグーグルやフェイスブックは要請の事実さえも公表できないことが明るみに出ました。テロ対策の必要性を理解する米国民でさえ、「ここまでやるのか」という衝撃を受けています。ただしオバマ大統領が、「安全保障とプライバシーの両立はできない」と語ったように、NSAは事件を既成事実にして、監視を続ける可能性があります。

2-3.
 国会に提出される特別秘密保護法案は、秘密に指定した情報を秘匿する期間を上限5年間から何年でも更新できる。30年超の更新は内閣の承認を義務づける方向ですが、社会学者の宮台真司さんが、「鍵の掛った箱の中の鍵」と指摘したように、政府が何を秘密にするか、いつ開示するかの鍵を握る以上いくらでも恣意的に操作できます。

2-4.
 報道の自由や取材の自由への配慮は明記するようですが、たとえ法律にどんなに政府を縛るルールを書き込んだとしても実効性は担保されないでしょう。漏洩に関わった疑いをかけられれば、公務員や取材記者が監視され、取材を受けた政治家にも跳ね返ってきます。成立すれば法律を根拠に官僚が大きな権力を握る事実に、国会議員が気づくかどうかですが、法案は成立する可能性が高いでしょう。

4 manolo 2013-10-24 01:14:24 [PC]

2-5.
 政府がどこまでを秘密に指定し、どこまでを公開するかという慎重な議論とともに国民的な合意と権力の監視が必要です。NSAの問題が提起した自由と安全保障の境界線をどこに引くかという議論です。NSAの問題を告発した中央情報局(CIA)の元職員スノーデン氏は、もともと米軍に自分ら志願した人物です。政府の不正行為に自分が加担することで「米国本来の姿ではない」と思った。国を愛するがゆえに、政府の不正をただすために告発に踏み切った。気概のある自律した人物の覚悟が、逆説的に米国の民主主義がまだ機能していることを示しました。自分たちが権力をつくりあげている思想が根付いているから、国民も「気を付けないと権力は暴走する」とわかっているのです。

2-6.
 日本では国民も政府も主体性がなく、誰かが決めてくれればよいという集団主義的な姿勢になりがちです。でも社会心理学者の山岸俊男さんは、日本人はひとたび集団を離れれば、米国人以上に個人主義を重んじると指摘している。集団主義は社会環境に原因があるわけです。明治維新を遂げた人々が西洋列強の干渉を拒み、自律を志向したのは当時の世界情勢の影響もあった。現代の日本も環境の変化に対応し、集団主義から自律した社会へと変わる可能性が十分にあります。

2-7. 【原田宏二さん 元北海道警釧路方面本部長、「情報収集、無制限に広がる」】
 あちこちの大学に招かれて、「監視社会と警察」といったテーマで講義をしています。「みんなが使っているスマホの通信履歴なんて、警察は簡単に取れるんだよ」と話すと、学生たちはびっくりする。警察のことをよく知らないし、ふだん興味もないでしょうからね。

2-8.
 コンビニの監視カメラに映った映像が「容疑者」としてメディアで流れます。あれ、警察はちゃんと裁判所から令状をもらったうえで提出させていると思いますか?実際は「捜査関係事項照会書」を使っているはずです。紙っぺら1枚の任意捜査だから断ることもできます。しかし警察が怖いのか、協力する。すでに金融機関の預金情報や顔の画像データなどが、どんどん警察に集まるような社会になりつつあります。

5 manolo 2013-10-24 01:17:38 [PC]

2-9.
 そこへ今回の法案です、秘匿の対象とされる分野は、防衛と外交だけではありません。警察が関わる「特定有害活動の防止」と「テロ活動の防止」は私たちに身近な問題です。刑事警察は、具体的な事件を摘発するために捜査をしますね。ところがスパイやテロの対策を受け持つ警備・公安警察は、具体的な事件性が見える前の段階で「そこまでやるか」というほどの情報収集をする。罰則も付く秘密保護法はそれにお墨付きを与えかねません。テロ対策を理由に、個人方法の収集が無制限に広がる恐れがあります。例えば、原発はテロに狙われる恐れがある、として「特定秘密」扱いになる可能性が高い。すると、原発関連の情報公開請求をするような市民やオンブズマンが情報収集の対象になる可能性もありますよ。

2-10.
 私が9年前、北海道警が裏金をつくり、幹部が私的に流用していた実態を告発しました。そのため、尾行されたこともあります。たぶん公安でしょう。もし秘密保護法があったら会計書類も「テロ対策」に関連するとして、私は摘発されていたかもしれませんね。「特定秘密」の範囲は、警察トップがいくらでも恣意的に決められますから。

2-11.
 かつて警察の中で警備・公安は花形でした。ところが重要な監視対象だった過激派などは次々と衰退していった。そんなときに起きたのが、2011年の米同時多発テロです。「国際テロ対策」は警備・公安にとって錦の御旗になり、インターネットなどの監視システムが徐々に構築されていきました。そしてついに、秘密保護法案が姿を現した。その先にある改憲の一里塚だと私は見ています。いま着々と、自由のない社会に向かっているんじゃないでしょうか?市民はあまりに無関心で、無防備に思えます。権力に向かうべきメディアの責任も大きい。自らの使命の自覚が足りないから、こんな法案が堂々と出てくるのです。

6 manolo 2013-10-24 01:20:03 [PC]

2-12. 【中井洽さん 元国家公安委員長、「役人の暴走、大臣気付くか」】
 鳩山内閣の国家公安委員長をしていた2010年3月来日した米国のナポリターノ国土安全保障長官が「日本はなぜ秘密保護法を制定しないのですか。米国と日本との情報交換が深まりません」と迫られた。私は「僕個人は賛成ですし、必要があると思っています。政権公約には書いてあるのでやらなければいけません」と答えました。

2-13.
 羽田内閣の法相の時に、法務省の職員が一定期間、米国の人工衛星による情報を首相官邸に届けていました。なぜ「法務省の職員がやるのか」と問いただしたら、「米国からもたらされた情報を公にしてしまった政府の職員がいたため担当を外した。以後、正規ルートを迂回させて首相に情報を届けることになった」という説明でした。そのくらい日米にとって、ナーバスな問題なんです。

2-14.
 10年の尖閣諸島沖の漁船衝突事件で海上保安庁が撮影したビデオを公開するかも問題でした。私は衆院予算委員長に就任したばかりで、当時の仙谷由人官房長官が「ビデオの取り扱いは慎重にしてほしい」と頼んできました。鈴木久泰海上保安庁長官も「海保がビデオをどのように撮影しているのか、角度などから中国側にわかられてしまう」という。これは理屈として通っていると思いました。しかも事件は中国人船長を処分保留で釈放しただけで刑事手続きが終わっていなかった。事件の証拠を公判前に公表するのは問題があると判断し、委員会を非公開にしました。

2-15.
 ところが、鈴木長官が「ビデオは3本しかなく、金庫に保管している」と説明したのに実際には職員1万人が見られる状態にあった。結局ユーチューブに投稿された。海保には秘密保持のルールがないのと一緒です。法整備は必要だが、秘密に触れる職員は地方の警察官を含めると10万人規模になってしまうのではないか。すべてを法案で統制できるか疑問です。

7 manolo 2013-10-24 01:21:00 [PC]

2-16.
 役人の恣意的な運用の懸念もあります。週1回の公安委員会で事務局が大臣に説明に来る文書には、「部外秘」「記者会見での発表禁止」と指定してあった。私は「誰が決めているのか。君ら部下が上司に命令するとは何事だ」と文句を言うと、翌週から「部外秘でお願いします」と直してきましたが。

2-17.
 法案では、大臣が秘密を指定する仕組みになっていますが、実際には担当部署が勝手に決めてしまう可能性が高い。大臣に見せもしない文書もあるでしょう。拉致担当相として日朝首脳会談のやりとりを記した文書を見たいといったら外務省から拒否されたこともある。コロコロ代わる大臣に全部秘密を見せるのかというのが役人の本音ですよ。よほど大臣が目を光らせないといけなくなるでしょう。
 
1 manolo 2013-10-17 19:11:50 [PC]


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出典:朝日新聞、8/13/2013、(「世界発2013 イラン、闇の中絶横行 未婚禁ずるイスラム、現実とずれ」朝日新聞、p.6

1-1.
 中東イランで未婚女性の人工中絶がとまらない。イスラム教の戒律に基づけば、結婚していない男女の交際は「御法度」だが、自由恋愛に目覚めた若者たちの意識を縛れなくなっている。宗教体制が求める理想との溝は広がるばかりだ。「両親にも親友にも相談できず、自殺も考えた。宗教が強制されるこの国を恨んだ。」 電子メールを通じて取材に応じた首都テヘランの女性(25)は、大学生だった3年前、望まない妊娠をした。相手は同級生。「一緒に勉強しようと彼の家に誘われた。酒を飲み、音楽に合わせて踊るうちに関係を持ってしまった」。2人とも避妊の知識はなかった。

2 manolo 2013-10-17 19:14:24 [PC]

1-2.
 イスラムの教えを国の礎とする同国では、夫婦以外の性行為は「姦通罪」に問われかねない。既婚者の場合は石打ちによる死刑、未婚者ならむち打ちが科されることもある。この女性は中絶手術を受けるため15の病院を訪れたが、どこも断られた。法律で、中絶手術は母体に悪影響がある場合に限られているためだ。悩んだ末、テヘラン市内の薬の闇市場で密売人から10粒の中絶薬と注射薬を買った。代金の500万リアル(約2万円)は交際相手がアルバイトで稼いだ。「錠剤を飲み、自分で静脈に注射した。3日間、出血がとまらなかった」。病院に駆け込み、ようやく手術を受けることができた。

1-3.
 昨年10月、別の男性と結婚したが、子供に恵まれない。「中絶がいけなかったのか」と悔やみつつ、街中でデートする未婚のカップルを取り締まる警察にも怒りが沸く。「男女に家の中で会えと勧めているようなもので、不健全な関係を助長している。逆効果だ」

1-4. 【年8万件、8割違法】
 研究者によると、イランでは年間8万件の中絶手術が行われ、その8割は未婚女性を中心とする違法なもの。薬による流産などを含めると、人工中絶の件数はさらに増えるという。無免許で手術を引き受ける者も多く、技術の未熟さから不妊になる女性も少なくない。その場合、女性は泣き寝入りするしかない。毎月5~6人の未婚女性を手術するというある産科医は取材に、「女性と生まれてくる子どもを不幸にさせないためだ」と弁解した。

1-5.
 背景には、未婚女性が出産しても出生届が受理されず、子供が無国籍扱いになる現実がある。イスラムの教えは家族関係を重視するため、イランではそもそも未婚女性が出産する事態は想定されていないのだ。中絶できなかった未婚の親は最終的に、赤ん坊を捨てたり、孤児院に預けたりするしかない。テヘラン北部のアメネ孤児院では生後数か月から7歳まで約300人が暮らす。その7割は、夫婦でない男女の間で生まれたという。

3 manolo 2013-10-17 19:16:23 [PC]

1-6. 【教育改革で恋愛増え】
 イランには伝統的に見合い結婚が主流だったが、1979年のイラン・イスラム革命で成立した現体制は教育を推進。大学の学部・大学院生の6割以上を女子が占めるようになり、女性の社会進出が進むと、恋愛結婚も徐々に増えてきた。街中でのデートは認められていないが、無視するカップルもちらほら見かける。「教え子のほぼ全員が誰かと付き合い、ひそかに同居する学生も増えている。親世代と違い、伝統や宗教にとらわれず自由奔放に生きる願望が強い。」 規制はあるが、インターネットや衛星放送で欧米の生活習慣が入り込んだことも影響しているようだ。

1-7.
 だが、宗教支配という「建前」が政府の手足を縛る。ハミドレザ・シルモハンマディ医師(42)によると、学校の性教育は「結婚するまで異性と付き合ってはならない」といった宗教の価値観に基づく話をする程度。具体的な内容は「タブー」とみなされ、踏み込めないのが現状だ。

1-8.
 8月、大統領に就任したロハニ師は「国民の自由を取り戻す」と訴え、宗教色を嫌う若者たちの圧倒的な支持を得た。シルモハンマディは「性の問題を『タブー』として放置するのではなく、専門家のチームを立ち上げ、教育分野でも現実を見据えた対策を取ってほしい」と注文をつけた。

【キーワード】<イスラム教と男女交際>
イスラム世界では親族以外の男性と女性の接触は制限されており、未婚男女の自由交際はあり得ないものとされる。イランでは公の場での「男女隔離」が徹底されており、小学校から高校まで別学。大学は共学が基本だが、男女別授業を導入するところもある。
 
1 manolo 2013-10-17 08:30:17 [PC]


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出典:朝日新聞、10/17/2013、(「世界発2013 チュニジア政治 混迷」)p.10

1-1. 【相次ぐ暗殺 進まぬ憲法制定】
 「*アラブの春」の先駆けとなったチュニジアで、政治の混乱が続く。革命後、イスラム系政党が政権を主導するが、リベラル派などの野党は民主化の遅れや治安悪化を批判し、デモが続発。野党党首の暗殺事件も混迷に拍車をかけ、新しい国の基盤となる憲法制定が進んでいない。

*チュニジアと「アラブの春」
2011年に中東で広まった「アラブの春」は、チュニジアで果物の無許可販売の摘発に抗議し青年が焼身自殺したことが発端となった。約23年間独裁を続けたベンアリ政権は同年1月に倒れ、10月に制憲議会選挙を実施。穏健派イスラム政党ナハダが第1党となった。

2 manolo 2013-10-17 08:44:12 [PC]

1-2.
 7月25日朝、チュニス郊外の住宅地に銃声が響いた。世俗派野党党首のムハンマド・ブラヒミ議員が自宅を出たところで襲われ、銃弾11発を浴びて死亡した。2人組の男がバイクで近づき射殺するという手口は、2月上旬に別の野党党首が暗殺された事件と同じだった。被害者が最大与党のイスラム穏健派「ナハダ」を批判する急先鋒だったことも共通している。野党支持者らは「ナハダが黒幕だ」として一斉に反発。以来、最大労組のチュニジア労働総同盟(UGTT)などの呼びかけで、全国的に数千人規模のデモやストが相次いだ。

1-3.
 チュニジアは、革命後の民主国家の基盤となる新憲法を起草する段階にある。与野党でほぼ合意にこぎつけていたが、7月の暗殺事件をきっかけに制憲議会で野党の50人以上が欠席し、議長が議会を停止。9月中旬に再会いしたが、野党の欠席は続き、新憲法制定に向けた動きが止まっている。政治空白は2月の暗殺事件後にも生じていた。与野党対立で政局は混乱し、ジェバリ前首相が辞職。ラアレイエド現内閣の発足に約1カ月かかった。政府は野党に配慮し、ナハダに近いとされるイスラム厳格派の取り締まりを強める姿勢に転換。9月中旬から暗殺の再発防止に向け、野党関係者十数人に護衛をつけた。

1-4.
 ナハダと野党側は今月5日、今後3週間かけて協議し、その後に内閣辞職することで合意。後継内閣が1カ月以内に憲法起草を終え、大統領選と議会選挙の日程も確定させるという。

3 manolo 2013-10-17 08:58:04 [PC]

1-5. 【国民の政争疲れに危機感も】
 野党の反発は、暗殺事件や過激派対策の遅れだけにとどまらない。報道関係者の逮捕など言論弾圧に危機感を持ち、女性の権利を否定する動きが強まることも警戒する。経済の低迷も政権批判に拍車をかける。国立統計局などによると、昨年の失業率は革命前の10年と比べ、約4ポイント高い16.7%だった。4月にナハダを離れ新党結成を進めるマノール・ムハンマド・ダカンダローニ氏は「ナハダは(旧ベンアリ政権下の)亡命者やかつての政治犯の集まりで、国民の日常生活が分かっていない」と批判する。

1-6.
 ただ、民間調査機関が9月中旬に発表した世論調査では、内閣総辞職に反対は29%で、賛成の23%を上回った。議会の解散にも48%が反対と答えた。連立与党の左派「エタカトル」のロブナ・ジビリ議員は「本当の危機は暗殺ではなく、議会が憲法制定という任務を2年も果たせていないことだ。国民は政争に疲れている。一刻も早く新憲法を制定するべきだ」と訴える。

1-7.
 チュニジアは、内戦となったリビアやシリア、デモ制圧で大量の死者が出たエジプトと違い、比較的穏やかな民主化のプロセスを歩む。多数派のイスラム勢力が世俗・リベラル派と協力する形で、民主化のモデルになれるか注目される。政治家アナリストのサラヘディン・ジョルシ氏は「ナハダは民主主義を知らないが、それは野党も同じ。時間をかけることで、議論が深まっているとも言える。憲法改正を急いで軍のクーデターが起きたエジプトのようにはならない」と話している。

4 manolo 2013-10-17 09:05:32 [PC]

1-8. 【何より対話が大切 制憲議会副議長に聞く】
 制憲議会副議長でナハダ幹部のメヘリジア・ラビディ氏(49)が、朝日新聞のインタビューに応じた。

- 野党は内閣総辞職がなければ新憲法に同意しない、との主張です。
新憲法は2、3の相違点を除いて出来上がり、7月の暗殺事件の前までは野党は納得していた。何より対話をすることが大事だ。
- 男女平等を否定し、言論弾圧をしているとの批判があります。
(女性の)私を見れば、ナハダが男女平等を支持しているのは明らかだ。ジャーナりストは報道によって逮捕されたのではなく、別の訴追理由がある。司法は独立している。政府が介入することはない。
- ナハダに失策はありますか。
経済や貧困対策など多くを約束し、国民に期待させすぎたかもしれない。もちろん一部は実現したが、たった2年では限界もある。
 
1 manolo 2013-10-10 17:30:54 [PC]


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出典:『よくわかる健康心理学』、森和代他編、8/20/2012、ミネルヴァ書房(「IV-6. 肥満」、岸太一)pp.100-101

1-1. 1. 肥満とは
 厚生労働省による平成21年国民健康・栄養調査結果の概要によれば、成人全体の肥満者の割合は、男性30.5%、女性が20.8%であると報告されています。「健康21」の目標値には20-60台の男性肥満者を15%以下に、40-60代の女性の肥満者を20%以下にすることが挙げられていますが、男性肥満者の推移は増加傾向をたどり、目標値に届いていません。女性の肥満者は減少傾向を示していますが、目標は達成されていません。(p.100)

2 manolo 2013-10-10 18:03:33 [PC]

1-2.
 ところで、「肥満」とはどういう状態をいうのでしょうか?。肥満とは「体脂肪が必要以上に多く蓄積された状態」といえます。体脂肪がどれだけ体に蓄積しているかを示す体脂肪率によって肥満の判定が行われますが、現在は男性で20%、女性で30%以上の体脂肪率の状態を肥満と呼んでいます。しかし、体脂肪率を直接測るのは難しいので*BMIを肥満の判定に用いるのが一般的です。日本肥満学会ではBMI25以上を肥満としており、さらに肥満を**4段階に分けています。肥満の原因としては、高カロリーの食事と運動不足によるカロリー収支のアンバランス(摂取カロリー>消費カロリー)がまず挙げられますが、遺伝的要因も指摘されています。(p.100)

*BMI
「Body Mass Index(ボディ・マス・インデックス)」。国際的な体格の判定方法。算出方法は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割る。(p.100)

**肥満症
BMI125以上の肥満者のうち、肥満に起因または関連する健康障害を合併しているか合併が予測され、減量が必要な病態である場合、肥満症と診断される。肥満に関連する健康障害には、2型糖尿病、高血圧、脳梗塞、脂肪肝などが含まれる。(p.100)

1-3. 2. なぜ肥満は問題なのか
 これまでの多くの研究から、肥満は生活習慣病を始め、さまざまな病気を引き起こす「危険因子」であることがわかっています。たとえば、2型糖尿病は肥満との関連が指摘されており。肥満の人は普通体重の人に比べて、インスリンのブドウ糖(血糖)分解能力が低下していることが明らかになっています。また、肥満は「脂肪という名の荷物」を抱えている状態ですから、階段の昇り降りなどの際に関節にかかる負担は大きく、その結果腰痛を引き起こしたり、関節が変形したりします。その他にも脳梗塞、冠動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群、月経異常などの危険因子となっており、肥満はさまざまな病気を引き起こす要因なのです。(pp.100-101)

参考資料「肥満の判定基準(日本肥満学会)」
BMI         判定        WHO基準
18.5 未満       低体重      Underweight
18.5以上25未満  普通体重    Normal range
25以上30未満   肥満(1度)    Preobese
30以上35未満   肥満(2度)    Obese class I
35以上40未満   肥満(3度)    Obese class II
40以上        肥満(4度)    Obese class III
(p.101)

3 manolo 2013-10-10 18:25:37 [PC]

1-4. 3. 肥満を解消するには
 このような肥満は私たちの健康にとって非常に大きな問題です。そのため、さまざまな肥満解消のための取り組みが考え出されてきました。しかし、肥満解消はなかなか難しく、どのような方法を用いたとしても、体重を減らし、5年以上その状態を維持している人は5%ほどしかいない、と言われています。肥満予防教育や適切な食習慣、運動習慣の形成などによって、適正体重を維持し、肥満を防ぐということがまず大事です。(p.101)

1-5.
 肥満の状態にある人が体重を減少させるためには行動療法や認知行動療法といった方法が有効であるとされています。これらの方法では、①現在の状態(体重、BMI、食習慣、運動習慣)の把握、②具体的な目標の設定(例:1年後の体重をOOkgにする)、③食事(摂取カロリーの制限)および運動(消費カロリーの増大)、④定期的なチェック(例:決められた日に体重測定を行う)、といった手続きを基本として、それぞれのケースに応じた*さまざまな技法を用いて体重の減少を図ります。まずは現状を把握して、問題のある生活習慣を改善する、というのが肥満解消の基本的枠組みになります。

*肥満解消の技法例(一部)
名称       具体的内容の例
オペラント強化 体重が減少したらゲームができる
自己監視    毎日の食事、運動、体重の記録をつける
反応妨害法   食べたくなったときに食事以外の行動をとる 
         (読書、軽い運動など)
ソーシャル   低カロリーの食事を作ってもらう、一緒に運動
サポート     をする
刺激統制法   必要な時以外にはスーパーやコンビニに行かない
(p.101)

1-6.
 なお、肥満解消に向けての取り組みを行う際にはいくつかの注意があります。それは、①減量の必要性をきちんと認識する(意義・目的の明確化)、②食事の改善と運動の両方を行う(片方だけではあまり効果が期待できない)。③ゆっくりではあるが確実な減量を心がける(半年で10%程度)、④長期間にわたって遂行可能な内容(食事管理・運動)にする、といったものです。これらの点に注意しながら、無理のない計画を立てて体重を減少させることが挫折を防ぐ意味でも重要になります。(p.101)
 
1 manolo 2013-10-04 02:42:15 [PC]


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出典:『宗教と現代がわかる本2009』平凡社、渡邊直樹責任編集、3/18/2009、(「現代中国における政治と宗教」興梠(こうろぎ)一郎)pp.94-97

1-1.
 改革開放三〇年をへて、中国は貧しい共産主義の国から、GDP四位、貿易額三位、外貨準備高一位の堂々たる経済大国へと躍進した。昨年(二〇〇八年)八月には、長年の悲願であるオリンピック開催も達成した。一大スペクタクルとでもいうべき豪華な開会式は、まさに「中国の世紀」を謳歌するかのようであった。(p.92)

1-2.
 だが、台頭する中国に向けられた世界のまなざしは、驚嘆と不安が織り交ざったものである。一番の懸念材料は、一党支配体制だ。中国には、「経済は開放、政治は閉鎖」という二つの顔がある。平和の祭典・オリンピックの年に、チベット暴動(三月)と新疆(しんきょう)での連続爆破事件(八月)が相次いで起きたことは、その二面性をことさら際立たせることになった。いずれも、チベット仏教とイスラームという宗教、そしてチベット族とウイグル族という民族がからむ複雑な問題である。(p.92)

2 manolo 2013-10-04 02:43:18 [PC]

1-3. 《一党支配体制下における宗教統制》
 チベット暴動で、略奪や放火の被害にあった商店の約七割は、漢民族経営のものだった。民族矛盾の根深さが見てとれる。チベット自治区には、漢民族が大量に流れ込み、散見されるデータによれば、一九九八年の七万人から二〇〇〇年には一六万人に急増した。ラサの場合、すでに四割近くは漢民族が占めるという。青蔵鉄道の開通で、この流れはさらに加速する可能性がある。(p.92)

1-4.
 宗教面でも亀裂が深い。チベット人が崇拝するダライ・ラマ一四世は、半世紀もインドに亡命したままで、中国共産党と和解していないのである。前回のチベット暴動(一九八〇年代末)以後、共産党は「愛国主義教育」のもと、徹底したダライ・ラマ批判を展開し、同時にチベットの開発に着手するという「アメとムチ」の政策をとってきたが、ふたたび暴動が勃発した。今回の暴動後、愛国主義教育が最強化され、チベットの共産党機関紙では、次のような批判キャンペーンが繰り広げられた。(pp.92-93)

1-5.
 「僧侶を教育し、ダライの本当の姿を認識させ、仏教の比丘(びく)ではないと認識させる。ラマの衣を着て、仏教の看板を掲げ、破壊・略奪・放火行為を働き、祖国分裂の罪悪行為を働く政客だ。偽りの外観にだまされてはならない。ダライと断固闘争し、愛国主義教育を強化する」(『西蔵日報』二〇〇八年四月五日)(p.93)

1-6.
 一方、新疆ウイグル自治区では、オリンピック開幕直前の八月四日、カシュガルで国境警備隊にトラックが突入し、一六名が殺害された。一〇日にも、クチャ県で武装集団によってショッピングセンターや政府機関が爆破される事件が起きている。メンバーは全員ウイグル族で、若い女性が多数参加していたという。ここでも、民族と宗教は危険な火種である。(p.93)

3 manolo 2013-10-04 02:44:59 [PC]

1-7.
 チベット同様、新疆においても、宗教は厳しい国家統制下に置かれている。「新疆ウイグル自治区宗教事務管理条例」が「宗教教職人員は、中国共産党の指導と社会主義制度を擁護し、祖国統一と民族団結を守らなければならない」(第八条)と規定するように、宗教は、共産党体制を脅かす存在であってはならず、民族独立を喚起してはならないというのが揺るがぬ大原則なのである。(p.92)

1-8.
 したがって、「一切の宗教活動の場所は、県レベル以上の人民政府宗教事務部門に申請登録しなければならない」(同第一三条)のであり、勝手に活動することは許されない。メッカ巡礼も統制の対象であり、中央政府の「宗教事務条例」には、「聖地巡礼も、勝手に組織してはならない」(第四三条)とある。(p.93)

1-9.
 一党支配体制下においては、「宗教的権威」は「政治的権威」に服従せねばならない。たとえば、ダライ・ラマ一四世は、チベットでは観音菩薩と崇められる宗教的権威であり、中国共産党という政治的権威と矛盾する。チベット自治区の共産党トップ・張慶黎(ちょうけいれい)党書記が「共産党こそが、民衆の本当の生き菩薩だ」と述べたことがあるが、これこそ政治的権威側の「本音」である。中国の最高指導者・胡錦濤党総書記も、宗教に関する談話(二〇〇七年一二月)で、「宗教界人士、信徒大衆が中国共産党の指導と社会主義制度を擁護するように努力するべきだ」と強調している。「中国共産党の指導」を受け入れることが、宗教の存在が許される大前提ということだ。(pp.93-94)

1-10.
 また、宗教は「国策遂行」という役割も期待されており、胡総書記は「宗教界人士と信徒大衆を、党と政府の周囲にしっかりと団結させるよう努力」し、「社会主義現代化の推進を加速するために奮闘せねばならない」と述べている。(p.94)

4 manolo 2013-10-04 02:47:21 [PC]

1-11. 《現行の宗教政策は、大きな足かせに》
 かつて、毛沢東時代の「文化大革命」では、寺院や教会が破壊され、信者が迫害されるなど、宗教は壊滅的打撃を受けた。その後、鄧小平の「改革開放政策」下で見直しが行われ、今は「宗教界と信者大衆に経済社会の発展促進における積極的作用を発揮させる」(胡総書記)という方針に変わっている。ただ、「法に従って宗教事務を管理する」「我が国の宗教界に、愛国愛教、団結進歩、社会奉仕の優良な伝統を発揮するよう激励し、彼らが民族団結、経済発展、社会調和、祖国統一に貢献することを支持する」(同総書記)という主張が示すように、あくまで共産党政権の「政治的権威」が「宗教的権威」の上に立つという原則は揺らいでおらず、それは、胡総書記の次の指示を見ても明らかだ。(p.94)

1-12.
 「宗教教職人員隊伍の建設を強化すべきだ。養成、選抜、使用面に力を入れねばならない。政治面で頼りになり、学識面で造詣があり、品徳面で民衆が納得する資格のある宗教教職人員隊伍をつくらねばならない。愛国宗教団体の積極的作用を発揮させ、彼らが自己養成能力を強化できるように助け、指導し、法や規則によって、自分を管理できるようにし、信者大衆の願いを反映し、宗教界の合法的権益を擁護すべきである。」(p.94)

1-13.
 もっとも、こうした共産党政権の政治的思想は、民衆の信仰心とぶつかり、軋轢を生み出している。たとえば、キリスト教教会には、官製「*三自(愛国)教会」とは別に、地下教会と呼ばれる「**家庭教会」が存在するが、これは共産党にとっては脅威にほかならず、しばしば取締りの対象になるのだ。(p.94)

*三自(愛国)教会
中国政府が指導する教会。プロテスタントには、中国基督教三自愛運動委員会と中国基督教教会があり、カトリックには、中国天主教愛国会、中国天主教教務委員会、中国天主教教団がある。1949年に中華人民共和国が整理するとプロテスタントとカトリック組織は、共産党の指導下に置かれ、国外と関係を絶った。「三自」とは、自治(事務は国外の宗教団体から独立)、自養(財務は、独立)、自伝(中国本国の伝道師が布教)を示す。中国では三自(愛国)教会以外に家庭教会(地下教会)と呼ばれる非公認の教会が民間に存在する。(p,93)

5 manolo 2013-10-04 02:49:57 [PC]

**家庭教会
三自(愛国)教会以外のキリスト教教会。中国ではプロテスタントとカトリックの教会は三自(愛国)教会に加入し、宗教事務局の管理と指導を受けるよう規定されている。それに抵抗する信者が、家庭など未登録の場所で礼拝を行っており、家庭教会(あるいは地下教会)と呼ばれている。これは非合法であり、取締りの対象になるが、地域によって対応が異なる。浙江省温州市などでは、家庭教会の勢力が強く、当局も集会を阻止しにくくなっているが、他の地方では、厳しい取り締まりが行われ、信者が身柄を拘束される事件が起きている。また名義上は三自(愛国)教会でも政府と距離を置く「独立教会」も温州市などに出現している。(p.92)

1-14.
 一九九九年、浙江(せつこう)省温州市で非公認教会が取り潰され、二〇〇一年には、湖北省荊州市で「華南教会」関係者17名が有罪判決を受けたと海外で報じられている。二〇〇五年には、河南省洛陽市の「家庭協会」で集会を開いていたアメリカ人、牧師、信者が逮捕されたという。二〇〇六年にも、河北州で三自(愛国)教会に入ることを拒否したカトリック神父が逮捕されたといわれている。また、オリンピック前の二〇〇八年五月には、四川、北京、山東、吉林など各地で取締りが強化され、オリンピック後も家庭基督教会連合会会長の張明選牧師が一時拘束されたと報じられた。(pp.94-95)

1-15.
 イスラームに対する取締りについては、新疆ウイグル自治区で二〇〇五年、女性教師が学生にコーランを講釈したため、身柄を拘束される事件が起きている。また『ニューヨーク・タイムズ』などが報じたところによれば、同自治区では、二〇〇八年*ラマダーン期間中に宗教活動を規制する旨の政府通達が出されたという。(p.95)

*ラマダーン
イスラームで断食などを行う月。ヒジュラ歴(六二二年七月一六日預言者ムハンマドがメッカからメディナへ移住したことを示し、この日が紀元となる)の第九月。期間中、教徒は日の出から日没まで、飲食、香料、性行為などを断つ。(p.95)

6 manolo 2013-10-04 02:51:08 [PC]

1-16.
 宗教統制は、中国共産党にしてみれば、「祖国統一」維持のための「国家安全」上の措置に他ならない。チベットや新疆においては、宗教が民族と結合し、独立運動を喚起する危険性を備えているとみている。また、キリスト教にしても、欧米諸国の影響下にあると見ており、宗教政策に対する海外の批判は「国家分裂をたくらむ陰謀」と位置づけられる。(p.95)

1-17.
 しかし、「平和的台頭」を目指す中国にとって、現行の宗教政策は、大きな足かせとなっている。カトリック教会の処遇をめぐって、バチカンと国交が樹立できないことに見られるように、統制の代価は大きい。欧米に信者が多いダライ・ラマ一四世と対立していることで、しばしば国際的な非難も受けている。(p.95)

1-18.
 ただ、こうした現実を認識してか、わずかながら変化の兆しは見られ、当局が家庭教会との対話や、バチカンとの関係改善を模索している気配がある。難航してはいるが、ダライ・ラマ側との接触も再開した。はたして宗教統制は終わりを告げるのか。あるいは、一党支配がされに強化されるだけなのか。今後の対応が注目されるところである。(p.95)
 
1 manolo 2013-10-03 01:15:37 [PC]


265 x 191
『宗教と現代がわかる本2012』平凡社、渡邊直樹[責任編集]、2/24/2012、(「アフリカの民族紛争、宗教対立の解決策を探るために」、竹内進一)pp.154-157

1-1.
 アフリカでは、民族や宗教の違いが暴力的紛争の中でしばしばクローズアップされる。一九九四年にルワンダで起こった大量殺戮(*ジェノサイド)は、少数派民族のトゥチを主たる標的としたものだった。二〇〇七年末の大統領選挙をきっかけにケニアで勃発した大規模な暴力では、キクユやルオといった民族間で殺戮が繰り返された。最終的に南スーダンの独立に至ったスーダン内戦は、北部に居住するムスリムのアラブ人と、南部に居住するキリスト教のアフリカ人との戦いだと言われた。南部のキリスト教徒と北部のムスリムの間の亀裂は、コートジボワール、ナイジェリア、チャドといった国々でも指摘されてきた。(p.154)

*ジェノサイド
ナチス・ドイツによるユダヤ人殺戮の教訓を踏まえ、一九四八年の条約で制定された大量殺戮の概念。国際法上は、民族、宗教、人種などに関わる集団の全部または一部を破壊する意図を持ってされた殺害行為を指す。ドイツやルワンダのほかにも、オスマン・トルコ帝国のアルメニア人虐殺(一九一五年~一六年)や、スレブレニツァ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)におけるモスレム人の殺戮(一九九五年)、またポル・ポト政権下(カンボジア)の大量殺戮(一九七六~七九年)もジェノサイドと見なされることがある。(p.154)

2 manolo 2013-10-03 01:17:00 [PC]

1-2. 《人は民族や宗教が違うだけで殺しあったりしない。》
 こうした紛争にいかに対処するかは、今日の国際社会にとって喫緊の課題である。解決策を考えるためにまずもって重要なのは、民族や宗教の違いと暴力的紛争の関係を正確に理解することである。人々は、単に民族や宗教が違うというだけで殺し合ったりしない。そうした違いはしばしば長い年月をかけて政治化されてきた経緯があるし、政治家など有力者の動員によって人々が暴力へと駆り立てられることが多い。(p.154)

1-3.
 ルワンダを例にとろう。一九九四年の大殺戮は、*トゥチが被害者、多数派民族の**フトゥが加害者という構図であった。トゥチとフトゥはそれぞれ全人口の一割強、八割強を占めるが、言語や宗教に違いはなく、国土に混じりあって居住する。ヨーロッパに植民地化される以前のルワンダ王国において二つの集団は社会階層に近い性格を有していた。支配階層にはトゥチが多かったものの集団間の境界は曖昧で、アイデンティティが集団間を移動する場合も珍しくなかった。(pp.154-155)

*トゥチ
ルワンダ、ブルンジで全人口の一割強を占める民族。日本語では通常「ツチ」と表記されるが、現地の発音は「トゥチ」が近い。植民地化以前のルワンダ、ブルンジ両王国では、トゥチは支配層に多く、王族を輩出した。長身痩躰の体型を有するというステレオタイプ・イメージがあるが、フトゥと体型で区別できない人も多い。今日、ルワンダでは政権与党(ルワンダ愛国戦線[RPF])、ブルンジでは第二の政党(民族進歩連合[UPRONA])の中心を占めている。(p.154-155)

**フトゥ
ルワンダ、ブルンジの全人口の八割強を占める民族。日本語では通常「フツ」と表記されるが、現地の発音は「フトゥ」が近い。植民地化以前は被支配層に多かった。トゥチに比べてずんぐりしているというステレオタイプ・イメージがある。ルワンダでは、植民地末期の紛争以降一九九四年にRPFが内戦に勝利するまで、フトゥ・エリートによる政治支配が続いた。ブルンジにおける現在の政権与党民主防衛国営会議―民主主義防衛勢力派(CNDD-FDD)は、もともとフトゥのゲリラ組織である。(pp.155-156)

3 manolo 2013-10-03 01:18:04 [PC]

1-4.
 ところが、一八九九年以降にルワンダを統治したドイツとベルギーは、トゥチを支配民族とみなしてフトゥに対する差別政策を制度化した。教育や就職で差別を受けたフトゥは怨念を抱き、それが独立運動の中で爆発する。独立直前の一九五九年、ルワンダは史上初めて全国レベルの民族紛争を経験することになる。この紛争で多数のトゥチが難民化したが、彼らは国外で武装組織を結成し、一九九〇年に祖国に侵攻して内戦を引き起こす。一九九四年のジェノサイドは、その内戦の帰結であった。アフリカにおける近年の内戦や大量殺戮の原因を辿ると、たいていの場合、植民地期の差別政策が影響している。(p.155)

1-5.
 国連とフランスの軍事介入(二〇一一年四月)で注目を集めたコートジボワールの内戦では北部と南部が対立したが、この地域対立も政治的に創られた側面が強い。直接のきっかけは、政権を握った南部の政治家が北部の有力な政治指導者を大統領選挙から排除し続けたことである。この北部政治家は隣国に出自を持ち、立候補資格がないというのが理由であった。独立以前、コートジボワールはブルキナファソ、マリ、ギニアといった隣国と「フランス領西アフリカ」を構成し、したがって人々も国境をまたいで自由に往来していた。厳格な国籍条項の適用は、多くの北部人を事実上国民から排除することにつながる。政敵を排除するための措置が北部と南部の差異を強調し、結果的に暴力的紛争へと導いたわけである。(p.155)

1-6. 《民族や宗教の違いが政治に利用されている》
 二つの事例から明らかなのは、民族や宗教が違うから殺し合うというより、そうした差異が植民地政策や政治権力闘争によって強調され(あるいは創造され)、紛争の中で利用されるということだ。民族紛争や宗教対立をこのように捉えれば、差異の政治的動員をいかに封じ込めるかが重要になる。この点で、ルワンダとブルンジの比較は興味深い。中部アフリカに位置し、国境を接するこれらの二つの小国は、植民地化以前の伝統王国に起源を発し、少数派のトゥチと多数派のフトゥからなる社会構造を共有する。そしてともに独立後は民族を基軸とする紛争を繰り返し経験してきた。しかし、一九九〇年代に深刻な紛争を経験した両国は、その後紛争予防を掲げて対照的な政治制度を導入した。(pp.155-156)

4 manolo 2013-10-03 01:18:57 [PC]

1-7.
 ルワンダの内戦とジェノサイドを経て権力を握ったのは、トゥチを中核とする元ゲリラ組織「ルワンダ愛国戦線(RPF)であった。内戦に軍事的勝利を収めて権力を握ったRPFは、「ジェノサイドを繰り返さない」ことを最優先課題に掲げて民族表象を抑圧する政策をとってきた。RPFは政権を握ると、まず身分証明書の民族名を削除する政策を打ち出した。ルワンダの身分証明書には、植民地期以降、民族名が記載されており、内戦時には殺戮対象者を選別するために利用された。この制度を廃止したのである。それにとどまらず「ルワンダ人は一つ」という論理の下で、公の場で民族に言及することはタブーとなった。二〇〇三年制定の憲法では、民族などの「分断(division)」を助長すれは処罰の対象になると定められた。(p.156)

1-8.
 内戦後のルワンダではRPFが権力を握り続けているが、政権は軍事的性格を色濃く残し、この条項を国内治安確立のために利用している。これまで「分断」条項に抵触したとして、有力野党が解散させられたり、大統領選挙に立候補しようとした人が逮捕されている。ルワンダは制度的に多党制民主主義を採用しているが、現実にはRPFが重要な権力装置を独占し、強権的な政治体制が敷かれている。抑圧的な民族政策は、民族を通じた政治的動員を阻止し、少数派のトゥチを基盤とするRPF政権を永続させるためのものだという見方も強い。(p.156)

1-9.
 ブルンジもまた一九九〇年代に長期の内戦を経験し、国際社会の介入を経て、二〇〇〇年に停戦協定が結ばれた。その後、移行期政権を経て二〇〇五年に制定された新憲法では、民族間の厳密な権力分有政策が制度化された。ルワンダとは逆に、ブルンジ憲法は、第一条で民族的多様性を認めている。そのうえで、議会や内閣、軍や警察、公企業や地方行政府などについて、民族間の比率が厳密に定められている。二名の副大統領を異なる民族から出すこと、内閣、下院、公企業経営者などに関してはトゥチとフトゥの比率を四対六とし、上院や治安機関(軍、警察、諜報機関)に関しては五対五とすることなど、憲法には事細かに政治ポストの民族別比率が書き込まれている。(p.156)

5 manolo 2013-10-03 01:19:46 [PC]

1-10
 民族動員の強力な手段となる政党の編成についても、制度的工夫がなされている。ブルンジの下院選挙では、拘束名簿式比例代表制が採用されているが、名簿作成にあたって、三人に一人は異なる民族の候補者を記載することが義務づけられている。そのため、政党は必ず多民族から構成されることとなる。今日ブルンジの政権与党は、かつてフトゥを中核とするゲリラ組織であった「民主主義防衛国民会議-民主主義防衛勢力派(CNDD-FDD)」だが、同党に所属する下院議員の三割はトゥチである。(p.157)

1-11. 《権力闘争の制度化(ルール化)に向けて》
 ルワンダとブルンジを比較すると、ルワンダが物理的な力で民族の表出を抑制しているのに対して、ブルンジは権力分有制度を通じて民族対立を防ぐ工夫を講じている。一見するとブルンジのやり方が合理的で持続可能に思えるだろう。実際、今日ブルンジでは、民族の違いは国政において重要な意味を持っていない。政治エリートの間に民族を通じた動員を行うインセンティブがないからである。(p.157)

1-12.
 ただし、問題はそれほど簡単ではない。今日ブルンジは、ルワンダよりもずっと政治的に不安定化している。政権与党に反発するグループが散発的な軍事行動に出ているためだが、このグループは政権与党と同じく、かつてのフトゥ・ゲリラである。権力分有制度の導入によって民族間の対立を封じ込めたものの、同じ民族内の政治対立が紛争再発の危機を招いているのである。(p.157)

1-13.
 政治対立や権力闘争は、どんな国でも必ず起こる。暴力ではなく何らかのルールに則ってそれを処理しなければ、武力紛争は防げない。暴力的紛争の解決という観点から考えれば、民族や宗教の対立を緩和する制度導入以上に、権力闘争を暴力に依らずに処理するためのフォーマル、インフォーマルな合意形式が重要なのである。(p.157)
 
1 manolo 2013-01-18 17:55:52 [PC]

出典:朝日新聞、1/18/2013、p.3

1-1. オバマ大統領は16日、コネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件を受けた銃規制の強化策を発表した。最優先課題に位置付けて、議会の反対勢力を押し切る構え。だが、強い政治力を持つ全米ライフル協会(NRA)は強く反対し、国内世論も割れている。

1-2. 米紙ワシントン・ポストと米ABCテレビが14日に公表した世論調査によると、事件後に銃規制がより必要だと感じるようになった人は52%、より感じなくなったとしたのは、わずか5%だった。オバマ政権や連邦議会が取り組むべき政策の優先順位として、「銃規制」は、「経済」「財政赤字削減」「税制改革」に続いて4位につけた。

1-3. 銃犯罪の被害者も動き出した。2年前にアリゾナ州で銃撃され、一時重体に陥ったガブリエル・ギフォーズ前下院議員は6日、夫とともに「責任ある解決を支持する米国民」という政治団体の結成を発表。銃規制に取り組む政治家を支持するという。コネティカット州のサンデーフック小学校の乱射事件の遺族らも、事件から一カ月となる14日に「サンデーフックの約束」という非営利団体を立ち上げた。

2 manolo 2013-01-18 18:10:14 [PC]

1-4. 一方、銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)は16日、「法律を守る、正直な銃所持者だけが影響を受けて、こどもは再び悲劇にあう」とオバマ氏の対策を批判。「我々は超党派の連邦議会と、本当の問題解決に取り組む」と、関連法案の成立阻止に自信をのぞかせた。

1-5. NRAは15日に公開した宣伝ビデオで、オバマ氏の二人の娘が学校でも警備の対象になっていると指摘。すべての学校に武装警官を配置するというNRAの提案に反対するのは「偽善だ」と批判した。

1-6. 豊富な資金力と選挙での支援をテコに、強力なロビー活動を行うNRAの影響力は、下院で過半数を占める共和党はもちろん、与党・民主党にも及ぶ。上院民主党の司令塔・リード院内総務ですら、NRAの支援を受けており、規制強化の法案には消極的だ。

1-7. とりわけ、殺傷力の高いアサルト・ウエポン(突撃銃)や弾倉・弾丸の製造・販売の禁止はハードルが高い。どこまでを「殺傷力の高い」と認定するかは難しく、線引きの仕方によっては、憲法で定められた銃所持の自由に抵触する、と批判を浴びかねない。すでに大量に出回っており、製造・販売禁止の効果を疑問視する見方もある。

1-8. ピュー・リサーチセンターが14日に公表した世論調査では、考えられる銃規制のうち、「身元調査の強化」については85%が賛成しているが、「突撃銃の禁止」については55%にとどまっていた。

3 manolo 2013-01-23 11:40:10 [PC]

出典: ニューズウィーク日本版、1/29/2013、p.17、p.23、p.83

2-1. 米コネティカット州の小学校で起きた凄惨な銃乱射事件を受けて、銃規制強化に突き進むオバマ大統領。これに対し、規制に反対する全米ライフル協会(NRA)は、オバマの娘サーシャとマリアを政治利用するという禁じ手に出た。校内で2人だけに武装した要人警護が付いているのは不公平とし、すべての学校に武装警官を配備するよう求めるCMを放映したのだ。だが高性能の銃器が簡単に入手できる国では、そんな対策は無意味だ。それどころが全米の10万校に年間200日、武装警官が常駐すれば、新たな重大事故が起こる可能性は極めて高い。おもちゃの銃で遊ぶ生徒に誤って発砲する、生徒が警官の銃を奪ってけんか相手を撃つ、精神疾患を患った警官が生徒を大量虐殺する・・・。(p.17)

2-2. コネティカット州のサンディフック小学校で起きた銃乱射事件で、児童20人が犠牲になったのは昨年12月。その後1ヶ月間にさらに900人が銃で命を落としたと、オバマは語った。(p.23)

2-3. 議会に対してオバマは、銃購入者全員に身元調査を行う法案の成立や、04年に失効したアサルト銃の販売禁止令の復活、弾倉に装填〔そうてん〕する銃弾を10発以下に制限する法案の成立を求めている。さらにオバマは、アルコール・タバコ・銃器取締局(ATF)の局長に指名したB.トッド・ジョーンズの承認を議会に求めた。ATF局長職は06年にNRAの要請で議会承認事項とされて以来、空席が続いていた。(p.23)

2-4. 殺傷力の強いアサルト銃の禁止には象徴的な意味があるが、実現までのハードルは高い。議員の半数はNRAの支持を受けており、下院多数派の共和党には禁止を支持する気配がない。(p.23)

2-5. 中道左派のシンクタンク「第三の道」のジム・ケスラーは、アサルト銃の販売を禁止しても拳銃を買えれば犯罪抑止効果は望めないと指摘する。オバマが掲げる対策は、アサルト銃の販売禁止が実現するかどうかだけで評価すべきではないとケスラーは考えている。彼によれば身元調査の効果は10段階で「10」だが、アサルト銃の販売禁止の効果は「3」にとどまる。「銃を愛する人がこの規制も愛することはできる」と、ケスラーは言う。銃の正規販売店で身元調査を経て購入する人に、この規制を恐れる理由はない。ハンターが鹿を射止めるのに10発以上の連射など必要ない。(p.23)

4 manolo 2013-01-23 14:51:12 [PC]

2-6. アメリカにある根強い銃文化の一端は、毎年6月にオクラホマ州で開かれるアメリカ最大規模の機関銃のショーでうかがえる。参加費は1日10ドルで、10歳以下は無料だ。別途料金を払えば大人から子供まで、機関銃を撃ったり戦車に体験乗車したすることもできる。(p.83)

2-7. 幼い子供を連れた家族が機関銃に興じて歓声を上げる様子には、困惑させられる。撮影した報道カメラマンのピート・ミュラーは、「アメリカ人は銃が好きだ。自由や個人、勇敢さといった銃の象徴するものすべてが、アメリカ人には愛国心と結びついている」と語る。銃社会を底辺から支えるのは、アメリカ国民の銃に対する深い愛着にほかならない。(p.83)

5 manolo 2013-02-08 01:22:04 [PC]

出典: ニューズウィーク日本版、1/26/2011、pp.34-37

3-1. 1月12日、アリゾナ州トゥーソンを訪れたバラク・オバマ大統領は、8日に起きた銃乱射事件の犠牲者に思いをはせ、米国民にもそうするよう呼び掛けた。あの日、ガブリエル・ギフォーズ下院議員と会うためにスーパーマーケットの前に集まった人々は、民主的な政治参加という、最も「アメリカ的」な行いを実践していた。そのアメリカは一方で、200年近く前から政治指導者の暗殺を自己表現の効果的な手段とみなす連中に悩まされてきた。その大半は性的な欲求不満を抱えた社会的不適応者で、共通点は世間から孤立していることぐらいしかない。しかし、彼らもまた、アメリカの一部だ。(p.36)

3-2. 彼らの存在は個人単位にまで細分化が進んだアメリカ社会の行く末について、何かのメッセージを発しているのかもしれない。他の国々の場合、政治的暴力のほとんどは過激な政治運動や宗教上の原理主義、犯罪組織と結びついている。だがアメリカの暗殺者は、大抵はイデオロギーというより、漠然とした政治的不満や個人的怒りに駆られた変わり者のストーカーだ。(p.36)

3-3. 今回の銃乱射事件を起こしたジャレッド・ロフナーも、この類型に当てはまるようだ。22歳の銃撃犯はジョン・ロール連邦地裁判事と9歳の少女クリスティ-ナ・グリーンを含む6人の命を奪い、ギフォーズをはじめとする14人を負傷させた。ロフナーはトゥーソンのスーパーの外で半自動拳銃を振り回し、数秒間に30発発射した。当局が公開した顔写真のゆがんだ笑いと異常に鋭い目つきを見る限り、まともな犯行動機があったとは思えない。(p.36)

3-4. アメリカの憲法と政治体制は政治的暴力と表裏一体の関係にある。アメリカは武力革命によって生まれた国家であり、ロフナーや過去の暗殺者もそれを意識していた。多くの米国民の祖先が銃を手にしてフロンティアを切り開き、先住民の土地を奪った事実は、アメリカの自己認識の中でも特に重要な「神話」の一つだ。だが、武装の権利を規定した憲法修正第2条を擁護する人々も、この権利がしばしば暴力事件を助長していることは理解しているに違いない。アメリカ社会が正面から精神疾患と向き合おうとせず、統合失調症に治療に必要な資金調達と法整備に取り組まなかったことも、この種の事件を防げない一因だ。(p.36)

6 manolo 2013-02-08 15:02:53 [PC]

3-5. テキサス州ダラスでジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された1963年から、ワシントンでロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂事件が起きた81年までの18年間は、暗殺の時代とも言うべき時期だった。この間に殺傷または銃撃された著名人を挙げ始めれば切りがない。黒人解放運動の活動家マルコムX(65年)とマーチン・ルーサー・キング(68年)、ケネディ大統領のロバート・F・ケネディ上院議員(68年)(中略)ジョン・レノン(80年)・・・・・・。まだたくさんいる。(pp.36-37)

3-6. レーガン殺人事件未遂の後、シークレットサービスは大統領と家族の警備体制をさらに強化し、暗殺者がその網をくぐり抜けるのはかつてなく困難になった。70年代までは、大統領主催行事の招待客は金属探知機を通らずに会場に入れたが、今は大統領の側近でもIDカードを忘れたら入れない。だが、議員や州知事、その他の名士なら、今でも一般市民が近づける。(p.37)

3-7. 多くの場合、こうした事件の直接的な原因を特定することは不可能だ。メディアやネットでどんなに物騒な言葉が飛び交っていても、ほとんどの人は暴力行為に訴えたりしない。だが、ある専門家の推定によれば、統合失調症の人間はアリゾナ州だけで約2万1000人いる。そのうち約10%は危険な行動に走る可能性があるという。(p.37)

3-8. ロフナーの犯行動機はもっと曖昧だが、政治的要因がゼロと言うわけでもない。この事件は怒りで我を忘れた男がショッピングセンターで無差別に発砲したものではない。07年の政治集会でギフォーズに質問したのに、答えてもらえなかった――ロフナーは一方的にそう思い込み、傷ついていた。そのために復讐したいという欲求に取りつかれ、襲撃の計画を事前に練っていたようだ(私物の中にあった手紙には「死ねビッチ!」と書いてあった。(p.39)

3-9. ロフナーは「政府を転覆させて通貨制度を変えることは可能だ」とネットに投稿していた。こうして激しい弁舌は偏執性妄想と政治的狂気が入り混じった典型で、昔からアメリカの暗殺者の特徴でもある。「先輩」の大多数と同じようにロフナーも学校を退学し、仕事は長続きせず(犬の散歩のボランティアは、有毒ゴミ廃棄上の近くを通ると言い張ってクビになった)、軽微な違法行為もあった(交通標識に落書きした)。そして凶行の少し前から急激に人格が変わった。(p.37)

7 manolo 2013-09-26 00:11:07 [PC]


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出典:『ニューズウィーク日本版』、10/1/2013、(「銃の悲劇を止められない規制派の戦意喪失」、デービッド・ウィーグル)p.20

4-1.
 なぜアメリカは銃による悲劇を止められないのか。先週、首都ワシントンの海軍施設で新たな銃乱射事件が発生した。約5カ月前の4月17日、米上院は銃規制強化法案を採決している。法案は26人が死亡した昨年12月のコネティカット州の小学校での銃乱射事件を受けて超党派の議員らが提出。銃購入時の身元確認強化を目指す内容だった。次に乱射事件が起きたら、その時こそ――オバマ政権をはじめ多くの銃規制派がそう考えた。

4-2.
 しかしあえなく否決。法案をまとめたパトリック・トゥーミー上院議員(共和党)の広報担当者は「社会の風向きは変わらない限り、結果も変わらない」とぼやいた。今回の事件後にトゥーミーは声明を出した。「上院で銃規制について話し合ったが可決に必要な票数に5票足りなかった。今回の悲劇が風向きを一変させるかどうか」

8 manolo 2013-09-26 00:13:45 [PC]

4-3.
 残念ながら答えはノーだ。確かに小学校での銃乱射事件は銃規制の動きを加速させ、民主党議員もようやく重い腰を上げて全米ライフル協会(NRA)と対決した。その結果4州で新たに銃規制法が生まれたが、18州では逆に規制が緩和され、そのほとんどで銃を隠して携帯できる範囲が拡大した。西部で唯一銃規制法案を可決したコロラド州では、州議会で法案成立の先頭に立った民主党議員2名が弾劾選挙に敗れた。

4-4.
 そもそも銃規制派に事件を防ぐ有効な手だてがあるわけではない。今回の乱射事件の容疑者は犯行2日前にバージニア州の銃販売店でAR15アサルトライフルを試射したが、州民以外への販売が州法で禁じられていたため購入を断念。代わりにショットガンを購入した。護身用にショットガンを買うことはバイデン副大統領も勧めており、政府が認めたも同然だ。

4-5. 《「銃には銃で」という姿勢》
 クリントン政権の時に軍事施設での銃規制を強化さえしなければ事件は防げた、と銃容認派は主張する。息子が「事件当時、海軍施設の海兵隊兵舎にいた」という男性はテレビ取材に応じ、「銃弾さえあったら」容疑者を撃つことができたのにと嘆いた。「他人の身分証明証で軍施設に入れるというのに、身元確認強化ぐらいで不適格者の銃購入を防げるのか」という声もある。

4-6.
 銃規制派が戦意を喪失している間も銃容認派の攻勢は続く。NRAの提言通り、武装した警備員を配置する学校も出てきている。

9 manolo 2013-09-26 00:14:41 [PC]

4-7.
 一方の銃規制派は一貫性を欠く。過去に規制法案を提出したダイアン・ファインスタイン上院議員は(民主党)は事件直後に声明を発表。「議会は責任回避をやめ、銃による暴力について真剣な議論を再開すべき」で「人命が際限なく失われる状況に終止符を打つべく一層の努力が必要」と訴えた。ところが翌日には一転して「今は楽観していない」と認め、「また否決されるのはごめんだから」再審議は要求しないと語った。

4-8.
 民主党の説得力のなさは致命的だ。銃規制を推進して失職したコロラド州議員の1人は、事件翌日のニュース番組で、銃規制が難しい海軍施設を「武装した人間がどこよりも多い場所」と事実誤認発言。かえって自衛のための銃携帯を促す形となった。

4-9.
 現在は議会も政府も予算案のことで手いっぱいだ。前回はオバマ大統領は再選を果たしたばかりで、議会も財政赤字や医療保険制度改革の問題を秋まで先送りにして銃規制強化法案の審議に臨んだ。しかし予算案合意のタイムリミットが迫っている今、誰も勝ち目のない党派争いを再燃させたくないだろう。「次こそは」という銃規制派の考えは欠陥だらけだ。
 
1 manolo 2013-09-23 12:11:35 [PC]


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出典:『宗教と現代がわかる本2012』、渡邊直樹編、平凡社、2/24/2012、(「イスラームと民主主義」、小杉泰)pp.140~145

1-1. 《アラブの民主化とイスラーム政党の躍進》
 中東のアラブ諸国で民衆蜂起が起き、次々と独裁政権が倒れる事態が続いている。2011年にチュニジア、二月にはエジプトで長年の独裁を続けた大統領が失脚し、八月にはリビアでも半年の内戦を経て、四二年間の独裁体制が崩壊した。これまで、非民主的な体制が多かった中東でも、ようやく民主主義の時代が来たかのようである。(p.140)

2 manolo 2013-09-23 12:16:10 [PC]

1-2.
 その一方で、一九八〇年代からしばし起こってきたパラドクス、つまり民主化が進むとイスラーム復興が伸張するという現象が、再び目につき始めた。二〇一一年一〇月のチュニジア制憲議会選挙では、イスラーム政党の*ナフダ党が四割の議席を獲得し、第一党となった。翌一一月には、ゆるやかな民主化が進んできた王政のモロッコで、イスラーム政党の公正発展党が国会議席の四割を獲得し、第一党に躍り出た。エジプトでも、一一月から五カ月にわたる選挙プロセスが始まり、同国最大のイスラーム運動を基盤とする、自由公正党が優位に選挙戦を進めている。のみならず、これまで政治に関与してこなかった新しいイスラーム政党も現われ、想定外の善戦をしている。(p.140)

*ナフダ党
チュニジア最大のイスラーム運動で、青年イスラーム組織が発展して八〇年代末にイスラーム社会の「ナフダ(復興)」をめざす政党となった。指導者ガンヌーシーは、イスラーム民主主義者として知られるが、親西洋的な世俗国家を標榜する体制側はナフダ党を非合法化して、二〇年にわたってベンアリ独裁体制を敷いた。民主化革命で独裁が倒れると、制憲議会選挙で第一党となったナフダ党が二〇一一年一二月に連立内閣を組閣した。(p.140)

1-3.
 はたして、イスラーム政党の統治下でも民主主義が継続できるのであろうか。この疑問は、チュニジアやエジプトの世俗主義派が危機感をもって提起してきた。欧米や日本でも、基本的な疑問点として話題とされる。そもそも、イスラームと民主主義とは両立しうるのであろうか。(p.140)

1-4. 《「神の主権」と民主主義の矛盾?》
 現代のイスラーム国家として筆頭にあげられるのは、イランとサウディアラビアであろう。どちらの、イスラーム法(シャーリア)に従うことを国是としている。とはいえ、二つの国は大きく異なっている。イランは法学者が権力を握る革命国家であり、サウディアラビアは部族的紐帯を重視する社会の保守的な王国である。しかし、両国は、イスラーム法の優越性を認める点で一致している。イスラーム法は、神の啓示としての聖典クルアーンを最大の典拠として、法学者の解釈によって作られている。その前提は「神の主権」であり、聖典は「主権者の意思」とみなされる。そのため、欧米から「神の主権」は国民主権と対立し、民主主義を否定するとの批判がなされてきた。(pp.140-141)

3 manolo 2013-09-23 12:17:50 [PC]

1-5.
 実はこの批判は、論点が少しずれている。イスラームで言う「神の主権」は、世界を神が創造したという世界観・社会観を示すものであり、その意味では近代思想における社会契約説に相当する。つまり、なぜ、人間社会が存在し、人が法に従うべきなのかに関する哲学的な根拠である。超越的な絶対神が実際に姿を現すわけではなく、主権を行使するのは、権限を神に委任された人間である。言いかえると、国民主権に相当するのは、イスラームでの人間の「主権行使権」ということになる。国民主権と言えども、国民のわがまま勝手ではなく自然法に規制されるように、イスラーム法が主権行使権を規制しているというのが、イスラームの統治論である。問題は、自然法とイスラーム法は同じではなく、欧米から見れば文化的に容認しがたい規定がイスラーム法に含まれているという点にある。(p.141)

1-6.
 イランから見ると、最高指導者、大統領、国会議員などの選出は民主的に行われており、国民は主権を十分行使していることになる。イスラーム法に従うことはムスリム(イスラーム教徒)の義務であり、イランでは憲法にも明記されているため、国民の自由裁量の対象とはならない。欧米から見ると、それも国民の自由でなければ民主的とは言いがたいのであるが、このあたりから文化的な摩擦の色合いが強くなる。イスラーム世界では、神の実在は社会的価値の根幹をなす認識であり、容易に譲りがたい。(p.141)

1-7.
 聖典クルアーンには「諸事について彼らと協議せよ」(イムラーン家章五九節)とある。伝統的な解釈では、当事者はしかるべき専門家と協議をしなければならないが、彼らの見解を採用するかどうかは、統治者の判断でよいとされていた。サウディアラビアは、この解釈に今でも従っている。つまりイスラーム法学者を「協議の民」として、そのアドバイスを聞きながら、協議運営をおこなっている。その一方で、現代では「協議の民」は法学者に限らず、国民の間から広く専門家、識者を集めるべきで、彼らを適切に選んだ上で、統治者は彼らの見解に従わなければならないという解釈も広まっている。選出方法として近代的な自由選挙を採用し、さらに協議の結果を多数決で決めるのであれば、議会制民主主義に限りなく近くなる。今、アラブ諸国で選挙に参加しているイスラーム政党は、多くがこの見解を取っている。(p.142)

4 manolo 2013-09-23 12:19:58 [PC]

1-8.
 「神の主権」が社会契約説・国民主権と違うのは、民主的かどうかよりも、個人主義と自由主義を採用するかどうかに関わっている。イスラーム法の優位は、社会共通の価値としてイスラームがあるという前提に拠っており、そこでは宗教や信条を個人的なものとして考える発想は弱い。(p.142)

1-9.《複数政党制でのイスラーム政党》
 イスラーム国で独裁体制から複数政党制へと民主化の移行がなされた代表例は、実は中東ではなく、インドネシアである。一九九八年に、それまで開発独裁を進めていたスハルト体制が改革を求める国民の叫びの前に終わりを告げると、民主主義の時代となった。地方分権も推進されているし、スハルト以降の大統領も民主的に交替してきた。その意味では、インドネシアはイスラーム世界の民主化のお手本とも言える。(p.142)

1-10.
 この国がイスラーム的要素を濃厚に持つことは、「パンチャシラ」と呼ばれる建国五原則の第一が「唯一神の信仰」であることに示されている。その原則に合致する宗教として公認されているのが、イスラーム、キリスト教のほかに、バリのヒンドゥー教や仏教、儒教というあたりは、東南アジア的な特色が現われている。憲法にイスラーム教を国教とする条項はないが、人口の九割をムスリムが占め、宗教的な価値が社会的に重きをなしている。民主化後のインドネシアではイスラーム政党として、近代的なイスラーム改革派の国民信託党、それと対抗する伝統的な*ナフダトゥル・ウラマに基盤を置く民族覚醒党、近年になって若手中心に伸びてきたイスラーム復興派の福祉正義党などが、これまで活躍してきた。特に福祉正義党は、都市部の中流階層を中心に、確実に勢力を伸ばしてきた。(pp.142-143)

*ナフダトゥル・ウラマ
インドネシア語で「イスラーム学者たちの復興」を意味する。東南アジアでも、二〇世紀初頭に、伝統派を批判するイスラーム改革派が勃興したが、それに対抗して伝統的な宗教指導者たちがこの組織を立ち上げ、自己改革と新世代への対応を進めた。現在、インドネシア最大のイスラーム組織となっている。その指導者アブドゥルラフマン・ワヒドは、スハルト独裁が崩壊した後に、宗教界出身の最初の大統領となった(在任一九九九~二〇〇一年)。(p.142)

5 manolo 2013-09-23 12:21:38 [PC]

1-11.
 複数のイスラーム政党の存在は、イスラームの解釈が多様であることを意味する。だれもイスラームを独占できないのである。しかも、選挙では、イスラーム以外の政策も問われるようになる。イスラーム政党が得票を伸ばすと、政治にイスラームを反映させるという有権者の望みはある程度叶うので、次に生活に密着した政策が問題になる。イスラームを掲げても、失業の解消や経済の活性化は果たせない。それぞれの政党は支持基盤が異なるので、誰の生活を優先するかで政策にも違いが生じる。(p.143)

1-12.
 アラブ諸国の場合、独裁体制が続く中で、イスラームを唱えるのが反体制派だけであるかのような状況が続いてきた。抑圧状況が続くと、一つのイスラーム運動だけが独裁に抵抗し、それがイスラームを独占しているように見える状況も生じる。これまでのチュニジアのナフダ党、*エジプトのムスリム同胞団などはそのよい例である。そうなると、イスラーム政党が政権を握ると一枚岩的なイスラーム化が生じて自由が抑圧されるのでは、という疑義が生じやすい。(p.143)

*ムスリム同胞団
1928年にエジプトで設立され、その後アラブ諸国に広がった大衆的なイスラーム運動。伝統的なイスラーム社会が解体する中で、近代的な職業人や労働者、学生を主役とする組織化を進め、現代に適した「同胞」意識を育て、その組織化を進めることをめざした。社会全体のイスラーム化を進めれば、おのずと政治もそれに従うという漸進主義を取っており、政治闘争や権力奪取を優先する急進派とは一線を画す。急進派から微温的と批判されることもある。(p.143)

1-13.
 複数のイスラーム政党が活動していると、非イスラーム政党とも競合が生じるし、それ以上にイスラーム政党の間で激しい競合が生じる。それが、特定の政党が権力を乱用するのを防ぐ最も民主的な方法となる。その意味では、社会の中でイスラーム的な価値が活性化して、多様なイスラーム理解が生じ、複数のイスラーム政党が有権者の支持を求めて競合することが、イスラームと民主主義が融合する近道となる。(p.143)

6 manolo 2013-09-23 12:24:36 [PC]

1-14.
 ただ、そのような融合が成功するまで、欧米が介入せずに見守ることができるのか、不安がないわけではない。一九八〇年代末のアルジェリアでイスラーム救国戦線が選挙で圧勝した時は、軍政がそれを潰すのを欧米諸国は支持した。二〇〇六年にパレスチナ自治評議会の選挙で、ハマース(イスラーム抵抗運動)が勝利を収めると、民主化を祝福するかわりにテロ嫌疑を理由に国際的に経済制裁が科された。民主化の結果としてイスラームが現れると、欧米がそれを否定するというパターンが、今次のアラブ民主化革命で破られるかどうかは、大きな試金石となっている。(pp.143-144)

1-15.《宗教の内容を誰が決めるのか》
 最後に、イスラームとは何か。その教義や信条を誰が決めるのか、という問題を考えてみたい。法や統治を重視するイスラームでは、民主主義も教義の問題となるからである。(p.144)

1-16.
 イスラームには、キリスト教の教会や公会議に相当する組織は存在しない。キリスト教では、たとえば八〇年代末の東欧において、カトリック教会が民主化を支持して共産主義との決別を助けた。宗教が民主的を推進する好例であるが、その後で教会が政治に参画したわけではない。逆に、イスラームの場合は、宗教そのものが政治性を帯びているが、カトリック教会のような役割を果たす教皇も教会もない。代わりに、ムスリムは単一のウンマ(共同体)をなし、その中で法学者などのウラマー(イスラーム学者)が指導するとされるが、法学者は一枚岩ではなく、中央の司令塔もない。(p.144)

1-17.
 実際のところ、イスラームの歴史を見れば、法学者たちが主張する多様なイスラーム解釈の中で、一般信徒の支持をより多く集めたものが生き延びてきたことがわかる。筆者の考えでは、ウンマを「思想の市場」とみなし、そこで自由競争がおこなわれていると解するとわかりやすい。公会議がなくても、市場を席巻した解釈はイスラーム世界の合意として重きをなすようになる。(p.144)

7 manolo 2013-09-23 12:26:24 [PC]

1-18.
 たとえば、かつては、イスラーム国家といえば王朝であった。誰もがイスラームと君主制は親和性があると思っていた。前近代では、君主制が「思想の市場」でスタンダードだったのである。ところが、近代に入って王朝がみな西洋列強に負けると、人気が次第になくなった。列強の時代に自力で建国したサウディアラビアが、ほぼ唯一の例外といえる。しかも、七〇年代になると、ついにイラン革命のように、王政は反イスラーム的という主張さえ生まれた。逆に世俗的な共和国でも、現在のトルコのようにイスラーム化を推進する政党が政権を担って、成功する例も現れた。(p.144)

1-19.
 君主制の国もいろいろである。湾岸の産油国はいずれも君主制であるが、石油の富で国民の要求を実現できることもあり、クウェートで議会制が定着してきたのを除けば、あまり民主化が進んでいない。それに対して、産油国でないヨルダン、モロッコは、イスラーム的な色彩の濃い君主制ながらも、民主化をかなり進めてきた。(pp.144-145)

1-20.
 総じて言えば、君主制か共和制かは、イスラームの統治論から見れば今ではどちらも可となっている。むしろ各国にとっての問題は、多様化する国民の価値観をいかに政治的に統合していくかということであり、イスラームと民主主義の両立ないしは融合は、早晩どこでも重要な課題とならざるをえない。(p.145)

8 manolo 2013-09-23 12:27:12 [PC]

1-21.
 イスラーム世界では、一九世紀後半に議会制と反専制の思想が生まれた時に、民主主義がイスラーム思想に取り込まれるようになった。この点で重要な思想家*カワーキビーは、二つの主著『専制の性質』『マッカ会議』で専制を批判し、知的な指導者たちが「ウンマの諸事」を協議すべきであると主張した。それからほぼ百十年が過ぎ、その間にイスラーム国家の民主的な運営を唱える思想が次第に広まってきた。イスラームの解釈についても、より広範な人びとが参加するようになってきている。(p.145)

*カワーキビー
シリア生まれのイスラーム思想家。カイロで刊行された『マナール』誌を中心とするイスラーム改革派の一人で、彼の論考は東西のムスリムに広く影響を与えた。主著では、内政的には王朝権力を批判して議会制の重要性を唱え、国際関係では、イスラーム世界全域から知的な指導者を結集して重要事を合議すべきと訴えた。王朝なき後のイスラーム世界を構想する先見的な彼の主張は、現在の「イスラーム諸国会議機構」にも結実している。(pp,144-145)

1-22.
 民主主義は単なるドグマではなく、実践によって経験値を高め、人びとが「この方式でやれる」という確信を持つようにならないと、社会に根付かない。その意味では、トルコやインドネシアに続き、アラブ諸国でもイスラーム政党が選挙で議席を集めるようになった今、イスラームと民主主義の融合の試みも本格的になってきたと言えよう。欧米諸国の側も、民主化を通してイスラーム色が強まったとしても、すぐに拒絶感をあらわにしたり介入するのではなく、民主化の進展を見守るべきであろう。世界的に民主主義が広まる以上は、地域差や文化伝統の違いを認めることも不可避となる。アラブ民主化革命が進みつつある現在こそ、民主主義の真のグローバル化が試されている。(p.145)
 
1 manolo 2013-09-11 23:30:53 [PC]


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出典:『よくわかるジェンダー・スタディーズ ―人文社会科学から自然科学まで-』、木村涼子他編著、ミネルヴァ書房、3/30/2013、「III-11. 性の商品化とセックスワーク」、pp.206-207

1-1. 1. 「性の商品化」概念の登場と展開
 性の商品化とは、「性」を介するサービス、表現や表現媒体、これらを誘発する道具や環境などを、金品をはじめとする代償と交換に市場で売り買いできる商品にすることです、売買春がもっともわかりやすい例でしょう。「性の商品化」というときの「性」の意味はさまざまで、人間の性的欲望と実存を結びつけるセクシュアリティ、ジェンダー格差に基づいた性別、性行為、人の人格や尊厳と同義の性などがここに含まれます。(p.206)

1-2.
 近年の日本では、1990年代のフェミニズムによる問題提起以来「性の商品化」が社会的な議論の的になってきました。「性の商品化」は、実はほとんどの場合「ジェンダー格差に基づいて」「女性」を商品化する「女性の商品化」であり、「人格や尊厳と同義の性」を商品化することは、すなわち女性の尊厳を商品としておとしめる性差別の具体化だ、という問題提起でした。(p.206)

2 manolo 2013-09-11 23:33:57 [PC]

1-3.
 フェミニズムの主張は、男性中心主義批判、家父長制批判、ヘテロセクシズム批判、マルクス主義、ポスト植民地主義などをふまえ、「性の商品化」を複合差別の結果ととらえる方向へも展開しました。それはまず、生産手段をもたない労働者にとって自らの労働力を売って生活の糧を得ることは必要不可欠だ、と指摘します。そして、ジェンダー格差によって生産手段を持つ機会や雇用機会が男性よりも少ない女性、ヘテロセクシズムによって男性の性的欲望を満たすことを期待されている女性、とくに年長者によって反抗の機会を奪われがちな若い女性、人種主義によって社会的排除を受けやすい少数民族の女性などは生き延びるために、自らの「性」を労働力の一部として商品化する機会が増えるというのです。(p.206)

1-4. 2. 「セックスワーク」概念の登場と展開
 ここで、「性の商品化」を「性労働(セックスワーク)」の側面からとらえる考え方が出てきます。この言葉が日本で定着したのは、1993年に『セックスワーク - 性産業に携わる女性たちの声』が邦訳されたことがきっかけでしょう。以来、性労働をする人びとの立場に立って、「性の商品化」にかかわる仕事を「生き延びるための労働」として社会に認めさせ、セックスワーカーの労働者のとしての権利を獲得しようという議論も行われてきました。現役セックスワーカーの意見も公表され、この議論に大きな影響を与えました。そこには、複合差別から生じる搾取や暴力やスティグマを克服する力と手段を、その現状を生きる当事者こそが得るべき、発揮するべきだ、という理念と希望が込められています。(pp.206~207)

1-5.
 つまりセックスワークの議論は、非常に立場性の強い当事者中心主義の議論です。そしてこの点において、男性中心主義の社会を女性というマイノリティの観点でとらえなおし、さまざまなジェンダー・イシューについて「当事者のわたしの経験は違う」「わたしの経験を聞け」「わたしの経験を(政策などに)反映させろ」と抗議してきたフェミニズムと親和性が高いのです。ですから、「性の商品化」に反対する議論とセックスワークを認める議論とは、対立するところもありますが、どちらが勝つか負けるかして、すんなり決着がつくような単純な二項対立の議論ではありません。(p.207)

3 manolo 2013-09-11 23:35:59 [PC]

1-6. 3. セックスワークの多様性と今後
 「性の商品化」には売春だけでなくさまざまな業態があります。セックスワークは、男性に性交を提供するだけでなくさまざまな仕事を含みます。セックスワークをするひとびとも一枚岩ではありません。ある人は、他の仕事にないような搾取や暴力にさらされているわけでもなく、たとえば相手のニーズに応える仕事に向いている、働く場所や時間に融通が利くなど、自分の資質やライフスタイルに合っているという理由から、好んでこの仕事をしています。けれども、賃金不払いや客や経営者からの暴力を日常的に受けたり、性感染症予防がままならなかったりする状況におかれている人、それでもこの仕事を辞められない人もいます、また、好きでしていてもスティグマはついてまわります。セックスワーカーは、女性ばかりではありませんし、日本人ばかりではありません。トランスジェンダーや男性客相手の男性セックスワーカーは、女性とは違った暴力やスティグマにさらされていますし、外国人セックスワーカーは、日本人セックスワーカーよりも搾取や暴力に遭いやすい環境にあります。(p.207)

1-7.
 「性の商品化」について議論する際には、「性」がいま、誰にとって何を意味しているか、「商品化」の実態は何かを問い直し続けることが必要でしょう。「性の商品化」にはまた、客、性風俗店経営者、管理者、関連業者など労働者以外の当事者が多く関わっています。暴力や搾取を防ぐためには、こういったひとびとに働きかけることも必要です。しかし、性労働者が非正規労働で占められているうえ、性産業には合法な部分と不法な部分が混在しています、さらにスティグマのために当事者のカムアウトが難しいことが加わって、セックスワーカーの権利を守ろうといっても、実務的な介入をすることが難しいのが日本の現状です。そこで、セックスワーカー自身が社会的に排除されない環境で業界を良くしていくことが可能になるような、法律、医療、政策、教育など関係分野に従事する専門家の協力も求められています。(p.207)
 
1 manolo 2013-08-28 12:02:07 [PC]


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出典:『よくわかる健康心理学』、森和代他編、ミネルヴァ書房、8/20/2012、pp.102-103(IV-7. 薬物」)

1-1. 1. 薬物とは
 薬物とは、薬理作用を有する自然界にある薬草などの物質と、化学的に生成された物質を意味します。今日では薬物は使用目的により2通りの意味で使用されています。疾病の治療。予防と診断に用いられる物質は医薬品と呼ばれます。もう一つの意味は、幻覚などの作用を求めて使用される人体に有害である物質です。健康に有害な薬物の使用防止に向けた検討は、重要な課題です。(p.102)

1-2. 3. 脱法ドラッグ
 わが国では薬物の乱用に対し「あへん法」、「麻薬及び抗精神薬取締法」、「大麻取締法」、「覚せい剤取締法」により規制が行われています。これらの規制薬物などの構造を一部変換したり、使用目的を芳香剤、クリーナーなどと偽ったりして法の規制を逃れている薬物(ドラッグ)があります。このような新たなドラッグに関しては成分分析が追いつかず、所持や使用は禁止されていません。このため合法ドラッグと称して販売されています。しかし、実体の有害性や販売方法の違法性から厚生労働省は脱法ドラッグと呼んでいます。脱法ドラッグは、輸入雑貨店、アダルトグッズショップ、インターネットを利用して販売されています。これらのドラッグを使用したときに、急性薬物中毒、薬物依存、フラッシュバック、社会的犯罪への関与が生じる可能性があります。(pp.102-103)

10 manolo 2013-08-28 19:06:58 [PC]

出典: 『Criminology: The essentials』, Anthony Walsh、2012、Sage Publications

4-1. The Harrison Narcotic Act of 1914
The Harrison Act reduced the number of addicts (estimated at around 200,000 in the early 1900s), but it also spawned criminal black market operations (as did the Volstead Act prohibiting the production and sales of alcohol in 1919) and ultimately many more addicts… (p.223)

4-2. Drug Addiction
All addictive drugs mimic the actions of normal brain chemistry by inhibiting or slowing down the release of neurotransmitters, stimulating or speeding up their release, preventing their reuptake after they have stimulated neighboring neurons, breaking transmitters down more quickly…Drugs hijack the brain’s pleasure centers and produce more powerful, rapid, and predictable effects on our pleasure centers than are naturally obtained by the action of neurotransmitters in response to non-drug-induced pleasurable experiences. (pp.223-224)

11 manolo 2013-08-28 19:12:38 [PC]

(「違法薬物」続き)

4-3.
The Drug Enforcement Administration (DEA, 2003) defines drug addiction as “compulsive drug seeking behavior where acquiring and using a drug becomes the most important activity in the user’s life,” and estimates that 5 million Americans suffer from drug addiction. Physical dependence on a drug refers to changes to the body that have occurred after repeated use of it and that necessitate its continued administration to avoid withdrawal symptoms. Physical dependence on is not synonymous with addiction as commonly thought, but psychological dependence (the deep craving for the drug and the feeling that one cannot function without it) is synonymous with addiction. (p.224)

4-4. Drug Classification
The DEA (2003) schedule classification scheme divides chemical substances into five categories, or schedules. Schedule I substances are those that have high abuse liability and no medical use in the United States, such as heroin, peyote, and LSD. Schedule II substances have equally high (or higher) abuse liability, but have some approved medical usage, such as opium or cocaine. Schedule III and Schedule IV substances have moderate to moderately high abuse liability and are legally available with prescription, and Schedule V substances can be purchased without a prescription. The three major types of drugs defined in terms of their effects on the brain are the narcotics, stimulants, and hallucinogenics.

-Narcotics: Narcotic drugs are those that reduce the sense of pain, tension, and anxiety, and produce a drowsy sense of euphoria. Heroin is an example.
-Stimulants: The stimulants have effects opposite to those of narcotics. Stimulants such as cocaine and methamphetamine keep the body in an extended state of arousal.
-Hallucinogenics: Hallucinogenics drugs are mind-altering substances such as lysergic acid diethylamide (LSD) and peyote. (p.225)

12 manolo 2013-08-28 19:19:36 [PC]

(「違法薬物」続き)
4-5. The Drugs-Violence Link
Illegal drugs are associated with violence in three ways: (1) systemic, (2) economic-compulsive, and (3) pharmacological. Systemic violence is associated with “doing business” (the growing, processing, transporting, and selling of drugs) in the criminal drug culture. There is so much systemic violence because the drug business is tremendously lucrative for those involved in it, and there is much competition for a slice of that business. The United Nations estimates the annual worth of the international illicit drug trade to be $400 billion (cited in Davenport-Hines, 2002, p.11). (p.225)

4-6.
As with any industry, the illicit drug industry consists of several levels of business between extracting the product from the ground selling it to the eventual customer. Cocaine and heroin begin as natural products in grown in fields, cocaine as the coca leaf and heroine as the poppy flower. According the U.S. department of the State (2005), the number of acres used for coca cultivation in 2004 in South America was 60,787, down from 552,763 in 2001. The huge reduction was accomplished mainly by aerial spraying of the coca crop with herbicides. On the down side, it was also reported that Afghanistan had 510,756 acres (798 square miles) devoted to cultivating poppies, up from a mere 4,164 acres under cultivation during the last full year (2001) of the Taliban regime. (p.225)

4-7.
After the crop has been picked, the raw materials must be processed, packaged, and smuggled via various “pipelines” into the countries in which the customers for the product reside…Once it arrives at its destination, it is “cut” (mixed with various other substances) to increase its volume and then distributed to street-level outlets for sale to drug users. Profit is made along each step of the way. In 2000, for instance, a kilogram (about 2.2 pounds) of heroin cost an average of $2,720 in Pakistan but sold for an average of $129,380 on the streets in the United States, and a kilogram of coca base cost an average of $950 in Columbia in 1997 and sold for $25,000 in the United States.(pp.225-226)

13 manolo 2013-08-28 19:24:54 [PC]

(「違法薬物」続き)

4-8. Illegal Drug Marketing, From Grower to Market

Grower
Farmers plant and harvest poppy, coca, and marijuana crops.

Processor
Chemicals such as motor oil, sulfuric acid, kerosene, and insecticides are used to refine product.

Transporter
Smugglers use planes, boats, trucks, and many other methods to get product to wholesaler.

Wholesaler
Organized criminal groups cut product and distribute it to dealers.

Retailer
Seller deals directly with consumer in crack houses or on street.(p.226)

14 manolo 2013-08-28 19:26:58 [PC]

(「違法薬物」続き)

4-9.
Systemic violence and other criminal activity begins with the bribery and corruption of law enforcement officials and political figures, or their intimidation and assassination, in the countries where raw materials are grown and through which the processed product is transported. On the streets of the United States, systemic violence is closely linked with gang battles over control of territory (control of drug markets). Goldstein and his colleagues (1989) found that just over one half of a sample of 414 murders committed in New York in 1988 were drug related, with 90% of those drug-related crimes involving cocaine. (p.226)

*Systemic violence: Violence associated with aggressive pattern of interaction within the system of drug distribution and use. (p.274)

4-10.
Economic-compulsive violence is violence associated with efforts to obtain money to finance the high cost of illicit drugs. The drugs most associated with this type of activity are heroin and cocaine because they are the drugs most likely to lead to addiction among their users and are the most expensive. Crimes committed to obtain drug money run the gamut from shoplifting, robbery, and prostitution, to trafficking in the very substance the addict craves. A study of newly incarcerated drug users found that 72% claimed that they committed their latest crime to obtain drug money. (p.226)

4-11.
Pharmacological violence: is violence induced by the pharmacological properties of the drug itself. Violence induced by illicit drugs is rare compared with violence induced by alcohol, the legal drug. A criminal victimization survey found that less than 5% of victims of violent crimes perceived their assailants to be under the influence of illicit drugs versus 20% who perceived them to be under the influence of alcohol. (p.226)

15 manolo 2013-08-29 07:00:25 [PC]

(「違法薬物」続き)

4-12. What Causes Drug Abuse?
Sociological explanations of drug abuse mirror almost exactly the explanations for crime. Erich Goode illustrates the almost indistinguishable explanations offered for the causes of crime and drug abuse in his book Drugs in American Society (2005). In anomie terms, drug abuse is a retrieatist adaptation of those who have failed in both the legitimate and illegitimate worlds, and drugs dealing is an innovative adaptation. In social control terms, drug abusers lack social bonds; in self-control terms, drug abuse is hedonistic search for immediate pleasures; and in social learning terms, drug abuse reflects differential exposure to individuals and groups in which it is modeled and reinforced. Goode favors conflict theory most as an explanation. As the rich get richer, the poor get poorer, and economic opportunities are shrinking for the uneducated and the unskilled, drug dealers have taken firm root among the increasingly demoralized, disorganized, and politically powerless “underclass”. He notes that most members of this class do not succumb to addiction, but enough do “to make the lives of majority unpredictable, insecure, and dangerous. Goode maintains that conflict theory applies "more or less to heacy chornic, compulsive use of heroin or crack". (pp.226-227)

4-13. Does Drug Abuse Cause Crime?
(The percentage of adult arrestees of the largest cities in the United States who tested positive for illicit drugs in 2007 through 2009) Clearly, these data show that illicit drug abuse is strongly associated with criminal behavior, but is the association a causal one? There are three possible explanations for the connection: (1) Drug use causes high rates of offending; (2) the high rates of offending cause drug use; and (3) there is no causal connection, i.e. certain individuals are predisposed to high levels of involvement in both drugs and crime. A large body of research indicates that drug abuse does not appear to initiate a criminal career, although it does increase the extent and seriousness of one. Drug abusers are not "innocents" driven into a criminal career by drugs, although this might occasionally be true. Rather, chronic drug abuse and criminality are part of a broader property if some individuals to engagge in a variety of deviant and antisocial behaviors. The reciprocal (feedback) nature of the drug-crime connection is explained by Menard et al. (2001) as follows:

Initiation of substance abuse is preceded by initiation of crime for most individuals (and therefore cannot be a cause of a crime). At a later stage1 of involvement, however, serious illicit drug use appears to contribute to continuity in serious crime, and serious crime contributes to continuity in serious illicit drug use.(pp.227-228)

16 manolo 2013-08-29 07:13:36 [PC]

(「違法薬物」続き)

4-14.
It is clear that the use of illicit drug is very harmful to individuals, to their families, and to society. What is even clearer, however, is that the “War on Drugs,” just like the war on alcohol during prohibition, is the cause of more harm than it prevents. Most countries have abandoned their own wars on drugs today and reverted to harm-reduction policies (i.e., policies aimed solely at minimizing harm). The United States is among only a handful of countries that reject harm-reduction programs favored by agencies such as the World Health Organization (WHO) and the United Nations Children’s Fund (UNICEF). Such programs involve syringe exchange programs, drug subustitution programs (such as methadone for heroine), and - most importantly - decriminalizing of drug usage. Yes, such practices do upset many people's sense of morality, but it does not seem to be the practical thing to do if our goal is to reduce the overall social harm of drugs in our society. According to the drug expert Alex Wodack, "No country which has started harm reduction programs has ever regretted that decision and then reverted their commitment".(p.228)

17 manolo 2013-09-11 22:55:38 [PC]

『ニューズウィーク日本版』、8/13&20/2013、ウィル・カーレス、(「ウルグアイ大麻合法化の波紋」)pp.34-35

5-1.
 ブラジルとアルゼンチンに挟まれた人口330万人余りの南米の国ウルグアイ。この小国が、いま大きな注目を集めている。ウルグアイ下院は先月、マリファナの生産、販売、課税を合法化する法案を僅差で可決した。法案は今年中に上院で審議され、可決される可能性が高い。そうなるとウルグアイはマリファナを全面的に合法化する世界初の国になる。(p.34)

5-2.
 1つの国がマリファナの完全合法化を打ち出した「実験」に、世界の目が注がれている。オランダでは、既にマリファナの使用が合法化されている。米コロラド州も同じだ。ウルグアイの合法案は、これらとどこが違うのか。ウルグアイのマリファナ合法化法案が注目を集める理由を5つ挙げてみた。(p.34)

5-3. ① ともかく世界で初めて
 ウルグアイがやろうとしているマリファナ自由化は、他国やアメリカ各州政府が実施しているものよりはるかに急進的だ。例えばオランダでマリファナの使用が合法化されたのはかなり前だが、大麻の栽培は今も禁止されている。ところがウルグアイ政府は、民間企業による栽培・収穫まで認め、大麻栽培を管理しようという計画だ。目的は、パラグアイなど近隣諸国から輸入されている大麻を抑えることだ。いま街なかで取引されているものより品質が良く、安価で安全な製品を提供する。しかもそれらにきちんと課税し、消費量に目を光らせる。(p.34)

5-4.
 「大変な施策だ」と語るのはハナ・ヘッツァー。科学的根拠のある麻薬政策を支持する団体「ドラッグ政策連盟」(本部ニューヨーク)のメンバーで、ウルグアイの動向を追うため首都モンテビデオに滞在中だ。「これまでもウルグアイは先進的な麻薬政策を実施してきた」とヘッツァーは言う。「しかし今回の法案は、他国がとってきたアプローチの1歩先、いや10歩先を行くものだ」(p.34)

18 manolo 2013-09-11 23:05:05 [PC]

5-5. ② 目的は治安の向上
 同性婚の合法化、南米で最もリベラルな人工妊娠中絶法案の可決……このところウルグアイは、先進的な路線を次々と打ち出している。しかし議員たちによれば、今回のマリファナ合法化法案は先進路線の推進より国内の治安を重視したもので、犯罪の増加に対処するためホセ・ムヒカ大統領が昨年打ち出した15の犯罪対策の1つだ。

5-6.
 ウルグアイの犯罪発生率は南米で低いほうだが、犯罪に対する市民の不安感は高まっている。現地で「パスターベース」と呼ばれるコカペースト(コカインの原料であるコカの葉をペースト状にしたもの)の流行に伴って犯罪が増加し、このままでは静かな国だったウルグアイが「犯罪大国」になるのではないかという不安が、今回の合法化法案提出の一因になった。合法化法案の狙いは、魅力的な収入源を奪って麻薬密売業者の活動を妨げること、マリファナ使用者に「安全地帯」を提供すること。そうすれば、彼らが他の違法ドラッグの誘惑に駆られることも防止できる。(pp.34-35)

5-7. ③ 法案支持率は意外に低い
 最近の世論調査によれば、過半数を優に超える国民がマリファナ合法化案を支持していない。人口のほぼ半数が住むモンテビデオを除けば、市民の価値観はかなり保守的だ。保守派野党の国民党に所属するベロニカ・アロンソ議員は、マリファナを合法化して政府が市場を管理するのは無理だとみている。マリファナ常用者が増え、国民の健康に悪影響が及ぶことを問題視する議員も多い。4月に行われた世論調査では、合法化反対が66%、賛成はわずか25%だった。世論を正しく反映させるため、合法化法案については国民投票を実施すべきだと主張する議員もいる。(p.35)

5-8.
 政府が法案を強引に成立させようとしているとの批判を受けて、ムヒカ大統領率いる拡大戦線党は4月、国内各地でタウンミーティングを実施した。同時にNGOの連合が「責任ある合法化」というPRキャンペーンを展開し、国民の法案の利点を訴えている。法案が昨年つくられた時に比べれば、その内容は大幅に後退している。例えば当初、政府は国営の独占企業でマリファナの栽培・販売を行う計画だったが、今年に入って反対派に歩み寄る形でこれを断念した。だが、それでも合法化法案が大きな議論を呼ぶことには変わりない。(p.35)

19 manolo 2013-09-11 23:10:45 [PC]

5-9. ④アメリカ主導の「麻薬戦争」には目障りな存在だが、邪魔することが目的ではない。

 世界のメディアは、ウルグアイが南米のマリファナ政策に「指導力」を発揮していると書き立てている。アメリカが始めた「麻薬戦争」に代わる施策を提示しているとみているからだ。しかしウルグイアイの議員たちは、アメリカを敵に回そうとしているわけではないと主張している。ウルグアイはあくまで自国の問題に新しい解決策を見つけようとしているのだという。「世界のモデルになろうなどというつもりはない」と、合法化推進の中心人物セバスティアン・サビニは言う。「国内の大麻問題を解決したいだけだ」(p.35)

5-10.
 それでも合法化法案が下院で可決されたことによって、ウルグアイは麻薬規制に関係するいくつもの国際機関と対立することになるだろう。既に国連の国際麻薬統制委員会は、ウルグアイの動きに懸念を表明し、「国として今後も、大麻を含む麻薬の使用を制限する国際法を遵守する」よう促している。(p.35)

5-11. ⑤ 合法化法案の成立はほぼ確実

 合法化法案の行方を左右したのは拡大戦線党の議員ダリオ・ペレスだった。医師でもある彼はこれまでも法案を強く批判しており、彼が反対すれば法案は否決されかねなかった。採決当日、ペレスの下院での発言が注目された。彼が、懸念は残るものの法案を支持すると明らかにすると、ツィッター上には「可決確実!」という言葉が駆け巡った。「ダリオ・ペレスが法案支持。ウルグアイでマリファナが合法に」。ジャーナリストのパブロ・ザノッキは、採決の数時間前にこうツイートした。(p.36)

5-12.
 ペレスが賛成したことで、与党は下院で法案を可決に持ち込めた。今度は上院で審議されるが、ほとんど問題なく可決されると予測されている。後は、ムヒカ大統領による署名を待つだけになる。彼は署名しないはずはない。カリスマ性を兼ね備えたムヒカは、マリファナ合法化法案の成立に大変な力を注いできたのだから。(p.35)