材大なれば用を為し難し

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二度の聴取 (コメント数:1)

1 Ryou 2013-10-16 21:16:13 [URL]

 二度の聴取――エルランガーのも――について語ったこと、またKがあの人たちのことを尊敬をこめて話したことは、亭主に好感を与えた。亭主はもうKの頼み、つまり樽の上に一枚の板をしき、そこで少なくとも明けがたまで眠りたいという頼みを、かなえてやろうとしているように見えた。ところが、おかみのほうは明らかに反対らしく、彼女は今やっと自分の服とそのしどけない様子とに気づき、ところどころを無益に引っぱりなおして、くり返し頭を振るのだった。この宿の清潔に関する昔からの懸案らしい争いが、またもや突発しているらしかった。疲れきっているKにとっては、夫婦の対話は非常に大きな意味を帯びていた。この宿からふたたび追い出されるということは、これまでに体験したいっさいのことを越えるような不幸であるように彼には思われた。亭主とおかみとが自分に向って一致して反対してくるようなことがあっても、そんなことが起ってはならないのだ。Kは樽の上にかがみこんで、うかがうように二人を見つめていた。とうとうおかみは、Kがずっと前から気づいていた例のなみなみならぬ神経質さをもって、突然わきへどき――おそらく彼女は亭主ともう別なことを話していたのだった――こう叫んだ。
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