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アベノミクス (コメント数:7)

1 manolo 2014-06-30 17:34:03 [PC]


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出典:『WEDGE』、January 2014、「経済の常識 VS 政策の非常識 アベノミクス1年 第1と第2の矢を評価する」、原田泰、pp.76-77

1-1.
 第2次安倍晋三内閣が2012年12月26日に発足して、ほぼ1年が経つ。これまでのアベノミクスの政策効果を評価してみたい。言うまでもなく、アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢からなる。成長戦略の効果は長期的なものであり、評価するには早すぎるので、第1と第2の矢についてのみ考えたい。(p.76)

2 manolo 2014-06-30 18:09:37 [PC]

1-2.【予測を変えてきたエコノミスト】
 金融緩和の効果について、当初多くのエコノミストは懐疑的であった。日本経済研究センターが約40人のエコノミストの予測を毎月集約している「ESPフォーキャスト調査」によると、政権発足直後の13年1月調査では、13年度の実質GDP成長率は1.61%、14年度は0.23%、14年度の消費者物価上昇率は2.34%と予測していた。しかし、13年度11月調査では、実質GDP成長率がそれぞれ2.70%、0.78%、14年度消費者物価上昇率は2.79(消費税引き上げを含まないと0.75%)となっている。(p.76)

1-3.
 要するに、アベノミクス以前に比べて実質GDP成長率と消費者物価上昇率の予測は上方改訂されている。当然である。13年初から現在まで多くの統計が、大胆な金融緩和政策の成功を示しているからだ、現実にも実質GDPは年率で13年1~3月期4.3%、4~6月期3.8%、7~9月期1.9%と高い伸びを示してきた。こういう事実を見れば、大胆な金融緩和の効果がないというのは不可能であろう。そこで、事実を見ざるを得ないエコノミストは、将来予測を次々と上方改訂してきたわけである。(p.76)

1-4.
 もちろん、第1の矢、大胆な金融緩和を唱えていたリフレ派に対しての批判はある。物価が上がって賃金が上がらなければ、国民の生活は楽にならないではないかという批判である。

1-5.
 確かに、13年10月までの統計では、賃金は上がっていない。私は冬のボーナスで賃金の上昇がみられると予想しているが、賃金よりも雇用が増えることの方が大事だと考えている。失業があるということは、働きたくても働けない人がいるということであり、単に所得がないということだけではなく、社会に必要とされていないという感情を与える。命をすり減らすほど働かされるのは論外だが、適度に働くことは自尊感情の根源をつくることにもなる。(p.76)

3 manolo 2014-06-30 18:30:35 [PC]

1-6.
 図1は、雇用や賃金について示したものである。繰り返すが、確かに、賃金は上がっていない。しかし、雇用は増えており、賃金の支払い総額は増えている。GDPはすべての労働所得とすべての利潤とを足したものである方、GDPが増えている以上、賃金の支払い総額も利潤も増えているのは当然のことである。こうして雇用が伸びて行けば、いずれ人手が不足し、人手を集めるために賃金は上昇を始める。それは十分に失業率が低下し、働きたい人のほとんどが仕事に就けるということでもある。(pp.76-77)

1-7.
 さらに、実質輸出が増えていないという批判もある。確かに、大胆な金融緩和がこれまでの異常な円高を抑えて為替レートを低下させ、株などの資産価格を引き上げて、輸出や投資や消費を拡大すると考えていたリフレ派にとってはやや意外な結果となっている。投資や消費は伸びているが、実質輸出は確かに伸びていない。しかし、輸出が伸びないのは、大胆な金融緩和が円安と輸出の急増をもたらし、国際協調を危うくするとか為替切り下げ競争かが起きるなど批判していた反リフレ派にとっても意外な結果であるというべきだろう。(p.77)

1-8.
 私自身もリフレ派のエコノミストであるので、まず正直に意外な結果であったことを白状しておこう。もちろん円安が実質輸出の増加に結びつくまでには時間がかかるので、いずれ輸出が伸びるかもしれない。しかし、大胆な金融政策が輸出を伸ばさずに景気を拡大するのであれば、それはよいことだと思う。なぜなら、金融緩和が、国際的軋轢を増すことなく景気を拡大する方法だと分かったからである。金融緩和は、為替だけでなく、資産価格の上昇や資金の利用可能性が増すことや将来の物価上昇期待など多くの経路を通じて経済を刺激する。その効果が限定されていない事は良いことなのだ。(p.77)

1-9.
 図2は鉱工業生産、全産業活動、第3次産業活動の各指数を示している。鉱工業生産も増えているが、第3次産業も伸びている。(もちろんすべての産業を合わせた全産業活動指数も伸びている)。

4 manolo 2014-06-30 18:48:26 [PC]

1-10.【消費税増税ショックを抑える金融の追加緩和】
 これは、来年4月の消費税増税の負のショックを和らげるためにも、金融政策が使いやすい政策手段であることを示す。金融緩和の効果が多様な経路を通るものであればあるほど、特定セクターで問題を起こすことが少ないからである。前述のように、輸出が急増するのであれば、貿易摩擦の再燃が懸念されるが、そのようなことはない。また、次項で述べるように、効果が建設業に集中する財政政策とも異なっている。消費税増税の景気悪化効果が大きければ、さらに金融を緩和して負のショックを弱めるべきである。(p.77)

1-11.
 これはアベノミクスの第2の矢、公共事業による景気刺激とは異なっている。第2の矢は、政府が、建設業など特定産業の生産物を大量に買うことである。この結果、建設資材や建設業賃金などはすでに上昇している。実質生産を引き上げる効果が、物価上昇によって抑制される。公共事業の実質GDPを引き上げる効果は、予算で決められた名目支出額を建設物資指数で割ったものによるから、建設物価が上がれば、公共事業の効果は削減される。(p.77)

1-12.
 しかも、問題はこれだけではない。日本は、東日本大震災からの復興、福島第一原発事故の処理、東京オリンピックと言う、重大な課題がある。被災地域の生活を取り戻すためには、住宅や漁港や水産加工所などの再建が何よりも必要だ。福島第一原発から放射能が漏れないようにするためには、地下水が流れ込まないように周りを遮水癖で囲まなければならない。東京オリンピックのために斬新なデザインの新国立競技場、その他の会場、交通インフラの追加的な建設をしなければならない。要するに、巨額の建設事業をしなければならないのである。(p.77)

1-13.
 不要不急の工事をすれば単価が上がって、他の必要な建設工事の妨げになる。第2の矢の財政拡大政策は再考すべき時である。(p.77)

5 manolo 2014-06-30 19:35:02 [PC]

出典:『日本経済新聞』、6/30/2014、「エコノフォーカス: 対日投資・女性登用 出遅れ 1年前の成長戦略「通信簿」 設備投資・雇用は合格」、p.3

2-1.
 第2次安倍政権で2度目となる成長戦略がまとまった。分野ごとに数値目標を掲げて昨年6月に発表した「日本再興戦略」の改訂版という位置づけだ。昨年の成長戦略から1年目の通信簿をつけるとどうなるか。景気回復を追い風に雇用などは合格点だが、女性の活用など構造転換につながる施策は出遅れた。歴代政権の成長戦略は「言いっ放し」も目立ち、着実な実行には成果の検証が欠かせない。

2-2.
 昨年の成長戦略には「2020年に農林水産物・食品の輸出を1兆円にする」など、分野ごとに数値目標と達成時期を盛り込んだ。このうち1年後の現在の進捗状況が確認できる15項目について、1年間で達成するべき「ノルマ」を試算して実際の進捗率と比べてみた。目標までの期間が5年であれば、積み増す必要がある数値を5で割って1年分のノルマと見立てた。

2-3.
 ノルマを上回ったのは9項目。最も進んだのが企業の設備投資だ。「64.6兆円から15年度に70兆円に増やす」という目標だが、達成時期は3年後のため、1年目の増加の目安は33.3%分の1.8兆円。実際は2.3兆円増え、70兆円という目標までの進捗率は42.6%に達した。

2-4.
 20~34歳である若者や60~64歳の就業率を高める目標は、1年目の目安が12.5%なのに対して進捗率は若者が25.0%、60~64歳は14.3%だった。「6か月以上失業している人を、12年の151万人から5年間で2割減らす」という目標も合格点に達し、進捗率は29.8%と目安の20%を上回った。訪日外国人を増やす目標も進捗率は目安を超えた。

6 manolo 2014-06-30 19:53:50 [PC]

1-5.
 進捗率の高い項目をみると、株高や円安による景気持ち直しが追い風になったようだ。規制緩和などの政策効果というよりも、金融緩和や財政支出といった第1、第2の矢の効果が大きいといえる。

1-6.
 一方で経済の構造転換につながる項目は出遅れた。「20年までに外国企業の対日投資残高を35兆円にする」という目標の進捗率は1.2%どまり。「20年までに管理職に占める女性の割合を30%にする」という目標も、管理職の女子比は7.5%にとどまり進捗率は2.6%だった。次世代自動車の普及や農業への企業参入なども進捗率は芳しくない。

1-7.
 そのため安倍政権が今年6月にまとめた成長戦略は1年目に出遅れた施策に力を入れる。対日投資を促す「司令塔」を政府内に設置することや、女性の登用を企業に促す仕組みづくりなどを明記した。懸案だった法人税の実効税率を行き下げることも決め、海外企業の日本への積極投資も促している。

1-8.
 昨年6月には成長戦略を発表した直後に株価が急落した。日本経済の成長底上げには力不足とみられたためだ。外国人投資からは法人全減税や規制緩和など安倍政権の成長戦略を注視しており、経済官庁の幹部は「今年の成長戦略は株価をかなり意識した」と打ち明ける。

1-9.
 市場が最も求めるのは政策の実行力だ。数値目標の達成度を確認して次の施策に生かすのは企業では一般的な取り組みだが、政府も市場を意識して効果検証と政策の
再実行を進める必要がある。

7 manolo 2014-06-30 20:21:09 [PC]

【1年前の成長戦略、構造改革は道半ば】

①目標:設備投資を増やす 目標設定時:64.6兆円 進捗率:33.3% 目標数値(期限)70兆円(15年度)
②目標:メタボ人口を減らす 目標設定時:1400万人 進捗率:25.0% 目標数値(期限):1050 万人(20年度)
③目標:長期失業者を減らす 目標設定時:151万人 進捗率:20.0% 目標数値(期限):120.8万人(17年)
④目標:若者(20~34年の就業率を高める) 目標設定時:74% 進捗率:12.5% 目標数値(期限):78%(20年)
⑤目標:訪日外国人を増やす 目標設定時:836万人 進捗率:5.6% 目標数値(期限):3000万人(30年)
⑥目標:農林水産業の法人数を増やす 目標設定時:1万2511法人 進捗率:30.3% 目標数値(期限):5万法人(20年)
⑦目標:女性の管理職の割合を高める 目標設定時:6.9% 進捗率:12.5% 目標数値(期限):30%(20年)
⑧目標:対日直接投資を増やす 目標設定時:17.8兆円 進捗率:12.5% 目標数値(期限):35兆円(20年)

その他の項目・・・目標、進捗率(進捗率の目安)
進捗率が目安を上回っているもの
・女性(25~44歳)の就業率・・・30%(12.5%)
・障害者の雇用率・・・22.6(12.5)
・農林水産物の輸出額・・・18.3(12.5)
・60~64歳の就業率・・・14.3(12.5)

進捗率が目安を下回っているもの
・転職者の割合・・・18.8(20.0)
・次世代自動車の割合・・・5.2(5.6)
・国際的な教育プログラムの導入校・・・1.6(15.2)
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