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主権 (コメント数:3)

1 manolo 2014-02-07 23:17:30 [PC]


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出典:『よくわかる憲法(第2版)』、工藤達朗編、5/25/2013、ミネルヴァ書房(「第1部 III-2 国民主権」)、奥山亜喜子、pp.18-19

1-1. 【1. 主権の意味】
 日本国憲法は、前文第一段で、「主権が国民に存することを宣言」し、1条で天皇の地位が「主権の存する国民」の総意に基づくと規定している。この「主権」と言う語は、歴史的に形成されてきた概念であり、三つの意味で用いられている。(p.18)

1-2.
 一つは、「国家権力の最高・独立性」という意味である。主権論は、もともとは絶対王政を正当化するための論理であり、君主の権力が国内において他の諸権力、すなわち封建領主に対して優位であること(対内的最高)、そして、ローマ法王、神聖ローマ帝国の対外的権力から独立した権力であること(対外的独立)を説明する概念であった。第二に、立法、司法、行政などを統合する「国家の統治権それ自体」を主権と言う場合がある。絶対王政下においては、「君主」=「国家」と考えられていたため、君主のもつ具体的権力は国家権力そのものであった。第三に、国の政治のあり方を最終的に決定する力であり権威だったのである。(p.18)

2 manolo 2014-02-07 23:21:18 [PC]

1-3.
 このような絶対王政を正当化するための「主権」という言葉は、次第に頭角を現してきた市民たちが君主に対抗し、自分たちの権利を正当化する上で用いられるようになった。特に*第三の意味での主権が、最高独立という性質をもつ最終的な決定権力を国民が持ち、それを正当化する根拠であるという意味の「国家主権」として結実したのである・この「主権」こそ、日本国憲法の前文の1段、1条に現われているものである。(p.18)

*第三の意味での主権
現在では第一の意味の主権は、「国家の主権」を説明する場合に限られ、例えば日本国憲法前文第3段の「自国の主権を維持し」という場合の「主権」はその用例である。また第二の国家権力そのもの、という意味の主権の用例としては、ポツダム宣言8項「日本国憲法ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル小島ニ局限セラレルヘシ」という場合がある。(p.18)

1-4. 【2. 正当性の根拠か、権力的契機か?:「国民」との範囲との関係】
 「国民主権」の権力としての側面に比重をおくのか、それとも正当化根拠としての側面を重視するかで「国民主権」という原理をどのように理解するかについても、見解が分かれる。(p.18)

1-5.
「国民主権」を国家意思の決定権が国民にあるという点を重視する立場(権力的契機説)では、実際の国の政治の最終的な決定を下す「力」が問題となる。この権力を生まれたばかりの子どもも含むすべての人間が行使することは現実的には不可能である。従って、この立場は、「国民」=現実に権力を行使することのできる有権者ととられる見解(有権者主体説)と結びつきやすい。しかしながら、この見解に対しては、全国民を主権を有する国民と有しない国民とに分けられることは民主主義の核心部分に反する、と批判される。また、日本国憲法44条に基づき有権者の資格を法律で定める国会が、主権を有する国民の範囲を決定することになるのは、論理的矛盾であるという批判も妥当する。(pp.18-19)

3 manolo 2014-02-07 23:25:25 [PC]

1-6.
 国民主権を正当性の原理、すなわち権力を正当化する権威が国民にあるという理念とらえる立場(正統性説)は、「権力が国民から発するべきだ」という建前を表しているにすぎず、実際に権力が国民から発しているか否かは問題としない。従って、そこにいう「国民」は現実的に国家機関として活動する必要がないから、「国民」を抽象的な自然人である国民の総体である「全国民」としてとらえる見解(全国民主体説)と結びつきやすい。この見解に対しては、「国民自ら行使することができないことになる、憲法制定権や改正権との関係が説明できない、という批判がある。(p.19)

1-7. 【3. 国民主権と日本国憲法】
 有権者主体説をとりつつ権力的契機説をとると、直接民主制が必然的に要求されrことになるが、いかなる場合にも直接国民が政治にかかわるということは現実的ではない。そこで直接民主制の代替として間接民主制(代表民主制)がとられることになる。その際、代表と国民の間に命令委任関係が要求されることになる。逆に全国民主体説をとりつつ正当説をとると、実際に国民の意思が政治に反映される必要ないため、直接民主制は否定され、代表民主制が導かれるが、その際に制限選挙も許されることになる。これらの考えに対し、国民主権原理には正当性の根拠と権力的契機の側面において主権者は有権者であるととらえる折衷的立場がある。この立場は代表民主主義制度とも直接民主主義とも整合性を保つことができる。日本国憲法が前文第1段で「正当に選挙された代表者を通じて行動し」と代表民主制を前提としていること、そして96条の憲法改正の手続きにおいて、国民投票を要求していることとも相応するので、この説が通説とされている。しかしながら、正統性の側面の「国民(全国民)」と権力契機の側の「国民(有権者)」では同一性が欠けているため、いかにして同一性を擬制するか、という問題が生じる。少なくとも有権者の範囲を拡大し、「国民」を全国民に近づける制度が必要であろう。(p.19)
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