材大なれば用を為し難し

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新子が、黙って聴いているので (コメント数:1)

1 Ryou 2014-01-03 21:29:03 [URL]

 新子が、黙って聴いているので美和子もさすがに、気がさしたのか、ちょっとの間口を閉していたが、やがてしんみりと、
「美沢さん、お姉さんがよっぽど好きだったのね。だからつまりヤケになって騒ぎ廻ったわけよ。それに、私も悪いことしていたのよ。お姉さまが、軽井沢から帰ったことを、あの人に全然だまっていたのよ。だから、あの人帝劇でお姉さんを見つけたとき、すっかりびっくりしてしまったのよ。フロリダから、近所のバーへ行ったら、美沢さん、ハイボールを二杯も、飲むのよ。そして酔っぱらって、新子さんに、言伝があるというのよ……」
「何ていったの?……」小さく思わず、口に出して呟いた。
「僕は、新子さんの幸福も不幸も解りません、サヨナラって! 云ってくれと云うの。お姉さんをあきらめて、しまったらしいのよ。あの前川さんを、お姉さんの愛人かパトロンかと思ったらしいのよ。あの方とお姉さん、何でもないの?」
「うるさいわよ。」姉は、つい険しい声で、きめつけると、顔をそむけた。さすがの美和子も、姉によっぽど悪いと思ったらしく、手早く寝間着に着換えると、電燈を消して、床の中へはいってしまった。そして、しばらくすると、この大胆なる恋愛行者は、もうかすかな寝息を立てているのであった。
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