材大なれば用を為し難し

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ピトエフ一座の「幽霊」 (コメント数:1)

1 Ryou 2014-05-06 18:54:21 [URL]

 ピトエフ一座の「幽霊」を観たのはそれから後である。ルメエトルが以て不可解なりとした「北方の女」は、私には存外うなづけるのであるが、此の芝居は役者が下手で少々観づらかつた。ピトエフのオスワルドはただ陰惨な顔をしてゐるだけだつた。尤も此の戯曲などは、所謂喜劇の部類にははひらないやうである。
 その次に、コラ・ラパルスリー夫人の経営に移つたモガドオル座で、製作劇場の俳優を中心とするペエア・ギュントを観た。
 衣裳などはわざわざ諾威から取り寄せるといふほどの凝り方だつたが、その割にデュボアの舞台装置は平凡で、期待を裏切られた。ただ、オーセに扮したのは、かのデプレ夫人であり、ソルヴエイヂが、クリスチヤアヌ・ロオレエといふ無類の美少女であつたことは忘れ難く、ペエア役のアンリ・ロオジェも一と通りあの大役をこなしてゐたやうに思ふ。私は、イプセンの戯曲を読み、此のペエア・ギュントの第三幕目、オーセの死に至つて、彼が最も親しむべき戯曲家であることを知つたのである。私は此の場面が好きだ。古今東西を通じ、私の知つてゐる戯曲といふ戯曲の中で一番どの場面に感心したかと問はれれば、私は躊躇することなく、「此の場面」だと答へるだらう。
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