材大なれば用を為し難し

返信投稿フォーム
ニックネーム:
30文字以内
URL:
* コメント: [絵文字入力]

1000文字以内
文字色:
* 印の付いた項目は必須です。

「あジュウヴェ……」 (コメント数:1)

1 Ryou 2014-02-17 16:19:17 [URL]

「あジュウヴェ……」
と、コポオはその男の名を呼び、
「この青年は、はるばる日本からフランスの芝居を勉強しに来たんださうだ。稽古もみたいといふから、舞台のことを説明してやつてくれ」
 さう言つて、私がゐるのをもう忘れてしまつたやうに、この二人の師弟関係にある芸術家は、「ルリュ爺さん」の装置について、簡単に、二言三言、意見を述べあひ、ジュウヴェが出て行くと、入れ代りに、今度ははつきりそれと覚えてゐる「商船テナシティイ」に出てゐたバケエがひよつこりはいつて来た。
「おい、バケエ……」
と、コポオは、また、ジュウヴェにしたやうに私を引き合せ、
「お前はこの青年の希望をよく聞き、疑問に答へ、できるだけの便宜を計つてやれ。学校の方も、特に、普通の生徒としての取扱ひでなく、学校の組織、それから教育方法などについて研究のできるやうにしてやれ」
 そして、私には、
「このバケエが学校の教務主任をしてゐるから」
とつけ足した。
 それ以来、ざつと二年間私は、ヴィユウ・コロンビエの稽古を見つづけ、学校の各クラスに顔を出し、時には、一座の俳優や生徒たちに混つて講義を聴きなどしたが、最も印象に残つてゐるのは、「劇的感覚の訓練」といふ課目の時間に、座の若手俳優や研究生とともに、コポオの鮮やかな指導振りに接したことである。
Ads by Google
(c)Copyright mottoki.com 2007- All rights reserved.