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グローバル企業 (コメント数:5)

1 manolo 2016-09-16 17:09:07 [PC]


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出典:『エコノミスト』、8/30/2016、「海外企業を買う105 ファイザー Pfizer 世界屈指の製薬企業」、岩田太郎、pp.68~69

1-1.
 製薬業界の売上高で世界第2位のファイザーは、1849年にドイツ出身の若い起業家でいとこ同士のチャールズ・ファイザーとチャールズ・エアハルトが、ニューヨークのブルックリンに精製化学製品会社のチャールズ・ファイザー&カンパニーを設立したのが始まりだ。

2 manolo 2016-09-16 17:15:15 [PC]

1-2.
 第一次世界大戦により、主要製品であるクエン酸の原料の輸入が途絶えた際、深底タンク発酵という新製法で原料を国内量産することに成功。第二次世界大戦中には同製法を応用して、世界初の抗生物質である感染症治療薬ペニシリンの効果的な量産工程を開発し、米国の戦勝に貢献している。戦後は販売代理店のネットワーク化、世界各地における支店・子会社・提携事業の設立に力を注ぎ、名実ともに多国籍企業となった。1970~80年代には抗生物質の発見および開発で成長を続けた。そうしたなか、90年代には性的不能治療薬バイアグラなど、生活の質を向上させる分野の収益増で大成功を収める一方、医療の将来に関わる各国政策プロセスに積極的に関与するという企業姿勢を強めてきた。

1-3.【年末までに分社化に結論】
 利益増へのこだわりを強めるファイザーは、海外での収益を法実行税率が約25%と高い米国に持ち帰らない合法的な租税回避で、国外に700億ドル近い現金をため込む一方、昨年11月には、アイルランドの同業アラガンとの合併を発表。法人税が米国より低いアイルランドに本社を移し、同国の17~18%程度という低い税率で年間20億ドルを節税するもくろみだった。このインバージョン(節税地変換)と呼ばれる租税回避の手法は米オバマ政権の怒りを買い、今年4月の規制強化で合併は不可能になった。「破談」を受けて投資家の視線は、ファイザーが特許で守られ収益性の高い創薬部門と、さえない既存薬・ジェネリック(後発)医薬品部門を分社化するか否かに注がれている。

1-4.
 同社の4~6月期売上は、アナリスト予想を上回り、前年同期11%増の131億5000万ドルを達成。無菌注射剤などバイオ後続品やジェネリック抗がん剤を扱う米ホスピーラを昨秋に買収し、既存・後発分野の売上が16%上昇、60億4000万ドルへと増えたことが貢献した。だが、160億ドルで買収したホスピーラの寄与分を除くと、ファイザーの4~6月期売上は6.1%の減少だ。さらに、米金融サービス会社BMOキャピタル・マーケットのアナリストは、「ホスピーラ単体の売上は予測を7%も下回り、期待された相乗効果が出ていない」と指摘する。同期の純利益は20億2000万ドル、1株当たり33セントと、前年同期の26億3000万ドル、1株当たり42セントから下降している。

3 manolo 2016-09-16 17:19:23 [PC]

1-5.
 ドル箱製品だった高コレステロール血症治療薬リピトール(一般名アトルバスタチン)、消炎鎮痛剤セレブレックス(同セレクコキシブ)、女性の更年期障害治療薬プレマリン、薬剤耐性に有効だった新系統の抗生物質ザイボックス(同リネゾリド)などの特許が次々と失効して後発薬との競争にさらされ、ファイザーにおける過去数年の既存薬分野の売上は下がり続けている。こうした理由で、アラガンとの合併がついえた今、会社分割が俎上(そじょう)に上がるのだ。「分社化の決断は年末までに下す」と、ファイザーは8月2日に発表した。

1-6.
 分社化について専門家の意見は割れており、一部アナリストが「既存薬売上の落ち込みをカバーする同業買収の効果は十分であり、分割はない」とする一方、別のアナリストたちは「ファイザーは最近、創薬分野、既存薬分野、ワクチン・抗がん剤・市販薬分野の3大事業を、創薬と既存薬の2大分野に再編した。これは分割への道をならす動きだ」と主張している。

1-7.
 こうしたなか、創薬部門の4~6月期売上は7.2%増と好調だ。閉経後の転移乳がん治療イブランス(同パルボシクリブ)は前年同期の1億4000万ドルの売上から5億1400万ドルと大幅に伸びた。イブランスは、乳がんの約7割以上を占めるホルモン依存性乳がんに対する内分泌(ホルモン)療法が効かず、疾患が進行した患者の治療に効果がある画期的な薬だ。米国では、2015年2月の発売以来、処方医により2万5000人以上の患者に処方されており、今年2月には米食品医薬品局(FDA)による適応拡大の認可も出た。欧州では当局に承認申請中で、日本でも治療が進行しており、これからのさらなる売上成長が期待されている。その他、グルタミン酸などの神経伝達物質を阻害して神経障害性の疼痛を和らげるリリカ(同プレガバリン)や、禁煙のための飲み薬チャンピックス(同バレニクリン)も、創薬分野の増収増益に貢献している。(p.69)

4 manolo 2016-09-16 17:23:52 [PC]

1-8.
 しかし、創薬部門はまだら模様で、ファイザーのトップセラーであった小児用肺炎球菌ワクチンのプレベナー13の売上は、4~6月期に16%も下落して12億6000万ドルにとどまった。従来品のプレベナーより肺炎予防効果の高い注射剤だが、ワクチン注射を受ける子供の数が減少しているため、目標に届かなかった。さらにファイザーの収益を圧迫する要因として、新薬開発費の高騰、事業リストラ費用、同業買収経費、副作用にまつわる訴訟費用などがある。8月には、同社が消炎鎮痛剤セレブレックスやベクストラの安全上のリスクを隠匿していたため、株主に多大な損害を与えた和解金として4億6万ドルの支払いに合意している。

1-9.
 このように課題が山積するファイザーだが、今年度については、昨年度から横ばいか微増の490億~510億ドルの売上目標を掲げており、8月時点でそのターゲットに変更はないとしている。

1-10. 【日本は米国外の最大市場】
 ファイザーの15年度における米国市場売上は、全体の44%で、14年度の38%から増加している。一方、海外事業は全体の56%、日本は全体の8%だ。13年度の10%、14年度の9%よりは貢献度を減らしたものの、株主向け資料でも「米国外の最大市場」と明記されている。日本では55年に高い発酵技術を持っていた砂糖製造の台糖と組み、台糖ファイザーを設立。抗生物質テラマイシンの国産化により、日本の医薬品業界に本格進出を果たした。83年に同社はファイザーの100%子会社となり、89年に社名を「ファイザー製薬」に変更した。高血圧・狭心症治療剤ノルバスクなどで97年度には日本市場の売上1000億円を達成。15年度の売上は5114億円と順調な伸びを見せている。

5 manolo 2016-09-16 17:41:05 [PC]

【遺伝子療法分野を強化】
 ファイザーは、異常遺伝子を正常なものに取り換える「夢の難病治療法」である遺伝子療法分野を強化中だ。8月には新興遺伝子治療企業の米バンブー・セラピューティクスを6億4500万ドルで買収すると発表した。今年に入って行った循環器系疾病の遺伝子ターゲティングを行う米4Dモレキュラー・セラピューティクスの買収とあわせ、将来の収益のタネをまいている。ただ、バンブーの遺伝子療法は臨床試験にもはいっておらず、FDAも遺伝子療法は一つも承認していない。こうしたなか、欧州では競合他社が乳児の免疫不全など2件の遺伝子療法治験の承認を得ており、成功すればドル箱に大化けするかもしれない分野だ。遺伝子治療開発が安全上の問題などから遅々として進展しない中、ファイザーは認可リスクの懸念を承知の上で、新しい分野を切り開こうとしている。

【企業データ】
本社所在地=米ニューヨーク
CEO=イアン・リード(Ian C. Read)
総資産=1674億6000万ドル
純資産=647億2000万ドル
売上高=488億5100万ドル
営業利益=69億7500万ドル
当期純利益=69億6000万ドル
従業員数=9万7000人
主な上場取引所=ニューヨーク証券取引所
(注)数字は2015年12月期
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