材大なれば用を為し難し

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私は、その「明るさ」を (コメント数:1)

1 Ryou 2014-02-01 17:58:31 [URL]

 私は、その「明るさ」を、戯曲のジャンルや手法に帰すべきではなく、登場人物それぞれの性格のなかに、すなわち、この種の社会を形づくる人間群のタイプのなかに求めなければならぬように思つた。
 なるほど、彼等は「かつて人間であつた」ものたちとも呼ばれている一種の落伍者たちである。しかし、それにも拘わらず、作者は、彼等に、最後の「人間らしさ」を残し、その人間らしさは、スラブ民族特有の楽天主義と、信仰と矛盾しない「ニヒリズム」とに支えられて、おおらかな人生の歌を唱つているのである。
 なによりも、ゴーリキイ自身のロシア民衆的な本質が、この作品のなかで、分裂し、対立し、衝突し、渦巻き、乱舞しているすがたが、この上もなく私の興味をひく。
 ゴーリキイは、なるほど、虐げられたものの味方であり、正義の敵が、何者であり、社会のバチルスがどこにひそんでいるかも知つていたに違いない。しかし、そのことだけを大声に訴えるためにこの戯曲を書いたのではあるまい。
 彼は、何よりも、自分の経験と才能のすべてを賭けて、感動的な一つのドラマを創り出そうとしたのである。
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