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子ども・子どもの権利 (コメント数:8)

1 manolo 2013-08-25 00:52:20 [PC]


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出典:『よくわかる子ども家庭福祉(第5版)』、山縣文治編、ミネルヴァ書房、7/20/2007、(「5. 子どもとは何か」)pp.12-13


1-1. 1. 子どもとは何か
 「子どもとは何か」という質問に的確に答えるのはなかなか難しいものです。一般によくある答え方は、年齢を基準にした答え方ですが、社会的成熟度のようなものを基準にした答え方もできます。こども家庭福祉論においては、一般にこどを次のような存在と考えます。

①一個の独立した人格であること。
②*受動的権利(保護される権利)と同時に、能動的権利(個性を発揮する権利)も有する存在であること。
③成長発達する存在であり、それを家族や社会から適切に保障されるべきこと。(p.12)

*受動的権利と能動的権利
子どもの権利保障の歴史においては、ジュネーブ宣言や児童権利宣言で、まず受動的権利の保障が明らかにされ、児童の権利に関する条約において、能動的権利保障の姿勢が明らかにされた。(p.12)

2 manolo 2013-08-25 01:01:02 [PC]

1-2. 2. 子どもと児童
 「子ども」と表現するか、「児童」と表現するかについては、人によって考え方が分かれるところです。わが国では、法律や制度では「児童」という表現がよく用いられますが、日常会話では逆に「子ども」という表現の方がよく用いられます。年齢のイメージが異なるという考え方もありますが、これは制度や社会があとでつけた意味であり、両者の本質的な違いを示すものではありません。本著では、子ども家庭福祉という言葉にこだわっていますが、これはⅠ-1で示したように、従来は児童福祉と言われてきた内容であり、現在でも一般には児童福祉と表現されることの方が多いのも事実です。(p.12)

1-3.
 児童の権利に関する条約の日本語訳を作る際も、こどもの権利条約とするかどうかで、大きな議論がありましたが、結局は法律や制度がよく使用する「児童」という表現の国と締約したという経緯があります。ただし、国では一般には「子どもの権利条約」と表現することも否定していません。たとえば、「児童」ということばを小学生とほぼ同様の意味で使うことが多く混乱を招く、また思想的にも「子ども」という表現が妥当であるという主張が見られた教育現場では、当時の文部省の担当者から『「児童の権利に関する条約」について』(1994年5月20日付 文部事務次官通知)の8項目で、「本条約についての教育指導に当たっては、「児童」のみならず「こども」という語を適宜使用することも考えられること」という通知が発せられています。(p.12)

1-4. 3. 子どもの定義の類型
 法律的に子供を定義する場合は、年齢による場合が多いようです。ここでは、年齢による定義の類型をいくつか取り上げてみます。また、年齢による定義のほとんどは、子どもの終了年齢を定義しているのみで、いつからが子どもなのか、たとえば、胎児を子どもとみなすかどうかなどについては定義していません。遺産の相続などでは、これが大きな問題となり、胎児も含まれることになっていますが、特に定義をしていない場合は、出生後を指していると考えるのが一般的なようです。ちなみに、児童の権利に関する条約では、各国の判断に委ねるとしています。(p.13)

3 manolo 2013-08-25 01:04:41 [PC]

1-5. ①年齢を定めない場合
 年齢を定めていない代表的な法律は民法です。これは親子の関係を示す意味で「子」と表現しています。親が存在する限りにおいて、子はいつまでも関係性においては子であるということになります。ただし、20歳未満の者を「未成年」と呼び、子ども的な意味合いを持たせています。(p.13)

1-6. ②20歳未満を指している場合
 母子及び寡婦福祉法、特別児童扶養手当等の支給に関する法律などが、これを児童として定義しています。*少年法では、これを少年として定義しています。この他にも、「20歳に満たない者」「未成年」などの名称を使っているものに、未成年者禁酒法禁止法、未成年者喫煙禁止法などがあります。(p.13)

*少年法による少年の定義
少年法では、少年をされに犯罪少年(14歳以上で刑罰法令に触れる行為を犯した少年)、触法少年(14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年)、ぐ犯少年(20歳未満で、その性格または環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)の3つに分けている。(p.13)

1-7. ③18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある者を指している場合。
 児童扶養手当法、児童手当法などがこれにあたります。これは、手当の支給を年度途中で切らないという考え方に基づいています。(p.13)

1-8. ④18歳未満の場合
 児童福祉法、児童売春・受動ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律などがこれにあたります。児童福祉法では、児童をさらに、乳児(満1歳に満たない者)、幼児(満1歳から、小学校就学の始期に達するまでの者)、少年(小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの者)としています。(p.13)

1-9. ⑤その他
 学校教育法では、幼稚園児を幼児、小学生を学童児童、中学生を学齢生徒、高校生を生徒、大学生を学生と呼んでいます。道路交通法では、6歳以上13歳未満者を児童、労働基準法では15歳未満の者を児童と定義しています。(p.13)

4 manolo 2013-09-02 15:52:55 [PC]

出典:『人権入門 憲法/人権/マイノリティ(第2版)』、横藤田誠&中坂恵美子、法律文化社、11/20/2012、(「第12講 子どもは人権の主体?保護の対象?―子どもの人権)pp.138-149

2-1. 1. 子どもは人権の主体?
【こどもは権利の主体】
 子どもにも人権はあるの?・・・権利にもいろいろあって、私法上の権利(債権・物件など)は義務と対応しているが、憲法はそもそも人権を保障するのが目的だから、義務を規定するのは例外にすぎない。憲法が保障する自由権や社会権などを子どもがもつのは当たり前のことだ。(p.139)

2-2.
 実際、子どもを「権利の主体」と見るようになったのはそんなに古い話ではない。J・S・ミルは『自由論』(1859年)の中で、「社会は彼ら〔社会の成員〕」の人生のはじめの期間中、ずっと彼らに絶対的権利をもっていたのだ。……現存の世代は、きたるべき世代の訓練とすべての環境とを、意のままにすることができる」と述べている。近代の人権理念形成の経緯を考えれば、これは当然ともいえる。身分制から解放され、国家と直接向き合うことのできる「強い個人を」を人権の主体と考えていたからだ。家族の中で家長(多くは父親)のみが権利の主体で、家長は子どもを意のままに教育できるということになる(家父長制)。(p.139)

2-3.
 「子どもの権利」という概念が出現したのが、産業化・大衆社会化の進行に伴って、家父長制の保護・教育機能が衰退し、家族における子どもの保護・教育に対して国家の介入が本格的に始まった19世紀後半以降のことだ。この頃、欧米では無償の義務教育制度や少年裁判所制度が成立する。それらの制度形成のシンボルが「子どもの最善の利益」とともに、「子どもの権利」だった。

2-4.
 子どもの権利が全世界的に注目された結果として生まれたのが、「児童の権利に関するジュネーブ宣言」(1924年、国際連盟第5会期採択)だ。同宣言は、「すべての国の男女は、人類が児童に対して最善のものを与えるべき義務を負うとし、「児童は、身体的ならびに精神面の両面における正常な発達に必要な諸手段が与えられなければならない」といった内容を規定している。(pp.140-141)

5 manolo 2013-09-02 16:36:19 [PC]

2-5.
 第二次世界大戦後、国際連合も、「児童の権利に関する宣言」(1959年)で、「人類は児童に対し、最善のものを与える義務を負う」と確認した。「児童の権利」と称されてはいるが、ジュネーブ宣言と同様、子どもは「特別の保護が必要である」というスタンスで貫かれている。つまり、子どもは未成熟な存在であり、その利益は親または国家によって客観的に、子どもの現在の意思とは無関係に判定されるというパターナリズムの哲学に基づくものであった。(p.140)

2-6.
 自由権を中心とする人権を子どもも享有するという見方が、広く認められるようになったのは、ようやく1970年前後からだ。アメリカの連邦最高裁判所のティンカ―判決(1969年)は、子どもが憲法にいう「人」であり、言論の自由を有すると明言した。この延長線上にあるのが児童の権利条約(1989年)だ。

2-7. 子どもの人権の特殊性
 この段階で、「子どもの権利」論は以下のようなバリエーションをもつようになったといえる。①親による虐待・遺棄、使用者による酷使、危険な環境から子どもを保護するよう主張するもの(「保護」)、②親の支配から子どもを解放し、大人と同等の権利をすべての子どもに保障するように主張するもの(「自律」)、③大人に保障される権利を制限的にではあるが、可能な限り子どもにも保障するよう主張するもの(「保護+自律」)。欧米でも②の主張は例外にとどまるようだが、日本では③の立場が圧倒的で、どちらかといえば「保護」が強調される傾向にある。

2-8.
 戦後の代表的な憲法学者は、こう述べている。「人間の主体としての人間たる資格がその年齢に無関係であるべきことは、いうまでもない。しかし、人権の性質によっては、一応その社会の成員として成熟した人間を主として眼中に置き、それに至らない人間に対しては、多かれ少なかれ特例をみとめる事が、ことの性質上、是認される場合もある。」(宮沢、1971、p.246)。また、別の学者も言う。「子どもが成長・成熟のために最も必要としているのは〈関係〉であって、権利の名の下で孤立化された利益ではない。〈権利〉は〈関係〉を保障しないのである。〈権利〉の文字通りの貫徹が予期せぬパラドックスを生み出す理由はここにある」(森田、1999、p.95)(p.140)

6 manolo 2013-09-02 17:08:33 [PC]

2-9.
 一般に、子どもは大人よりも保《保護》の必要性が強いことは認めなければならない。憲法に特に子どもに焦点をあてた権利がある(教育を受ける権利〔26条〕、児童酷使の禁止〔27条3項〕)のは、このことの現れだ。法律上も、職業の制限(労働基準法56条以下)、種々の福祉の措置(児童福祉法)、財産上の行為の制限(民法5条)、飲酒・喫煙の禁止(未成年者飲酒禁止法1条、未成年者喫煙禁止法1条)など、多くの保護規定がある。(p.141)

2-10.
 自由権については、基本的には子どもの自律的選択に委ねられるべきであるが、一定の「保護的干渉」が必要であると見られている。つまり、「限定されたパターナリスティックな制約」を認めるということだ。親の教育権との関係で、子どもの思想・良心・宗教の自由を制限されたり、子どもの未成熟性を考慮して、表現の自由、性的行為の自由に制限が加えられることは十分考えられる。(p.141)

2-11.
 子どもの問題を人権(自律)の貫徹のみで解決することができないのは、以上の点に加えて、家族の自律性を破壊し、結局子どもにとって不幸な結果を招かないか、また、家族から解放された子どもを政府権力による抑圧や疎外から誰が守るのか、といた懸念もあるからだ。(p.141)

2-12. 子どもの人権の制約の正当性
 常識的にある程度子どもの人権制約を認めざるをえないとしても、具体的にどのような権利をどの程度制約できるか、判断は難しい。まだ議論が熟しているとはいえないけれども、いくつかヒントはある。(p.141)

2-13.
 まず、人権を、一定の行為をするかどうかの選択を内容とする権利(精神的自由、職業選択の自由、自己決定など)と、反対の行為を追求する自由を保障しない権利(拷問・虐待を受けない権利、不合理な捜索・押収を受けない権利、手続き的権利など)に分け、前者については、子どもの未成熟性を根拠に一定の制約を認める見解がある。後者の権利は大人と同等に認めるというもので、妥当な考えだ。ただ、合理的な判断能力を身につけるには自由を行使する練習が必要という点には注意する必要はあるだろう。(pp.141-142)

7 manolo 2013-09-02 23:43:28 [PC]

2-14.
 次に、子どもを①人格主体、②成長途上の存在、③将来の大人という3つの属性に分け、それぞれに保障されるべき権利をあげるという考えがある。①では拷問を受けない権利、差別されない権利など(前述の選択を内容としない権利に相当)、②では知る権利(有害図書への接近)など、③では教育を受ける権利などが想定されている。(p.142)

2-15. 2. 児童の権利条約
児童の権利条約の内容
 子どもの権利の問題を考えるにあたって、憲法とならんで重要なのが、児童の権利条約である。1989年に国連総会で採択され、翌年発効したこの条約を、日本は1994年、世界で158番目にようやく批准した。この条約の内容は極めて豊かであり、しかも1つの条項で複数の権利を保障することもあるが、あえて図式的に分ければ、①一般原則、②大人と同様に子どもにも保障される権利で選択を内容とするもの、③大人と同様に子どもにも保障される権利で選択を内容としないの、④子どもを特に保護する権利、の4つになる。(p.142)

2-16.
 ①一般原則として、差別の禁止(2条)、子どもの最善の利益の保証(3条)、生命・生存・発達の権利(6条)、子どもの意見発明権(12条)がある。権利条約の最大のポイントは、意見表明権を明記したことだ。「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」。「自律」を重視する権利条約の象徴的な規定だと言えるが、「年齢及び成熟度に従って相応に考慮」という限定がついており、「保護」の要請にも目配りしている。(pp.142-143)

2-17.
 ②の権利には、表現の自由(13条)、思想・良心・宗教の自由(14条)、結社・集会の自由(15条)などがある。「自律」の重視という権利条約の性格を劇的に示すものだ。しかし、他者の権利・自由、公共の安全・秩序・健康・道徳といった、大人の場合でも権利制約の理由となりうる事項に加えて、思想・良心・宗教の自由については、親の養教育権を考慮して、「父母……が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務」に言及している点に注意が必要だ。(p.143)

8 manolo 2013-09-02 23:48:01 [PC]

2-18.
 ③には、プランバシー・名誉の保護(16条)、健康・医療への権利(24条)、社会保障への権利(26条)、人身の自由(37条)、非行少年に対する手続的保障(40条)などが含まれる。これらの権利は、選択を内容とせず権利行使に判断能力が前提とされないから、原則として大人と同等に保障される。(p.143)

2-19.
 ④は、子どもを特に保護する、次のような多くの権利を含む。登録・氏名・国籍等に関する権利(7条・8条)、監視下の虐待・搾取等からの保護(19条)、教育への権利(28条)、少数民族に属する児童の文化・宗教・言語についての権利(30条)、遊びへの参加権(31条)、有害労働から保護される権利(32条)、麻薬・性的搾取・虐待からの保護(33条~36条)など。(p.143)
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