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租税回避地 (コメント数:3)

1 manolo 2013-09-11 12:48:20 [PC]


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出典:『地図で読む世界情勢 -激変する介在とEU危機-』、ジャン‐クリストフ・ヴィクトル、河出書房新社、8/30/2012、(「非難される租税回避地」)pp.86-88

1-1.
 2000年、「租税回避地」とされる52の国と地域を特定した初めてのリストとが公表された。うち33は主権国家で国連の加盟国、19の地域は主権国家と結びつき、その半数以上はイギリスだった。正確とはいえないこのリストの出所は三つの国際的な評価・調整組織で、OECDと金融安定化フォーラム(FSF)。金融活動作業部会(FATF)である。(p.86)

「租税回避地の地図」
2009年、G9は二重のリストを発表した。一つはグレーリストで、税の国家基準を適用すると約束しながら、実際は実行していない国。もう一つはブラックリストで、約束すべてを拒否している国、これは4カ国だ(コスタリカ、ウルグアイ、マレーシア、フィリピン)。その後、後者はこのリストに抗議し、税規制を改革すると約束すると約束したのを受け、ブラックリストは破棄され、グレーリストだけに再編成された・・・2010年末、このうち〔42カ国と地域〕数カ国が透明化に合意し、他の国が約束したことで、このリストはわずかに9カ国になった。(p.87)

2 manolo 2013-09-11 13:11:38 [PC]

1-2. 【租税回避地とは?】
 租税回避地の仕組みは得目新しいものではなく、貿易・金融・税規制を迂回する流れはつねに存在していた。それでも第2次世界大戦後、第2の独立の波が起こったとき、いわゆる租税回避地が加速度的に形成されたのが確認できる。これらの領土の多くは、それまでは貿易の通過地域でしかなく、生産地域でも開発地域でもなかった。たとえば、三角貿易を受け継いだカリブ諸島やヴァヌアツ、キリバス、バハマなどで、かつてイギリスの戦略的地域として機能していた。これらの国が独立した時点で、本国は政治的・財政的支援をやめ、多くの新国家は発展のために観光や金融を選択することになる。(p.86)

1-3.
 租税回避地の特徴は、国際的資金の流通が完全に自由なこと、銀行の秘密遵守がが強固または完全なこと、企業登録が容易で早いこと、そして非居住者の税金がかからないことだ。また、租税回避地になるには、政治的・経済的に安定していることを強調しなければならず、資金洗浄(マネーロンダリング)の場として有名であってはいけない。さらに、大証券市場(ロンドン、ニューヨーク、パリ、東京、上海)の支援を利用する力もなければならない。後者はオンショア(通常の金融)とオフショア(規制外の金融)の仲介役をしているからだ。(pp.86-87)

1-4.
 租税回避地がもたらす利益は無限にある。まず、資産を秘密裏にしておきたい個人の富豪(税金対策、相続税の免除など)に「名目上」の支払い場所を与える。このやり方は倫理上非難されるべきだが、法律を迂回する方法を知っていれば法的に可能である。ここ数十年、世界で大富豪が増加したことで租税回避地への流出現象はより強まった傾向があり、100万ドル以上の資産を預ける個人の数は、1996年の450万人から2010年には1000万人ほどになっている。(p.87)

1-5.
 租税回避地はまた大企業にも奉仕している。たとえばヨーロッパの有名大企業上位50社はすべてヨーロッパか他の地域の租税回避地に存在し、そこに子会社の20%の住所登録をしている。このやり方はとくに多国籍大企業に有利で、税の重圧を軽減することができる。税率の高い地域での利益を実質以下にし、子会社のある租税回避地での利益を最大にするのである。(p.87)

3 manolo 2013-09-11 13:27:27 [PC]

1-6.
 しかし、オフショアの場合はとくに犯罪組織を引きつけ、密輸やコピー商品、売春、人身売買、麻薬の密売による収入が預けられている。麻薬の密売で得たお金を洗浄する仕組みはよく知られているが、租税回避地を通過した犯罪がらみのお金の総額は謎のままだ。(p.87)

1-7. 【租税回避地は終わりにしよう】
 租税回避地は外国の資金をまさにポンプのように吸い上げている。ここを通過するお金の量を計算するのは秘密遵守もあって難しいのだが、それでも世界の金融取引の半分はオフショアを通ったいると推定される。ただ、世界を震撼させた2008年の経済・金融危機でこの様相は少し変わった。なぜなら、危機を引き起こし、拡大させた責任の多くはオフショアの金融機関にあるからだ。多くの銀行や投資ファンドは債権の一部をここで隠蔽することができていた。(p.87)

1-8.
 世論に押させる形で、G20の首脳たちは2009年のロンドン・サミットで租税回避地対策をアジェンダに組み入れた。このとき、租税回避地を特定して処罰する一連の措置が決められたのだが、実際の行動はヨーロッパのオフショアと、税務行政間の情報交換にとどまっている。(pp.87-88)

1-9.
 2011年現在、租税回避地対策全体の成果はきわめて物足りない。G20が作成したグレートブラックのリストに載った国が改善を約束しただけで、それらの国名はリストから消されてしまった。あとはわずかながら透明化への努力が見られるだけである。しかし規制の観点から見れば、租税回避地の息の根を止めるのは簡単だろう。国際的な大証券市場(東京、ニューヨーク、ロンドン、上海など)がオフショアがらみの取引すべてを禁止すればいいだけだ。しかし現実は想像以上に複雑でもある。多くの租税回避地は主権国家で、税制はその国の主権の管轄内である。それに加えて、世界の多くの国が秘密裏に租税回避地との関係を維持している。さらに、不透明であることから租税回避地を特定できないこともある。そして最後は、この仕組みから利益を得ている多くの要素があって、なくなることが必ずしも得策と思われていない。(p.88)
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