七百両で仕上りますものを (コメント数:1) |
1 Ryou 2013-12-18 00:00:06 [URL]
「しかし、七百両で仕上りますものを、何も前年通りに……」 「どう仕上る?」 「それは、ここにあります」そういって、内匠頭は書状を差し出した。 「それは、とくと見た。しかし、そうたびたびの勤めではないし、貴公のところは、きこえた裕福者ではないか。二百両か五百両……」 「一口に、おっしゃっても大金です。出す方では……」 「とにかく、前年通りにするがいい」吉良の声は少し険しくなっていた。 「じゃ、この予算は認めていただけませんか」 「こんな費用で、十分にもてなせると思えん」 「おききしますが、饗応費はいくらの金高と、公儀で内規でもございますか」 「何!」上野は赤くなった。 「後の人のためにもなりますから、私このたびは七百両で上げたいと思います」 「慣例を破るのか」 「慣例も時に破ってもいいと思います。後の人が喜びます」 「ばか!」 「ばかとは何です」 畠山が、 「内匠っ!」といって、叱った。 「慣例も時によります」 内匠頭は、青くなっていいつづけた。 「勝手にするがいい」吉良は拳をふるわせて、内匠をにらみつけていた。 |
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