最後も近づいたほどに (コメント数:1) |
1 Ryou 2013-12-17 21:26:40 [URL]
刑吏の長 最後も近づいたほどに、何ぞ遺言があればきき届けてつかわすぞ。 おきん わしゃ、こななことで、打首になるのは不承知じゃ。なんぼ、お上のなされ方でもあんまりじゃ。あんまりじゃ。 刑吏 この期に及んで、未練を申すな。本人が白状に及びたる上は、縁につながる不幸と諦めておれ! おきん 何おっしゃるんじゃ。こなな阿呆のいうこと、お取り上げになったりして、あんまりじゃ。きこえんわ。きこえんわ。お上のなされ方がきこえんわ。(甚兵衛に)この阿呆。 甚兵衛 (気がないように笑う)あはははは。 おきん 何がおかしいんじゃ、この阿呆め! 親兄弟をこななひどい目にあわして、この阿呆め! 甚兵衛 はははは。 おきん ええ、この不孝者めが! 刑吏一 騒がしい。控え! おきん (恨めしそうに黙る) 刑吏の長 甚兵衛! その方はなんぞ遺言はないか。 甚兵衛 (微笑しながら)わしゃ、何もないだ。村の衆が、みんな欣んで下さるけに、わしゃうれしいだ。うれしいだ。 (その時、村人の六、矢来の中へ駆け入る) |
Ads by Google |
(c)Copyright mottoki.com 2007- All rights reserved.
|