材大なれば用を為し難し

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ことに露店も道の広いところには (コメント数:1)

1 Ryou 2013-12-01 12:11:12 [URL]

ことに露店も道の広いところには沢山あって、それらの売物は大抵日用品のみです。衣服に要する物、あるいは食物に要する物それから日用道具、その中にはもちろんチベットの物が大部分を占めて居りますけれども、次いで多いのはインド、カルカッタ、ボンベイ地方から輸入された物品である。その中で最も私の感じたのは日本の燐寸です。大阪の土井〔(亀太郎)〕という人が拵えた燐寸がチベットのラサ府の中に入って居るです。まだほかの物も入って居るですがその名が記してないから分らない。象の面が二つあるのと一つあるのと、それからまた一つの象を家のところから引き出して居るような蝋燐寸もあって、それにはメード・イン・ジャパンと書いてある。その面は赤い地に画を白く抜いてある。もっともスウェーデンで拵えた燐寸も幾分か入って居るですけれども、それは
日本燐寸に圧倒 されて今は少ししかない。それから日本の竹簾に女の絵などの書いてある物がやはり入って居る。なお陶器類でも九谷焼――それは店の売物としては出て居らんけれども――などが貴族の家に行くとあるです。また日本の画なども貴族の家に額面として折々掛けられてある。それらの日本品を見て、心なき物品は心ある人間よりもえらいと思うて自分ながらおかしく感じました。ことに日本の燐寸の沢山入って居るのを見て、日本の智慧の火がこの国の蒙昧なる闇がりを照すところの道具となる縁起でもあろうかなどと、馬鹿な考えを起してうかうか散歩しながらある店頭へ来ました。ところで大変よい石鹸を見付け出した。そんな物はかつてラサ府にはなかったので、こりゃよい掘出物、買おうと思って値段を聞きますとその主が私の顔をじろりと見ました。
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