「あジュウヴェ……」 (コメント数:1) |
1 Ryou 2014-02-17 16:19:17 [URL]
「あジュウヴェ……」 と、コポオはその男の名を呼び、 「この青年は、はるばる日本からフランスの芝居を勉強しに来たんださうだ。稽古もみたいといふから、舞台のことを説明してやつてくれ」 さう言つて、私がゐるのをもう忘れてしまつたやうに、この二人の師弟関係にある芸術家は、「ルリュ爺さん」の装置について、簡単に、二言三言、意見を述べあひ、ジュウヴェが出て行くと、入れ代りに、今度ははつきりそれと覚えてゐる「商船テナシティイ」に出てゐたバケエがひよつこりはいつて来た。 「おい、バケエ……」 と、コポオは、また、ジュウヴェにしたやうに私を引き合せ、 「お前はこの青年の希望をよく聞き、疑問に答へ、できるだけの便宜を計つてやれ。学校の方も、特に、普通の生徒としての取扱ひでなく、学校の組織、それから教育方法などについて研究のできるやうにしてやれ」 そして、私には、 「このバケエが学校の教務主任をしてゐるから」 とつけ足した。 それ以来、ざつと二年間私は、ヴィユウ・コロンビエの稽古を見つづけ、学校の各クラスに顔を出し、時には、一座の俳優や生徒たちに混つて講義を聴きなどしたが、最も印象に残つてゐるのは、「劇的感覚の訓練」といふ課目の時間に、座の若手俳優や研究生とともに、コポオの鮮やかな指導振りに接したことである。 |
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