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南シナ海領有権問題 (コメント数:10)

1 manolo 2013-07-28 20:13:09 [PC]


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出典:WEDGE、August 2013、ハーマン・クラフト(フィリピン大学ディリマン校政治学部准教授、「『南シナ海は我が領海』〝侵犯〝続ける中国に打つ手探るフィリピン」、pp.20-22

1-1. 2013年6月21日、国際海洋法裁判所(ITLOS)の柳井俊二所長はフィリピンのフランシス・ハルレーザ訟務長官に、南シナ海の海域及び陸地に対する中国の領有権主張について、フィリピンが起こした訴えを審理する仲裁法廷の5人の仲裁人(判事に相当)を任命し終えたと伝えた。仲裁人の任命は、1月のフィリピンの提訴で始まった国連海洋法条約(UNICLOS)に基づく調整プロセスが新局面に入ったことを意味している。(p.20)

1-2. 調停要請には幾多の争点があるが、最も重要なのは、中国が南シナ海ほぼ全域を中国の一部と主張する根拠としている「9点の破線(九段線)」の適法性だ。フィリピン政府がこうした行動に出たのは、南シナ海を巡る自国(および他の東南アジア諸国)(との海洋紛争で自己主張を強める中国に対し、取り得る選択肢が狭まっているからだ。(p.20)

1-3. 09年3月10日、グロリア・アロヨ大統領(当時)はフィリピンの領海の基線を再定義する法律に署名した。基線の定義はUNCLOSの条項を順守するために行われたのもので、南シナ海周辺の陸地についてやはり領有権を主張するその他東南アジア諸国も同様のことをした。(p20)

1-4. 法の制定に対する中国の抗議は予想されていたが、これほど真剣な抗議になるとは想定外だった。フィリピンは一方的に領有権を主張したというよりは、むしろUNCLOSに課された期日を守ろうとしていた。ところが中国政府は、フィリピンは東南アジア諸国連合(ASEAN)の「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)」の精神に反していると主張した。DOCとは法的拘束力のない合意事項で、基本的に、署名国(中国とフィリピンを含む)に対し、南シナ海の周辺海域および陸地の現状を変えるような活動にかかわらないように要請するものだ。(p.20)

1-5. 法律の署名後、この海域でフィリピンの漁師が中国から嫌がらせを受けた事件の報告が増えると同時に、同海域で目撃される中国の巡視船の数も増えた。また、事実として公式には確認されていないが、中国空軍の軍用機による上空通過も報告されている。(p.20)

2 manolo 2013-07-28 20:42:31 [PC]

1-6. フィリピンと中国との関係悪化はスカボロー礁を巡る中国の海洋監視艦とフィリピン沿岸警備隊(PCG)の船舶のにらみ合いで最悪の状況に落ち込んだ。12年4月10日に始まったにらみ合いは、ほぼ3カ月経ってようやく終わった。スカボロー礁は、最も近いフィリピン領土から西に220キロ離れた場所にあり、国際的な海図では、スペインの植民地時代以降、歴代フィリピン政府の施政下にあることが認められてきた。(pp.20-21)

1-7. しかし中国の地図上では、九段線で囲まれた中国領の中に入っている。九段線の意味するところは依然はっきりしないが、南シナ海問題に関する中国の公式発言は、この線に囲まれたすべての海域と陸地に中国の主権が及ぶことを暗示している。ITLOSに対するフィリピンの訴えが問題にしているのは、この定義と中国の領有権主張の根拠だ。フィリピン政府は、調停は「国際法に則った平和的かつ永続的な形の紛争解決だ」と主張し、自国の行動を擁護している。これに対し、中国は、第三者が関与する取り組みを拒み、領有権を主張する国同士が一対一で交渉を行うべきだと訴えている。(p.21)

1-8. 中国の純然たる大きさ、特に同国が誇る海軍、海洋能力の優位性から、フィリピンは2カ国ご協議では不利な立場になることを認識している。そこでフィリピンは法の支配を象徴する国際機関に訴えることで、国際世論にアピールし、中国の優勢性に対抗しようとしたわけだ。(編集部注=仲裁人は、両国政府と協議し、審理の進め方を決める。そのうえで、仲裁人は国際法に基づいてどちらかの主張が妥当かを判断する。一方の当事国が申し立てれば、相手国が拒否しても仲裁手続きは進むため、何らかの裁定は出ることとなる。しかし、裁定には強制力がな、実効性に乏しい部分もある)(p.21)

1-9. より戦略的なレベルでは、フィリピンは海洋警備能力の強化を表明しており、イタリアや韓国を含め、多様な調達先からの警備艇購入を増やそうとしている。だが、この取り組みが自国領海に関するフィリピンの目先の懸念に与えるインパクトは限られている。警備艇などの購入予算は限られているからだ。ベニグノ・アキノ3世大統領は既に、フィリピン軍(AFP)の近代化に18億2000万米ドル(約1800億円)の予算を割り当てることを約束している。この金額は、中国が13年の国防予算として正式発表した額の1割強に過ぎない。(p.21)

3 manolo 2014-05-18 18:19:41 [PC]

1-10.
 アキノ大統領は、近代化計画には、17年までに新型フリゲート艦2隻、対潜水艦戦能力を備えたヘリコプター2機、沿岸警備用の高速船3隻、水陸両用強襲車8台の購入が含まれていると述べた。すべてが計画通りに手配されたとしても(遅延が生じる可能性は極めて高い)、フィリピン海軍の能力強化に向けた取り組みは、実を結ぶまでに5年かかる。(p.21)

1-11
 それより迅速に効果を発揮できるのは、米太平洋軍とAFPの協調、協力の拡大だ。米戦略国際問題研究所(CSIS)が11年6月23日にワシントンで開催した会議で、フィリピンのアルバート・デル・ロサリオ外相は「米国は今もフィリピンにとって一番の戦略同盟国だ」と強調し、フィリピンと米国の関係をリセットすることが「同盟関係が国内の目標を果たすとともに、世界の安定に貢献し続けるうえで不可欠になった」と指摘した。(p.21)

1-12.
 公式声明では、中国に向けた措置ではないと明言されているものの、この2年間フィリピンを訪れる米国の軍艦の数が増えている。軍艦には空母や攻撃型原子力潜水艦も含まれている。軍艦には空母や攻撃型原子力潜水艦も含まれている。フィリピンは米国によるアジアへの「ピボット(旋回)」の発表を歓迎し、フィリピンへの米軍の定期ローテーション配備に向けて準備を進めている。(p.21)

1-13.
 また、フィリピンにとって米国は、海軍の各種装置や軍装備部品の主たる調達先でもある。フィリピンは既に、退役後に修復された沿岸警備用ハミルトン級カッター1隻の引き渡しを受け、2隻目の最終納品を待っている。どちらもミサイル配備能力は持たないが、2隻目はミサイル配備用に改造されていると伝えられている。(pp.20-21)

1-14.
 しかし米国との関係は南シナ海でいざという事態が生じ、フィリピンの安全保障が脅かされる状況になれば米国はフィリピンを支援するという「期待」に基づいている。この点は、日本の場合と異なる。尖閣諸島に対する日本の支配が脅かされた場合、米国がは日本を支援することに完全にコミットしている。(p.22)

4 manolo 2014-05-18 18:46:01 [PC]

1-15.
 それでも、南シナ海、東シナ海双方において中国が強硬姿勢を強めていることは、フィリピンと日本を非常によく似た難局に立たせている。このところ、フィリピンと日本の間では安全保障の強化を模索するべきだとの意見が出ている。どちらも米国の同盟国であり、たとえ非公式なものであろうと、3カ国間の安全体制を確立することはできるはずだ。そうした体制の模索を促す共通の懸念材料は確かに存在する。(p.22)

1-16. 【史上最高水準に達する日比安全保障協力】
 フィリピンと日本は12年7月に、向こう5年間を対象とする防衛協力拡大に関する合意文書に署名した。合意内容は、AFPと自衛隊の軍事交流、フィリピン海軍と海上自衛隊の相互訪問、内外の安保問題に関する会合の実施、防衛技術、知識共有。海洋安保に関する問題、情報交換などをカバーしていた。また、合意文書は、AFPの平和維持活動(PKO)センターと日本の防衛省統合幕僚学校国際平和協力センターとの協力拡大を明記している。(p.22)

1-17.
 第2次安倍晋三政権発足後、岸田文雄外相の最初の外国訪問先は、今年1月に訪れたフィリピンだった。岸田外相は、フィリピンと日本は戦略的パートナーシップを強化する必要があると述べた。この流れに沿って、日本はPCGによる訓練強化、通信システムの改善、装置のアップグレードを支援することを約束した。今後2年内にPCGに移転される多目的先10隻は日本の資金で賄(まかな)われる。両国が直面する状況を認識するフィリピンは、日本の「再軍備」に関する提案を支持した。(p.22)

1-18.
 フィリピンと日本とがともに直面する戦略的状況は両国間で進む戦略・防衛協力を拡大させる大きなきっかけになった。両国政府が現在行っている協力のレベルは、日比関係の歴史上、例を見ないものだ。(p.22)

1-19.
 では、現状から踏み込み、安保関係をさらに強化する余地や理由はあるだろうか。東アジアにおいて両国が共有する状況を考えると、フィリピンと日本の戦略関係は維持すべきである。だが現状の枠を超えて関係を強化すれば、非常に危険な領域に足を踏み込む。というのも両国の関係強化が中国に向けられていることを否定するのが難しいからだ。(p.22)

5 manolo 2014-05-18 19:00:53 [PC]

1-20
 日本の海洋巡視船が南シナ海で活動すれば、中国がこれを挑発以上の行為と見なすだけではない。他の東南アジア諸国は恐らく、日本と中国の対立関係を東アジアの玄関先に持ち込む行為とみなすだろう。日比安保協力の強化は今後、外交努力に向けられるべきだ。特に、係争中の領土・領海を巡る当該国の行動規範の制定に向けて努力すべきだろう。(p.22)

1-21.
 ASEAN諸国は長らく、南シナ海の問題をカバーする行動規範の採用を求めてきた。中国が署名する形で行動規範が完成すれば、現在の地域内の緊張がさらに危険なレベルにエスカレートする可能性を小さくする上で大いに役に立つだろう。同時に、東シナ海の状況を規定する同様の取り決めの雛型になるはずだ。(p.22)

1-22.
 東シナ海と比べた場合の歴史的背景の違いと力学の違いを理解した上でも、平和的な関係へ向けた持続的な道筋を見つけるためには、やはり、古くに確立され、維持されてきた立場を超えて物事を考える必要がある。日比協力関係は今後、これを念頭に置いて、その協力の矛先を向けるべき新たな針路を見いださなければならない。(p.22)

6 manolo 2014-06-15 06:25:25 [PC]

【日本・フィリピン間で進む防衛協力拡大の主なポイント】

2012年7月2日
・防衛相、自衛隊とフィリピン軍のハイレベル、実務レベル交流の実施。
・自衛隊とフィリピン軍の相互訪問や訓練の実施
・海洋権益の擁護や宇宙・サイバー空間の擁護、災害救助活動などで能力構築支援に関する協力
・国際平和協力活動における協力促進(統合幕僚学校平和協力センターと比国軍PKOセンターの対話、交流)

2013年1月~5月
・日本はフィリピンと、「戦略的パートナーシップ」に基づく協力を深化させていく
・2014年初めにも、政府開発援助(ODA)も活用して、フィリピン沿岸警備隊(PCG)に40メートル級巡視船10隻を供与
・PCGの海上通信システム強化、能力構築支援を実施
・海上保安庁にPCGの担当者を研修受け入れ
(出所)外務省資料、防衛相資料、各種報道よりウェッジ作成(p.22)

7 manolo 2016-03-09 00:25:04 [PC]

出典:『ニューズウィ-ク日本版』「南シナ海「軍事化」中国の真意は」、3/15/2016、pp.38-40

軍事
注目と議論の中心になっている西沙諸島へのミサイル・戦闘機配備だが
本当に軍事バランスを変えるのは南沙諸島での動きだ

2-1.
 南シナ海における中国の軍事的進出が止まらない。最近も、西沙(パラセル)諸島に当たるウッディー(永興)島へ新たに紅旗9地対空ミサイル発射台と殱11戦闘機が配備され、大いに注目を集めている。とりわけ危機感を抱いているのはアメリカ政府で、中国による南シナ海のさらなる「軍事化」だと強く反発している。(p.38)

2-2.
 ジョン・ケリー米国務長官は先月、「習近平(シー・チンピン)国家主席はバラク・オバマ大統領とローズ・ガーデンに立ち、南シナ海を軍事化する意図はないと明言した」と指摘し、「しかし、あれやこれやの軍事化が進んでいることを示す証拠」は山ほどあるとした。その後、米上院軍事委員会の公聴会に出席した米太平洋軍のトップ、ハリー・ハリス司令官の言葉はさらに単刀直入だった。「私の見解では、中国は明らかに南シナ海の軍事化を行っている。それを否定するのは、地球は平らだと言うに等しい」(p.38)

2-3.
 そのとおりだろうが、ウッディ―島へのミサイル配備を新たな「軍事化」の証拠と論じるのには無理がある。「軍事化」の概念には何らかの現状変更が含まれるはずだ。しかし、中国は半世紀以上も前からこの島に軍隊を駐留させている。また、この島は人工島ではなく、以前から中国が実効支配している。つまり、突貫工事の埋め立てで造った人工島に滑走路や港を建設している南沙(スプラトリー)諸島ファイアリークロス礁の状況とは根本的に異なる。(pp.38-39)

2-4.
 ウッディ―島は自然にできた、昔からある島だ。地表面積は2平方キロを超え、西沙諸島では最大の島であり、56年に中国軍が占領して今日に至る。この島には「三沙市」の市庁舎がある。中国政府が12年に、南シナ海の島々を管轄する行政単位として新設したのが三沙市で、西沙諸島と南沙諸島に加え、マックルズフィールド堆やスカボロー礁も管轄している(三沙は中国語で「3つの島」を意味し、具体的には西沙諸島、南沙諸島と中沙諸島を指す)。(p.39)

8 manolo 2016-03-09 00:27:56 [PC]

2-5.
 また新華社通信によれば、南シナ海の多くの島と異なり、ウッディ―島には、三沙市設置の時点でかなりの数の民間人が暮らしていたという。兵士も含めれば島の住民は1000人を超えるとされ、島には彼らの生活を支えるために政府の出先機関や病院、学校があり、銀行やスーパーマーケットまである。空港もある。軍事的な役割だけでなく、海南島の海口美蘭国際空港との間を往復する民間機も受けて入れている。最近の拡張工事で滑走路が延び、今ではボーイング737型機の離発着も可能になった。そしてウッディー島には、何十年も前から中国軍の基地がある。紅旗9地対空ミサイルや殱11戦闘機の配備も、今回が初めてではない。(p.39)

2-6. 【配備は恒久的なものか】
 米太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官が語っているとおり、中国は過去に少なくとも2回、この島に紅旗9地対空ミサイルを配備している(いずれも軍事演習の一環だったが)。殱11戦闘機も、直近では昨年11月に飛来している。問題は、今回の配備の背景にある事情だ。「特に新しい展開ではないが、いったい中国側の意図は何なのか。いつまで配備を続けるつもりなのか。そしてこれら兵器システムの前方配備は恒久的なものなのか。それが問題だ」と、スウィフトは断言する。(p.39)

2-7.
 アジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)の専門家らが先に発表した分析で触れているが、紅旗9地対空ミサイルが配備されている以前から、ウッディ―島には複数の軍事施設が存在し、対空戦闘能力があったと考えられる。「同島には以前から2700メートルの滑走路、レーダーや航空機の格納庫があり、防空の備えがあった」とAMTIは指摘している。(p.39)

2-8.
 もちろん、今回の新規配備を軽視していいと言うつもりはない。もしも最新鋭の兵器システムの前方配備が恒久的なものであれば、それは南シナ海における人民解放軍の戦闘能力(接近阻止能力を含む)の向上を意味する。だがもっと重要なのは、ウッディー島での、最近の動きから、中国が今後、南沙諸島の新たな拠点でどんな行動に出るかを読み取れるかもしれない点だ。AMTIも指摘するように、結局のところ「ウッディ―島は南沙諸島、特にファイアリークロス礁、ミスチーフ礁、スービ礁における中国の進出の先行モデル」と言える可能性が高い。(pp.39-40)

9 manolo 2016-03-09 00:29:41 [PC]

2-9.
 西沙諸島と南沙諸島では、軍事化の意味が異なる点も見逃してはならない。米戦略国際問題研究所のボニー・グレーザー上級研究員が言うように、中国は「ずっと前に」西沙諸島を軍事化しており、「今は最新鋭の装備を導入している」段階だ。一方の南沙諸島では、中国は「軍事的にも民生用にも利用できる設備を『公共財であり、防衛だけが目的』と言い逃れしながら大量に建設してる」とグレーザーは指摘する。南シナ海を「軍事化する意図はない」という習の発言は特に南沙諸島について述べられたものだ。そうであれば、南シナ海における中国の本当の意図が試されるのは南沙諸島だとうことになる。(p.40)

2-10.
 南沙諸島と西沙諸島にはもう1つ大きな違いがある。西沙諸島に関しては、領有権争いが存在しないという認識を中国側が持っている点だ。南沙諸島とは異なり、西沙諸島については(かつて領有権を主張していた南ベトナム政府軍が、74年の軍事衝突で中国軍に蹴散らされた結果)現に島々の領有権を主張し、実効支配しているのは中国だけだ。現在のベトナム政府も西沙諸島の領有権を主張しているが、中国はそれを認めず、解決すべき領有権問題は存在しないとする(尖閣諸島に関する日本の立場と似ている)。北ベトナム政府が56年に領有権を放棄したとも、中国は主張している。それゆえ、ウッディ―島における中国の軍事展開について問われた中国外務省の華春榮(ホア・チュン・イン)報道官は、「西沙諸島は中国固有の領土であり、領有権問題はまったく存在しない」と答えた。(p.40)

2-11.
 さらに、領有権問題が存在しない以上、中国とASEANが署名した02年の「南シナ海行動宣言」の対象に西沙諸島は含まれないと付け加えている。同宣言は、南シナ海における「平和と安全を脅かすような挑発行為の自制」などについて合意したものだ。(p.40)

2-12. 【騒ぎ過ぎるのは逆効果?】
 この宣言があるからといって、中国政府が南沙諸島に軍事施設を建設しないとは限らない。何しろ、中国には南沙諸島も自国の領土と考えているのだから。中国国防部の呉謙(ウー・チェン)報道官は、将来的に南沙諸島にミサイルなどを配備する予定があるか問われると、「中国は過去も現在も、一時的にでも恒久的にでも、自国の領土にどんな兵器や装備を配備するかを決定し、実行する正当な権利を有する」と答えた。(p.40)

10 manolo 2016-03-09 00:30:39 [PC]

2-13.
 ウッディ―島での最近の動きがここまで懸念されるのは、南沙諸島でも似た展開になる恐れがあるからだ。グレーザーに言わせると、中国は南シナ海での「接近阻止能力を獲得し、領海と領空の支配を強化しようとしている」ようだ。しかし同時に、これまで示したので同じ理由で、米当局者や安全保障のアナリストたちはウッディー島での動きばかりに目を奪われるべきではない。実際、ウッディ―島のミサイルや戦闘機配備に焦点を当て過ぎるのは逆効果をもたらしかねない。「中国の軍事化を騒ぎ立てるいつものパターンに陥るのが少し心配だ」と、米戦略国際問題研究所のアジア海事問題の専門家グレゴリー・ポーリングは言う。「アメリカや周辺国にとって本物の戦略的な問題だ。注意深い監視と政策対応は必要だが、アメリカが大騒ぎすれば墓穴を掘ることになる」(p.40)

2-14.
 AMTIも、南沙諸島の人工島へのレーダー施設建設が長期的にはより大きな懸念材料だと強調する。「西沙諸島のウッディ―島への紅旗9地対空ミサイル配備は注目に値するが、南シナ海の軍事バランスを変えることはない。しかし、「一方、南沙諸島へのレーダー施設の建設は、軍事バランスを大きく変える恐れがある」。西沙諸島に目を奪われているうちに、南沙諸島で起きる重大な軍事的変化を見落とせば、それこそ中国政府や中国軍思うつぼだ。(p.40)
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