Tokon Debatabank II

M & A (コメント数:6)

1 manolo 2014-06-11 10:04:28 [PC]


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出典:『週刊東洋経済』、6/7/2014、
「企業買収 和製M&A 失敗の研究」、pp.48~52

日本企業による巨額の海外企業買収はかつてないほど増加。今や政府の成長戦略に位置づけられ、空前のM&Aブームが起きつつある。ところが過去を振り返ると、買収後にさんざんな顛末を迎える企業が実は少なくない。買収の成否を分かつものは何なのか。その真相に迫る。

2 manolo 2014-06-11 10:06:31 [PC]

1-1.
 大型の海外M&A(海外企業の合併・買収)が、毎週のように全国紙の1面をにぎわしている。5月15日には、サントリーホールディングスが米ビーム社の買収を完了し、両社トップがそろって会見を開いた。買収金額は1.6兆円と巨額だ。格付け会社のムーディーズ・ジャパンはサントリーを2ノッチ(段階)格下げ。しかし、「巨額の財務負担から格下げしたが、ビーム買収の戦略は悪くない」とセメトコ真理子・主任格付アナリストは笑顔で語った。その1週間後の5月22日には、「味ぽん」で知られる調味料大手のミツカンホールディングスが、英蘭系の食品大手・ユニリーバからパスタソース事業を2150億円で譲受すると発表した。同事業は、「ラグー アンド ベルトッリ」という米国で有名なブランドを持つ。(p.48)

1-2.
 ソフトバンクは2兆円以上の巨額買収を狙い、米当局と折衝中だ。同社は2013年に米携帯通信大手のスプリントを1.8兆円で買収。現在では、同じく米携帯通信大手のTモバイルUSの買収を狙っている。(p.48)

1-3.
 M&Aの世界では、1000億円以上を大型買収と呼ぶ。その大型の海外M&Aを政府が後押しする。政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC)を通じた融資の枠組みを広げる秘策が、6月の成長戦略に盛り込まれる見通しだ。(pp.48-49)

1-4. 【第一三共がインド撤退 実は討死にだらけ】
 空前の海外M& A ブームが訪れそうな勢いだが、それに水を差す不穏なニュースも複数ある。4月には、製薬大手の第一三共が、08年に4994億円を投じて買収した後発大手・印ランバクシー・ラボラトリーズの実質売却を発表した。同じく4月NTTドコモも09年から合計2667億円を出資していた印タタ・サービスシズリミテッドの保有株を売却すると明らかにした。(p.49)

3 manolo 2014-06-11 10:10:44 [PC]

1-5.
 実は過去を振り返ると、海外大型案件は「失敗だったのでは」と疑いたくなるものばかり。「これまで欧米の不景気や円高を背景に2度の買収ブームがあったが、結果はほとんど討死に」と早稲田大学大学院の服部暢達・客員教授はあきれ顔だ。一方で、成功例から学ぶものもある。過去から学べば、「多くの日本企業は未来永劫、海外M&Aが苦手なまま」と悲観しなくてもいい。なぜ過ちは繰り返されるのか。そして、どうすれば失敗せずに済むのかを追った。独自分析でわかった原因や解決策は意外なものだった。(p.49)

1-6.
 M&A助言会社のレコフによると、過去に海外M&Aが集中したのは2006年。この年は日本たばこ産業(以下、JT)が2.2兆円で英ギャラハーを、ソフトバンクが1.9兆円でボーダーフォンを、日本板硝子が英ビルキントンを6160億円で買収した年だ。左上図の棒グラフを見ると、「国内勢同士(M&Aの専門家は『イン-イン』と称する)」国内から海外(同じく『イン-アウト』。本誌では『海外M&A』)」「海外から国内(『アウト-イン』)を持ち合わせたM&Aの総額は乱高下しているこれは国内外の景気や為替の変動による。ところが同図の折れ線グラフを見ると、10年以降、海外M&Aの比率は景気や為替にかかわらず、60%前後の高い比率を示している。今年1~3月は80%台と高い水準である。(p.50)

1-7.
 海外M&Aを地域別に見ると、件数ではアジアが首位だが、金額では欧州がトップだ。1件当たりの平均単価を見ると、欧州はアジアの3倍だ(13年)。これはⅠ3年に欧州で巨額案件が成立したからだ。アジアで巨額だったのは三菱UFJファイナンシャルグループ(以下、MUFG)によるタイのアユタヤ銀行買収(6760億円)くらい。これに対して欧州では、LIXILグループによる独グローエ買収(3816億円)、MUFGの独PBキャピタル買収(3563億円)、オリックスの蘭ラボバンク買収(2420億円)と目白押しだ。(pp.50-51)

4 manolo 2014-06-11 10:11:57 [PC]

1-8. 【失敗9割、成功1割 5割が10年以内に撤退】
 いったい海外大型M&Aの何割が成功し、何割が失敗しているのか。それを知るために、本誌は独自に「M&A通信簿」を作った。レコフの調べでは、1985年以降で1000億円以上の大型M&Aは134件ある。ここから金融、電力・ガスを除くと100件になる。さらに株価のない未上場企業、グループ内の整理統合目的、不動産取得目的、純投資が目的の総合商社を除いた48件を、本誌の分析対象とした。M&Aが有力な成長戦略ならば、少なくとも買収後に最高益を更新していても不思議はない。そこで本誌のM&A通信簿では最高益を更新しているかを物差しにした。

1-9.
 高値づかみのM&Aの結果、のれん償却が発生。その均等償却で業績が低迷している会社がある一方、のれんを一括償却して翌期から業績が劇的に改善している会社もある。M&Aの専門家はのれん償却を控除する。しかし、重いのれん償却は、業績低迷の言い訳にはならない。償却を上回ってこその成長戦略だからだ。この通信簿ではのれんの均等償却を考慮しない。(pp.51-52)

1-10.
 営業利益と純利益の最高益を倍以上更新したのはソフトバンク、JT、ブリジストンなどの7件。うち米コロムビアを6440億円で買収後にのれん2652億円を一括償却したソニーを除くと、成功と言えそうなのは48件中わずか6件だ。一方で営業益・純益とも最高益を更新できていないのは14件もあった。営業益だけを取ると、計20件が最高益を更新できていない。第一三共は、印ランバクシー・ラボラトリーズ買収後に、営業益・純益とも最高益を更新していない。発表直後の株価は6.56%も上がるなど株式市場の関係者に大いに期待されたにもかかわらず、である。(p.52)

1-11.
 日本企業の海外大型買収において成功例は実に1割に過ぎず、残りの9割は不本意な結果に終わっていることが、左の表からわかる。しかも、10年以上経過した案件を見ると、13件のうち6件、約5割が事実上撤退、7割が巨額の特損を計上。これは「日本企業が海外M&Aを持続的な利益成長につなげられていない証拠である」(SCRグローバルコンサルティングの松本茂取締役)。(p.52)

5 manolo 2014-06-12 01:25:39 [PC]

出典:『週刊東洋経済』6/7/2014
「5000億かけて第一三共は何を学んだのか」(p.52)

2-1.
 第一三共が2008年に約5000億円を投じてインドの後発医薬品大手、ランバクシーを子会社化した案件は、大型失敗M&Aの代表例となった感がある。当時、新薬の潜在的ライバルである後発薬を抱えることに、株式市場は当惑したものの、新薬開発が困難度を増す中では合理性もあると、その「複眼経営」を好感した。

2-2.
 ところが、株式公開買い付け中の08年9月、米国食品医薬品局(FDA)が品質管理上の理由から2工場へ対米禁輸措置を適用すると、リーマンショックも加わりランバクシー株は暴落。第一三共は買収年度に3540億円ののれん償却で赤字に沈んだ。

2-3.
 その後、第一三共は創業家の現地社長をクビにするなど経営陣を一新、ランバクシーは禁輸解除に向けFDAと協議を重ねる。ようやく11年、改善計画(5年間)でFDAと、5億ドルの罰金支払いで司法省とそれぞれ合意ができた。

2-4.
 同じ11年12月には、半年間の独占販売権を持つ大型高脂血症薬、リピトールの後発薬を発売。同様の独占権を持つ大型後発品が順次投入され波に乗るかと思われた矢先、リピトール後発品が異物混入でリコールに。大型品の承認もストップした。

6 manolo 2014-06-12 01:26:40 [PC]

2-5. 【FDAの信用を完全に失う】
 業界関係者は言う。「あれで完全にFDAの信用を失ったのではないか」。12年9月~13年1月、さらに2工場が禁輸となり、4月、第一三共は、インド同業2位のサンによる株式交換でのランバクシー吸収合併に同意した。12月に契約が完了すれば、第一三共はサンの9%株主になる。

2-6.
 この案件から得られる教訓の一つはデューデリジェンスの大切さ。2工場へはTOB以前にFDAから厳しい指摘があったはずだ(それを軽視したなら経営の問題)。次に、予想外の問題への対応。常勤役員こそ置いたが、現場レベルでは、必要な人材を必要な期間派遣するにとどめた。「外部から専門家をかなり投入したようだが、早期に第一三共から人員を投入していればうまく解決できたのでは」(あるM&Aアドバイザー)。

2-7.
 ほかにも批判的な指摘は可能だがいずれも結果から見た話。今問われるべきは、売却の当否だ。全面的に関与してないため、第一三共に経験はほぼ蓄積されていない。ランバクシーの立て直しを選べば、どんなに苦しく、時間がかかっても世界的な後発薬事業の知見を得る可能性があったが、売却で閉ざされた。
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