2 manolo 2013-10-17 19:14:24 [PC]
1-2. イスラムの教えを国の礎とする同国では、夫婦以外の性行為は「姦通罪」に問われかねない。既婚者の場合は石打ちによる死刑、未婚者ならむち打ちが科されることもある。この女性は中絶手術を受けるため15の病院を訪れたが、どこも断られた。法律で、中絶手術は母体に悪影響がある場合に限られているためだ。悩んだ末、テヘラン市内の薬の闇市場で密売人から10粒の中絶薬と注射薬を買った。代金の500万リアル(約2万円)は交際相手がアルバイトで稼いだ。「錠剤を飲み、自分で静脈に注射した。3日間、出血がとまらなかった」。病院に駆け込み、ようやく手術を受けることができた。
1-3. 昨年10月、別の男性と結婚したが、子供に恵まれない。「中絶がいけなかったのか」と悔やみつつ、街中でデートする未婚のカップルを取り締まる警察にも怒りが沸く。「男女に家の中で会えと勧めているようなもので、不健全な関係を助長している。逆効果だ」
1-4. 【年8万件、8割違法】 研究者によると、イランでは年間8万件の中絶手術が行われ、その8割は未婚女性を中心とする違法なもの。薬による流産などを含めると、人工中絶の件数はさらに増えるという。無免許で手術を引き受ける者も多く、技術の未熟さから不妊になる女性も少なくない。その場合、女性は泣き寝入りするしかない。毎月5~6人の未婚女性を手術するというある産科医は取材に、「女性と生まれてくる子どもを不幸にさせないためだ」と弁解した。
1-5. 背景には、未婚女性が出産しても出生届が受理されず、子供が無国籍扱いになる現実がある。イスラムの教えは家族関係を重視するため、イランではそもそも未婚女性が出産する事態は想定されていないのだ。中絶できなかった未婚の親は最終的に、赤ん坊を捨てたり、孤児院に預けたりするしかない。テヘラン北部のアメネ孤児院では生後数か月から7歳まで約300人が暮らす。その7割は、夫婦でない男女の間で生まれたという。
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